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春の話

まっさらなタオルが、空を横断してくのが見える
間違った日付に丸をして、うっかり前日に歯医者へ行って
あの道を帰り道に選ぶだけで懐かしくてまばゆいなんてうっかり悲しくなって指が腕が肩が忘れられないで
小さくなってさよなら、またいつか

おまもりみたいにいつもいつも首からぶら下げている、人魚のしていた穴のあいた貝殻、きらきらひかって、日に翳すと透明になってあたしの目には映んのよ

枕元の大きな木にたくさん美しいこなをつけて眠るね、たばこが最後の砦って煙の砦って儚くて嘘でしょうあたしもいつか吸ってしまったように世界に溶けてまわる時間に必ずあの人とあの時と同じように話ができる

あたしをかわいそうなんて思わない

久しぶりに会いましょう小さいこどもに、飛行機雲が海へ唐突に身投げしてできたのが地平線なのです。好物を食べて、笑う、神様が色として、形として、においとして、触れられるものとして、存在するのなら、海のずっとずっと向こう、知らない世界にゆくとき、きっとついてきてほしい。ずうずうしいかもしれない。けれどこの貝殻を持ってきてくれた。あたしに与えて教えてくれた、間違いなく大きな世界をまわる時間のなかで

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