展覧会の備忘録「シュルレアリスムと日本」
展覧会概要
アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」から丁度100年。日本で発表されたシュルレアリスムの影響を強く受けた作品を通じて、戦中戦後の時代の中の前衛表現が紹介されている展覧会。
シュルレアリスムは美術、詩、文学、政治など多岐にわたって表現がなされた思想のこと。だからこそ本展覧会のあるがままを淡々と語られるキャプションの文章が心地が良かった。「表現」より「検証」の言葉をホームページ中で使われていることにも納得がいった。
シュルレアリスムとその手法
「シュルレアリスムとその思想の表現手法」について、考えたことの整理とお気に入り作品の備忘録のために、自分の言葉をつらつら纏めてみようと思う。
様々な作品を眺めていて、ダリのダブルイメージ(偏執狂的批判的方法、二重影像)の手法の影響が感じとられた。鑑賞しながらああだろうかこうだろうかと描かれたものが何なのか考えるのはクイズのようで楽しかった。なによりダリの影響力って大きいと感じた。
シュルレアリスムを、「思考の過程と内面的な心の状態を表現したい故に、意図的に偶然の要素を開発する手法に価値を見出した流行」のことではないかと捉えると、シュルレアリスムとは何なのかわかった気がした。(自分の中で言葉が見つかり、わかった気がしただけである。)
また、夢や幻覚などに現れる非合理性を表現≒合理主義への反発と捉えるとさらに合点がいった。(無意識を表現した時点で有意識だという葛藤に悩んでいて欲しいと思った。)
シュールなものに面白さを感じはするけれど、そもそもどうして抽象絵画って抽象的なものを抽象的に描こうとしたの?という疑問を、シュルレアリスムが後々抽象表現主義に繋がっていくという時代の流れの一部だと私自身が認識できるようになって良かった。
芸術の手法から時代や思想の文脈を読み解こうとする観点を持つことができたことが今回の展覧会での発見だった。
妙屍体(優美な死骸)
【おきにいり作品】
妙屍体(優美な死骸)
例えば1枚の紙があったとする。他の人の書いた語を見ないで主語,動詞,目的語などを書きこむ。それらの言葉の欠片から〈優美な屍が新しい酒を飲むだろう〉という文章が完成する。…というような遊びから生まれた共同制作の手法のこと。ネーミングがずるい。ちょっと完成した文章がおしゃれすぎやしないだろうか。
複数の人がお互いに他の人がどのようなものを制作しているかを知ることなく自分のパートだけを制作して完成させるという遊びは、何が出来上がってしまうのかかがわからないことを楽しむことができて面白そう。なにより即興性が好ましい。
【雑記】造作棚の愛らしさ
美術館では手荷物を預けて作品を鑑賞できるようロッカーがよく置かれているが、そのロッカー置き場の裏側に休憩スペースがあった。
美術館に足を運んだときにこういった休憩スペースやなんでもない場所でゆっくり過ごすことが好きで、置かれている椅子をついつい眺めてしまうのだが、板橋区立美術館ではちらしを置く店に目を奪われた。
紙の束に傾きが出来るように片側を持ち上げる部材が等間隔に並んでいて、A4サイズのちらしが手に取りやすいようになっている。また、ちらしが散らばってしまわぬように、隣の紙の束を受け止める部材にもなっている。
この部材が天板の端からちょこっと引っ込んでいるところがかわいい。ちらしに隠れきってしまわなくてちょうどよくてかわいい。
【雑記】過去の展覧会の軌跡
東京モンパルナスのシュールレアリスム
烽火するイマージュ・存在の叫喚
1階ホールに1985年に同美術館でシュルレアリスムについての展示があったことが伺える。ちらしは今しか見られない資料(失われやすい資料)という先入観が私にあるのか、過去のものは中々見ることが出来ない故に拝見できて良かった。
本展覧会を手掛けられた学芸員さんによるイラストの解説も展示されていて、学芸員さんのお仕事が垣間見られて面白かった。
イラストの解説は板橋区公式ホームページからダウンロードができるので、皆様も是非見て欲しい。
【おきにいり作品】
北脇昇 周易解理図(乾坤)
【気になった本】
フロイト 精神分析入門
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