「世界の終わりの塔」の楽曲化に寄せて

 こんばんは。六野みさおです。noteに投稿するのはこれが初めてになりますね。今回は、四人組グループ「noverhythm」での活動について話します。

 「noverhythm」は小説とボカロの融合を目指すグループで、ボカロ曲の小説化や小説のボカロ化を行っています。今回、私の小説「世界の終わりの塔」が4696さんによって足立レイのボカロ曲「leave」で表現されました。まずはそちらのリンクを。

 4696さんは映像も自身で制作なさっています。4696さんは去年末が初投稿の新人ですが、ボカロや音楽の本質について考察する良い曲をすでにいくつか投稿されています。今年5月の、自身初のカゼヒキ作品である「祈り」はYouTubeで自身最高の伸びを記録するなど、調子を上げている印象です。今回の「leave」もピアノメインの美しい曲です。ぜひ聞いてみましょう。

 さて、今日私が話すのは、この曲の原作の小説「世界の終わりの塔」の自己分析です。まずはリンクを。

https://ncode.syosetu.com/n1387hz/

 これは2022/12/13に投稿されたものです。当時の私は高校二年生ということになります。なろうでは38pt、カクヨムでは19ptで、ややカクヨムのほうが伸びています。とはいえ、今はそういう話をしているわけではありませんから、内容を見て分析していきましょう。ずいぶん前に書いたものなので、私自身もこの小説の存在を忘れかけていました。

 実は、4696さんがどの小説を使うかはMV投稿まで私にも明かされていませんでした。プレミア公開で「あ!」と初めて理解したわけです。私は正直別の小説が採用されるかと思っていて、「世界の終わりの塔」は書いたことすら忘れていました。本当に今慌てて読んでいるのです。私はこんな原作者でよいのでしょうか。でも、それが芸術の融合の醍醐味なのかもしれません。

 前置きが長くなりました。本文の分析に入ります。

 本文は草原に立つ時計台の描写で始まります。その時計台の屋上に「彼女」という人物がいます。おそらく若い女性、10代の少女でしょう。

 作中の世界は文明が崩壊しています。彼女は自分を最後の生き残りの人間だと思っています。それが真実かどうかは作中から読み取ることはできませんが、彼女が長い間自分以外の人間を見ていないことは事実です。もちろん、そんな状態に置かれた人間が正気を保っていられるわけがなく、これが前半の山場である彼女の自殺願望につながります。

 ここでポイントになるのは、いわば「最後の人間のジレンマ」です。彼女の認識では、彼女が死ぬと世界から人間は消えます。つまり、彼女が死んだとしても、それを認識する人間はいないわけです。それが彼女の突発的な自殺願望を抑制することになります。その後、少し典型的な空腹感の描写のあと、虚空に手を伸ばす少女が描かれます。これは終盤への伏線となります。

 次に、この作品のシンボルである時計台と少女の関わりが描かれます。時計台はもちろんこの世界に文明が栄えていた時代に建てられたものです。しかし、文明は崩壊し、時計台はその用を為さなくなりました。それでも、長い間世界の移り変わりの中で立ち続けていた時計台に体を預けることで、彼女にもう一度世界を終わらせること(ここでは、彼女が死ぬことによって世界を観測することができなくなること)を無意識的に思い出させています。ところが、まさに彼女がふらふらと身投げしようとしたとき、夜明けが来て、これが転機になります。

 とりあえず「世界に、色彩が戻った。」から次の段落までは描写をお楽しみください。夜明けの絶景に感動した彼女は、謎の声を聞きます。この声に根拠はありませんが、その後の彼女の手の動きからは、彼女が前半に比べて希望を取り戻していることが読み取れます。

 ここまでが本文の解説でした。それではちょっと裏話を。

 この作品はもともと、よく知られているボカロ曲から影響を受けています。ハチ氏の「WORLD'S END UMBRELLA」ですね。終末世界という設定、高い建物が中心を占めるという点では、似ているところがあります。違うのは、ハチ氏の曲で登場する男は私の作品では現れません。声は聞こえてきますが、それは限りなく彼女の空想に近いものです。あくまで一人の人間が終末世界でどのような心理状態になるのかを、私は描きたかったのです。このあと彼女が男に出会って恋が始まる展開を予想した人も多いかと思いますが、私はそこまでは描かないつもりです。あと傘関係ない。それに、実際楽曲化された段階では、ハチ氏の影はほとんどありませんね。つまりこれでよかったのです。

 近いうちに4696さんの曲も小説化するつもりです。なろうは二次創作に厳しいので、おそらくピクシブになります。4696さんのメインテーマであるボカロの存在意義のようなものにスポットを当てたいです。またそのときはよろしくお願いします。

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