大人になるきみへ⑥ 地球上にはじつにさまざまな⼈が住んでいます。さて、そのなかでまったく同じという⼈はいるでしょうか?
★★★『大人になるきみへ』というのは、帝京大学病院難聴児親の会のメンバーが、5年間話しあい、知恵を出し合って執筆し制作した小さな本です。幼児期の言語指導を終えて、これから思春期を迎えようという子どもたちに向け、ああでもない、こうでもないと言い合った挙句にたどりついた11本のメッセージ。8人のお母さんたちが分担して執筆しました。
3本めのメッセージでは、「この世界にひとり“自分”として生きること」、そして「何のために生きるのか」について深く考察しています。★★★
地球上にはじつにさまざまな⼈が住んでいます。さて、そのなかでまったく同じという⼈はいるでしょうか?
きみが⽣きているこの地球に、いったいどのくらいたくさんの⼈が⽣活しているか知っていますか?
ちょっと考えてみても、いろいろな⼈たちが頭に浮かんでくるでしょう。
⿊⼈、⽩⼈という肌の⾊の違う⼈たちもいます。⼩さな子どもや⽼⼈もいます。男性もいれば⼥性もいます。
それらの⼈たちは、みんな違った⽣活環境や⽂化のなかで、その⼈なりの考え⽅を持って⽣活しています。
もっと⾝近な⼈に⽬を向けてみましょう。
学校のなかを⾒回してみると、たくさんの友だち。でも誰ひとりとして、同じ⼈はいませんね。姿形が違うように、考え⽅も、健康状態も、能⼒も、みんな少しずつ違います。
でも、それが当たり前で、みんなが同じ⼈ばかりだったら、かえって不気味ですよね。それに、⼈と知り合う楽しみもなくなってしまいます。
⾃分にはないものを、他の⼈のなかに⾒つけたときこそ、出会いの喜びがあるわけですから。
どの⼈もどの⼈も同じものが好きで、やることも考え⽅も、いつも⾃分と同じだったら、毎⽇がどんなにつまらないものになるかしれません。
⾃分には思いつかなかったことを、他の⼈のなかに見出したとき、なんだかワクワクした気分になりませんか? そのワクワクしたような気分をたくさんあじわい、⾃分のなかに新しいものをどんどん取り⼊れることによって、いまの⾃分より、⼀回りも⼆回りも⼤きく、たくましく成⻑する ことができるのです。
⼈と違うことは、新しい発⾒に出会う多くのチャンスを持っているという点で、とても素敵なことですよね。違いを素直に受け⼊れましょう。⾃分と違う点を、お互いに、ありのままに認め合いましょう。
そうは⾔っても、⾃分だけが違うと思ってしまうと、「間違っているのではないか」とか「劣っているのだ」と、マイナスの⾯としてとらえがちです。そんなときは、もういちど⾃分⾃⾝を⾒つめなおし、⾃分について深く考えてみましょう。
「⾃分はどんな⼈間なのか」。⾃分のなかでプラスに評価できるもの、マイナスに評価しなければならないものを洗いざらい調べなおしてみるのです。そうすることによって、⾃分のなかのいろいろな⾯が⾒えてきて、いままで⼼の⼤部分を占めていたマイナスの⾯が、⾃分という存在のなかのほんの⼀部分だということに気づくはずです。
そして、たくさんの要素が組み合わさって、⾃分という存在を作り上げていることもわかってくるでしょう。
さきほど、誰ひとり同じ⼈はいないと⾔いましたが、そうだとすると、きみという存在は、かけがえのない⼤切な、きみだけのものということになります。きみは、きみだけの⼤切な宝物です。代わりになるものは、この世のなかにはただの⼀つもないのです。
⼈の違いを認めるのと同じように、⾃分⾃⾝の違いをも、素直に受け⽌めることが⼤切です。誰もが違いをありのままに受け⼊れ理解し合えれば、じつはみんな同じなんだと考えることができて、周りの⼈と違うからといって、マイナスとして切り捨てていくことはなくなる のではないでしょうか。
みんなどの⼈も、同じ場所に⽴っているのです。どの⼈も存在価値があり、⽣きる喜びがあります。
⼩さな社会である家族を考えてみても、 みんながお互いを愛し合い、みんなが愛される存在であり、誰ひとりとして⽋けることは考えられないでしょう。家族のなかでの確かな存在理由は、そのまま社会のなかでも当てはまります。
何かができるということが、⽣きていくことではありません。
⼈を愛すること、⼈から愛される存在であること、もっと元を正していけば、⽣きることを真剣に⾒つめ、その⼈なりの⽣きる喜びを⾒つけられること。それが「⽣きている」ということなのではないでしょうか。