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感謝を力に変える。遺族支援事業「アルサポ」を展開する株式会社アルド代表取締役 山本貴之さん

山本  貴之(やまもと  たかゆき)さん プロフィール
経歴 北翔大学健康プランニング学科卒業
職業 遺族支援事業・不動産業(株式会社アルド)、葬儀(㈲拝葬)
活動地域 札幌近郊(遠方のご相談も賜ります)

Q.今はどんな活動をしていますか?

山本 貴之さん(以下  山本  敬称略) ㈲拝葬で葬儀、株式会社アルドで不動産、遺族支援事業をしています。
 不動産は基本は仲介業で、高齢者が足が悪くなったからリフォームをしたいというような場合も対応をしています。

 丁度昨年、父親が亡くなって、急遽事業を引き継ぐことになりました。ご遺体の処置は母ができるのですが、葬儀業界では人が亡くなるのはいつ起こるかわからないので、24時間いつ仕事が来るのかわからない状態になるんです。なので僕は高校生の頃にほとんど両親が居なくて1人で過ごしていたので、僕の娘には同じ思いをさせたくないという想いがあったことと、葬儀は終わってからのほうが大変で、不動産の相談だとか、両親はボランティアのようにやっていたと思うのですが、これを事業にしようと思い、遺族支援事業『アルサポ』を始めるようになりました。

困っている人たちを助けること

Q.山本さんの描く夢やビジョンは何ですか?

山本 困っている人達を助けることです。遺族支援事業を始めて、人にお伝えするようになって、もっと早く知りたかったという声を良く聞きます。まだまだ必要な人が認知できていないのでもっと多くの方に広めたいと思っています。

 それともうひとつ、父の想いを引き継いで実現したい『見送ること』への新しい概念があります。
 父は必要があったら絶対に作るというような人で、自分が裏でどんなことをしているかもほとんど話さない人だったので、どんな道のりを描いていたのかはわかりませんが、父の想いを成し遂げたいと思っていて、答えはわからないけど模索している感じです。

いかに協力してもらいながらやるか

Q.夢を実現するための計画や実践はありますか?

山本 父は何でも1人でやるのが当たり前の人でしたけど、僕は性格的に1人ではできないので、いかに人に協力してもらいながらやるかを考えています。

 以前はこの遺族支援の事業のパンフレットも葬儀会社に置いてもらうとか、自力で営業していくことしか考えられませんでしたが、最近は沢山の人に出会うようになって、保険会社が資料として使ってくれたり、この前に会った看取士の方たちは看取までは自分達がサポートしたらその先はつなげたいとか、自然に僕たちのことを紹介してくれるようになりました。
 そういう人たちが自然と広げることができるように、今はいろんな人たちと出会いながら、自分達ができることを正直にお伝えして、使えるところを使ってくださいとお願いしています。本当にお客さんが助けてくれているなと感じています。

遺族支援事業のきっかけは父の死から

Q.夢を描くようになったきっかけは何がありますか?

山本 遺族支援を思いついたのは、両親からも葬儀が終わってからが大変だと聞いていて、実際に自分が父の死を通して僕が経験したことがきっかけになっています。

 元々、親が作った会社が『拝葬』と『アルド』という会社で、ご遺体の処置や、ご遺体を運んだり、当時、当たり前だったご遺体の臭いを無くす薬品を企画製造して販売していました。

 僕は少し家庭環境が複雑で、実の父と、育ての父が違うのですが、拝葬がきっかけで母と育ての父が出会ったと聞いています。

 大学を出た後、マルハンに就職し、一度、親の拝葬を手伝いましたが、父の指導が厳しかったこともあって一度やめて、不動産会社に就職をしました。売り上げでトップになるぞと、なりふり構わず仕事をして、年間2000万円ぐらいを売り上げてトップになりました。ですが、その結果として、当時結婚していた妻が居なくなってしまったんですね。その時に今の妻と出会って、もう一度拝葬に戻ることに決めました。拝葬での父は本当に厳しく、人としての基本を叩き込まれました。

 拝葬に戻って3年ほど経ち、その中で父が胃癌であることがわかって、平成29年の2月に胃を全て摘出することになりました。その時にクリアしていたと思っていたのですが、平成29年の10月頃、おでんを食べたいと父が言うので買って帰って来ました。ですが、その後にだんだんと父の様子がおかしくなっていったので、とにかく病院に行こうと強引に連れていったら、おでんが腸に詰まっていたことがわかって、手術をしなければならないとなったんです。
 だけど手術をするにも名字が違うと病院から突っ込まれて、なんとか自分との関係を説明して手術に至りました。父からは皆には言わないで欲しいと言われて、僕は会社の口座とか、いつもどこに連絡しているのかとか、何も知らない状態だったのですが、父のことを隠しながら、メールをこんな感じかなって返信したり、何とか対応したんです。ですが手術が終わったあとも容態は悪くなるばかりで、誤嚥性肺炎だと医者から言われ、いよいよだなと覚悟を決めました。

