鈴木みそ【マンガ家の生活】 vol.11(10月12日発行)東北ボランティアツアー報告
今週の日記
10月5日(月)
しりあがり寿事務所で打ち合わせ。
ビームの編集長、岩井さんと3人で話す。
しりさんはあいかわらず飄々としていて、とても素敵な人。岩井さんは何度も一緒に岩手に行っている関係なので、タブーなく何でも話す。
「みそさんこれ書いちゃだめですからね」という話を沢山聞いた。書いちゃダメというのなら、面白い話をしてはいけない気がする。
聞いたら書きたくなるよね。うんうん。
しばらくしたらこっそりそれとは言わずに書いていくのでお楽しみに(笑)
渋谷の立ち飲み飲み屋素晴らしい。調子に乗って飲みすぎてしまったので、一人カラオケ2時間で発散した。
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10月6日(火)
夕方5時からMacファン打ち合わせ。だったのだが、すっかり忘れていた。
5時40分に電話がなり、あのー、みそさん。と言われて、うわっ忘れてました。ごめんなさい。と言いながら自転車でカッ飛ぶ。
アップルウォッチがあれば予定を忘れることはない。と思っていたけど、まあそんなことはないですね。
最初の頃は腕でブルブルと震えるので、これはわかりやすい。と感心していたが、うるさい目覚ましなら必ず起きられるわけではないのと同じ。人はすぐ慣れてしまう。
家族lineでどうでもいい会話のたびにブルブル震えるのも困る。大事な情報だけ伝えるようにするには、どんなしくみにしたらいいのか。そこを誰かきっちり作ってください。
酒を飲みながら、嫁とみっちり会話。嫁が珍しくべろべろになった。
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10月7日(水)
朝ジョギング。
昼テニス。運動で死にそう。
嫁は頭がいたいといいながらお仕事に出かけていった。
テニス仲間が映画に出るというのでチケットを買った。出ると言ってもゴジラのエキストラという話ではないです(笑)
プロの俳優なので。
「東京の日」おもいっきり主役。彼はテニスもくそ上手いんだよね。高校時代北海道の県大会で勝ち上がった実力者。二枚目で運動もやる。のに、囲碁も強いらしい。なんだそれ。時々いる全部持っている人だな。
面白いかなー。
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10月8日(木)
体が重くてしんどいので、運動おやすみ。
運動しないと、いつまでもダラダラしてしまう。たまにはいいか。
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10月9日(金)
姪のiPhone6sの契約ができたので、余ったiPhone5cが朝送られてきた。よし! と初期化したまではよかったが、息子のバックアップにロックがかかっていて戻せない。バカ。なんでロックをかけるんだか。
息子が戻った夕方、何種類かのパスワードを入れるが弾かれる。またこの問題か。
日本製のマシンなら、いくらロックしても問い合わせればなんとかなりそうだが、Apple は本人が死んで、パスワードがわからない。と言っても教えてくれない。もう、外人は融通が利かないからねー、本当困る(笑)
大文字を組み合わせたら、同期が始まった。やった! と息子と 手を叩いて喜んだのもつかの間、画面がフリーズし続けるので初期化からやり直しを2回。
息子iPhoneの画面が復元され、さあ、SIMのProfileを入れるぞ。と思ったがSafariがない。
Safariどこ? と聞くと「お父さんがブラウザ入れちゃいけないって言って機能制限をかけたんじゃん」
ええ? そんなことしたっけ? 3年も前のことだからなー。もうお前Chrome入れてるから意味ないじゃん。というとニヤリと笑う。
機能制限を外そうとしたら、パスワードが通らない!
またかよ。忘れるなよオレ。
息子は何度もこれを外そうとしたらしく、限界まで入れたおかげで、パスを入れ間違えると1時間次のパスワードを入れることができない。バカ。
1時間ごとに1度試すが3回ミス。もうこの作業何時間やってるんだか。
もうこれは諦めて、新しい名前でiPhoneをまっさらから作りなおすしかないわ。
はああ、iMacの前でため息をつくバカ親子。
そうだ。どうせ馬鹿な息子用のパスワードなんだからと、適当に1234で入れてる場合があるからそれをやってみよう。
と、入れてみたら、通った! 通りました!
やったー。2人で抱き合って喜ぶ。
よーし、これでProfileがダウンロードできるから、そこでiijのSIMが入るぞ。
とダウンロード、すぐに再起動。
これで長い戦いに終止符が打たれるのだ。
再起動したが電波を掴まない。なんで?