 結局、父は亡くなって、父の死後の手続きで市役所にいったところ、母との籍を入れていなかったこともあって、言われた通りに書類を用意したら別の担当者にダメと言われて、「息子です」と言っても、「証明してください」と言われるだけで証明することができなかったんです。市役所のなかで怒鳴ったりしましたね。
 冷静に考えれば抜け道があることはわかりますが、父の死の直後で冷静ではいられませんでした。当時は生活の全てを父に依存していましたから、とても怖かったんです。本当に信用できる人にしか相談できないし、あの時の自分は簡単には相談できませんでした。全員にムカついていましたし、誰も信頼できなかったんです。

 その時に、軽く何でも相談できて、寄り添ってくれる人がいて欲しいなと思ったんです。これが今の遺族支援事業をやりたいと思うようになったきっかけです。だから僕は普段スーツを着ない様にしています。いつも相談しやすいように在りたいと思っています。

自分がこうしたいじゃなくて人が喜ぶ顔を見るのが楽しい

Q.困っている人を助けたいと思う心のきっかけは何があったのでしょうか?

山本 今年僕は31才になりますが、生まれて31年、気を使わなかったことは無かったです。嫁にも気を使いすぎって言われますね。

 それを象徴する話として、小学校の頃に見ていた2つの夢(眠るときの夢)があります。1つは壁に仮面がいっぱいあって、今日はこれって勝手に顔についてくる夢です。もう1つがドーム型の家が崖に建っていて、周りを狼に囲まれていて、最後は確実に皆食べられて目が覚めるというような夢を見ていましたね笑

記者 お家のなかでも気を使っていたということですか?

山本 小さい頃は母親が傷つくんじゃないかと思ってしまって、聞きたいことを聞けない時もありましたね。
 今でも覚えていますが、小六の時、17時に実の父から「もう一緒に住めないから頼むぞ」と言われました。丁度妹が生まれたのと同じぐらいに父が居なくなった形で、母は父とのことは上手に隠していたのか、急にそう言われた感じでしたが、その時に「ああ、俺が守らなくちゃ」と思ったのを覚えています。
 高校時代から両親がほぼ家にいなかったので、妹が保育所の時は送り迎えは僕がやっていて、大学時代の後半も授業のない時間に迎えに行くのが当たり前で、僕は別に辛くないし普通だけど、母は迷惑をかけたねと言っていました。 

 自分がこうしたいじゃなくて相手が喜ぶ顔を見るのが楽しいんですよね。その反面、今まで何でも言える関係を経験したことがありませんでした。
 今までは自分が気を使っている自覚も無かったのですが、今の妻と出会ってから、彼女がちょっとしたときに突っ込んでくれるお陰で、自分がものすごく人に気を使っていたことも、何でも言える関係を持っていなかったこともわかって、自分がこうしたいとか、自分が思ったことをそのまま言えるようになれたんですよね。本当に彼女には感謝しています。

記者 お客さんや奥さんへの感謝、「感謝」が山本さんの中で、原動力のように感じますね。

山本 父が亡くなったのが29年の11月9日で、10月入院してから、流石にどうにもならなくなっていたので11月2日に2人の業者にだけ事情を伝えて助けてくださいとお願いをしたり、母を合わせて別れの挨拶をさせたり、何とか葬儀までをやりきりました。丁度、雨の中の葬儀でしたが、11月11日が僕の誕生日で、お骨を持って帰る時に虹が出ていて、不思議と笑えたんですよね。
 そこから父の持っていた飲み屋の名刺を見つけて、今の奥さんと父の行きつけの飲み屋ツアーをしようとなって、色んな所を回る度に「貴ちゃんでしょ?」って皆知っていて、「あいつは本当によく頑張っている」とか、「もっと成長する」とか、初めて父が僕を褒めてたことを知ったんです。生きている間はまったく感謝がありませんでしたが、父への想いが感謝に変わりました。僕は今こうしていられるのも、本当に多くの人のお蔭だと思っています。これからも少しでも困っている人たちの助けになりたいと思っています。

記者 山本さん、ありがとうございました!

記者 Mission Link 堀江・赤尾
編集後記 今回、山本さんにインタビューを行って、いつも明るく元気な山本さんの背景にご自身のたどってきた人生の涙と、それを超えていく出会いの中で今の山本さんが作られていったことがよくわかりました。
これからも多くの人たちの助けになるよう活動を応援しています。

山本貴之さん・遺族支援事業アルサポのHP・Facebookアカウントはこちら!

HP「株式会社アルド
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Facebookアカウント「山本貴之さん

この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36


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