もう夜中で明日は始発に乗って出かけなければならない。今日はここまで。
俺たちの戦いはまだまだ続くのだ。
続くなよ。
(その後、色々あって1週間後に見事つながりました。SIMのキズが不通の原因だった)
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10月10日(土)
朝5時起きで、新幹線。
目的地は岩手の盛岡だ。毎年やってきている、しりあがり寿団長の漫画家ボランティアツアーである。
うんこが出てないのが気がかりだが。元気出していきましょう。
誰かのツイートで「ちんこ出していきましょう。エーザイ」
とあって、不覚にも笑ってしまい、未だにエーザイを見るたびにクスッとしてしまう。
東北ツアー初日。毎年行っているお家で宴会。いつも食べてばかりですいません。と言っていたら、今年は飲んだあとに草刈りが待っていて、足元がふらつく中で鎌を振るった。足を刈らなくてよかった。
夜、大宴会。いつもながらよく飲む。食べ物も美味しい。こうやって飲み食いで地元にお金を落とすのが最大の目的であります。
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10月11日(日)
さんてつに乗っている。
今日は久慈にある水族館で魚を描くイベントがあるという。
あまちゃんの撮影で使った駅で降りて記念撮影など。ちゃんと電車が止まって観光客用の撮影時間を取ってくれるのはすばらしい。
トンネルに向かって、ゆいちゃんのように「マンガ家になりたーい!」と叫んでみようかと思ったが、知り合い以外もたくさん電車に乗っていたのでやめた(笑)
子どもたちと魚の絵を描くイベント。今まで一番子供が多いんじゃないか。というほど盛況。80人も参加してくれたらしい。マンガ家が書かなくても子どもたちの自由な絵が素晴らしいので遊んでいたらあっという間に時間が過ぎた。
目の前のお店でまめぶ汁を食べる。まめぶも松茸ご飯も美味しかったが、一度に大人数が押し寄せたせいか、お店の人が大混乱。小皿があったりなかったり、ご飯が足りなかったり、きのこの大根おろしあえにきのこが入っていなかったり、もうばたばた(笑)
岩井さんの小鉢には大根おろしだけが入っていて、これはどこに入れる大根おろしなの? などと言っている。
まめぶにしても、あまちゃんの影響力はいまだに大きく、朝ドラで成功すると10年は軽く食えるということがわかった。
エンタメは当たると大きい。これを明日の話の引きにしよう。漫画だってどかんと当たると、マンガ家本人はおろか、ご当地まで潤うのだ。
誰か素敵な話を描いてくれよな。
お土産物などを買った後、車で3時間。「モンゴル村」という場所に移動。
夜はバーベキューだという。そろそろ旅行の食べ疲れで、あまり食欲がなくなっているのだが、周りのみなさんは元気。甘いケーキや塩ソフトクリームをペロリと食べ、南部煎餅をツマミにビールをガンガン飲みながらバス移動。タフだ。
三宅乱丈さんは琥珀を買っている。あれ? さっきの店でも琥珀買ったよね? と聞くと、「これがやる気の元なのよ。働こうって気がしてくるでしょ?」と三宅姐さん。
タイのツアーに参加しているような気がしてきた。
モンゴル村は、震災後に簡単に建てられる家、ということもあって、モンゴル人青年が作った村で、本物のゲル(でっかいテントのような家)に泊まれるのが売りの施設。
羊の肉を焼いたり焼きそばを作ったりしながら楽しく食事。あいにくの雨だが、テントなので大丈夫。全員が羊臭くなりながら浴びるように飲む飲む飲む。
ゲルの中でも酒盛りをしていると、村長の青年がやってきて変わった楽器を弾きながら、ホーミーをやってみせてくれた。
低い「ビウゥゥゥゥゥ」という音を口から出しているところに、倍音の高音が鼻をぬけて同時に低音と高音が出る。というのがホーミー。非常に広いモンゴル平原で、何キロの離れた人に声を届かせる方法として発達したものだと言う。
ちゃんと高音部分がしっかりハウリングのように響いて、おおおー、とマンガ家集団。
全員がぅいいいいいいぃぃと声を出すが、そう簡単に鳴るものではない。
各ゲルに戻った後も、女性たちはホーミーの練習をかなりやったらしい。
もうどのくらい食べたか記録するのも面倒になって、「カロリー管理」アプリを2日立ち上げていない。
先週ではなくて今週が危機だったのだ。運動はやらない、カロリーは測らない、日記は書かない。
いや日記は書かねば。と眠い中ゲルの中でMacBook Airを打ってます。電気は来てます。
この部屋はしりあがりさんと羽生生くんとオレ。羽生生くんは昨日も同じ部屋で「僕のいびきうるさいですか」と心配していたが、全然聞こえない。
一番やばいのはデザイナーのセキネシンイチさんとボランティア団体代表の寺井さんで、この2人がダントツのいびきびとだ。
ゲルの中は壁にそって丸くベッドが並んでいて、全員同じ方向に並んで寝ると、頭と足がそばになってよろしくない。というので、頭は頭と、足は足がくっつくように寝るのだが、いびき人2人は頭をくっつけあうとよい。うまくすると音がぶつかって無音になるかもしれない。などといじられていた。ノイズキャンセラーオヤジ。
実際どうやって寝ているのかは不明。もう眠いので寝る。
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10月12日(月)
盛岡駅に隣接しているホテルで似顔絵イベント。
似顔絵を描く前に、しりさんとオレと編集岩井さんで震災から4年、というテーマで舞台で1時間話す。
岩井さんは話すテーマに合わせた画像を用意しているが、最後にオレに話が振られ、未来はどうしたらいいのか。という「限界集落(ギリギリ)温泉」っぽい話を10分話さないといけない。
10時スタートというので、すでに壇上に上がっていたが、その間に猛烈に検索をかけて、岩手の特徴、特産物、数字などを書き出す。よし、これで話す方向は決まった。どんな付け焼き刃だ。
岩手副知事が重々しい挨拶をして、堅い空気に包まれた会場で、震災の話題なので、どうしても静かになってしまう。この空気でやるとすべってしまうんで、なんとか和ませようと茶々をはさんでいく。しりさんはもとから柔らかい人なので、だんだん会場が和んでいく。人徳。
震災後、岩手に移住したマンガ家「竹谷州史」くんの話と地元のマンガ家「にざかな」のまさやさんの話が終わり、オレに話が振られた。
さっき検索したデータをさも今まで考えていたかのようにつらつらと披露。どうしたらこの地味な県岩手をメジャーにするのか。やっぱり地元の話になると食いつきがいい。笑いがおきてリズムに乗った。
岩手にTOKIOを呼んできて、家を作って住まわせてしまう。外人とオネエを呼んで、マイノリティにやさしい楽しい街を造ろう。それって芸能界じゃん(笑)
IT企業を誘致して、シリア難民を受け入れて、老人の医療費を切り捨てて子育てを補助しましょう。
でもなにより岩手のいい所は人間の優しさであり、人のつながりこそが資産。それを大事にすれば、かならずや復興するでしょう。
10分の予定を5分ほどオーバーして、提案は終わった。
副知事にはとても受けて、終わった後に「いや実はいまこんな企画がありましてね」とたくさんの試案を聞かせてくれた。いやオレに言ってもしょうがないですよ(笑)
全員で記念撮影。
「はいチーズ」とカメラマンが言うので
オレが「ほーみぃぃぃぃぃぃぃ」と言うと、全員が笑いながら「ほーみぃぃぃぃぃぃぃ」さすがマンガ家、ノリがいい。
カシャ。
みんな口元が変(笑)
これ、来年覚えていて、うまいタイミングで言えば確実に笑いが取れる、と思ったが、絶対覚えてないな。
というわけで、心配していた壇上イベントも終わり、似顔絵を何枚か描いて今年のツアーは終了。
マンガ家のみなさんと分かれて新幹線に。基本的に現地集合現地解散なのだ。
という日記を新幹線に揺られながら書いてます。あー、よかった。月曜だけどギリギリ間に合いました(間に合っていませんか)
あー、眠い。眠すぎる。でも旅行はやっぱり脳みそが活性化して楽しいね。
果たして来週「運動」は復活するでしょうか。がんばれ日本。がんばれオレ。
(イベント後なので話がでかい)
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Q&A
【質問:みそ先生の学歴とアートとの関係について】
P.N.ようへい
みそファンになってから20年間ずっと気になっていたことをご質問させてください。
みそ先生の最終学歴は東京芸術大学除籍ということで、
この経歴は、逆に漫画界では異色だと思われます。
除籍になった理由はただ単に編集のアルバイトが忙しくなっただけでしょうか?
アート・画壇・美術・権威などの芸大という最高学府での空気が肌に合わなかったのでしょうか?
私は勝手に後者ではないかと邪推してきました。
ただ、芸大出身の会田誠氏の新聞記事をツイートしている事などを見ますと
意識的に距離を取ってるとは思わないのですが。
先生の著作では学歴の件についての言及はほぼ見受けられないので、
つっこんだお話を聞けたらなと思います。
不躾な質問ではございますが、よろしくお願いいたします。
【みそのアンサー】
あまり学歴を書かないのは、それを出すのってあまりかっこよくないな。と思ってるからです(笑)
絵画の世界の人にとって、東京芸大ってすごいんですよ。いやほんと。黄門の印籠並みの力があるんですよ。
でも、マンガ家というのは学歴の関係ない世界ですよね。中卒も大卒も、東大もマサチューセッツも、マンガの面白さとは関係ない。そういう平等な世界です。それって実力こそ大事という厳しい社会でもあるので、そこで学歴をひけらかすのってかっこわるいでしょ(笑)
ちゃんと卒業しなかったのは、当時からマンガ家になりたいと思っていて、芸大は入ったらかっこいいけど、出る必要はない。と思っていたからなんですが、今思うと青いですね。
ちゃんと勉強しておけばよかった。素晴らしい教授と環境があったのに、雑誌の世界のバイトをしたりしてたんですから、もったいないことです。
でまあ、権威が好きじゃない。というのもちょっぴりあります。肛門の陰嚢、の方がむいてますからね(笑)
ちなみに会田誠さんは同級生です。留年した後のクラスなので(油絵科は1学年55人1クラス)ほとんど記憶はないんですが、向こうが覚えていてくれました。アートの世界で活躍していて素晴らしいですね。アートは50歳を超えてからが伸びるそうなのでここからもっと売れるんじゃないですかね。羨ましいことです。
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【質問:タイ移住について】
ペンネーム:ウッドボール
みそ先生、はじめまして。
『アンタッチャブル』時代から楽しませていただいています!
レンタカーのナンバープレート「わ」を、ガムを使って「ね」にするという技が妙に印象に残っております(笑)
みそ先生は以前からタイに移住するというお話をされていますが、なぜ移住しようと思っているのかと、生活設計はどうされるんだろうという点をお聞きしたいです。
自分も海外移住には憧れますが、現実逃避の夢物語な感じですので、みそ先生の計画が気になっております。
『アンタッチャブル』や『銭』、『ナナのリテラシー』など
様々な業界を取材して描く「取材まんが」を興味深く拝見しているので、タイに移住した際は、タイまんがをぜひお願いいたします!
【みそのアンサー】
タイに半年住んだのは、今からもう20年以上前になります。
あの頃は元気があったので、いつかここで暮らそう。と考えていたんですが、だんだん億劫になりますわよね、何事も。
去年だったかな。そろそろ何年後に移住。という正確な予定を立てねば、このままいつまでも東京で暮らすことになってしまう。と発起してタイの様子を見に行きました。アパートメントは月いくらくらいなのか。仕事するための通信は安定しているのか。などなど。
でね。どうもあまり具合がよろしくないのですよ。あんなにキラキラ輝いていたあの国は20年たって、20歳老けてしまった。街がどっしり年老いた感じがしたんですよ。新陳代謝しているように思えない。
自分も20年経って50代になってしまった。アーリーリタイアメントならそれでもいいが、まだ20年は働かないといけない。タイと日本の生活金額は、当時5倍から10倍の開きがあり、日本の部屋を貸したら、十分に生活費が出るので、のんびり仕事をしても暮らしていける。という目論見でした。
ところが、日本の住居は下落して、20万円以上で貸せると思っていた家は、15万以下になり、借り手がつくのかどうかわからない状態。それでもまだローンは10年残っている。
タイの物価はあがり、もう3倍程度の差しかなくなった。
南北差を利用して、発電しようというエネルギーの元が、20年で非常に小さくなってしまった。これからもどんどん小さくなってしまうでしょう。ああ、移住計画は絵に描いた餅になってしまった。と正直思ってます。
もっと安い国だったら可能性はありますが、政情が不安定だったり、食べ物が合わなかったりします。アジアをまわってみて、タイが一番自分にはあっていた国なので、とてもがっかりしてます。まだ完全にだめになったわけじゃないんですけどねー。通信さえあれば世界中どこでも仕事はできるので。その前に仕事する日本の相手(出版社)が残っていればの話ですが…。
「現実逃避の夢物語」というのはオレもおんなじです。
やっぱり働かないで楽して生きる、ってのはできませんわ(笑)。働かないと。
マンガ描こうゲージが一つ上がって3になりました。
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みなさんの三連休はいかがでしたか。
メルマガの感想や質問はこちらへ。
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