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44:ヒロイン像やテーマ。変化し続ける韓国ドラマ(コラム)

『愛の不時着』にハマって、あらゆる関連情報を調査しまくった韓国在住ブロガーが、ドラマを2倍、3倍、いや100倍楽しむための情報を提供します。
この記事では『愛の不時着』全話共通のディープな話を紹介。視聴中の方は話数表記を見て、ネタバレに気を付けながらご覧ください。

現代のヒロイン像と不変の真理。両方を描き切っての大ヒット(共通)

 今回、日本で『愛の不時着』が、特に多くの女性視聴者の共感を得た理由の一つとして、「自立したヒロイン像」という点が着目されました。「冬のソナタ」などの作品と比べると、ヒロインの描かれ方が大きく変化しており、男性に守られる存在から、経済的にも精神的にも自立したユン・セリというヒロインが、日本でも多くの女性視聴者、特に働く女性の共感を得て、『冬のソナタ』の時代とは違う新しい視聴者層を開拓した一因となりました。

 韓国ドラマでは、女性ヒロインの設定は、時代の流れに合わせて少しずつ変化してきました。素敵な男性主人公に理想の男性像を重ねていた時代から、様々なジャンルの作品が登場するにつれ、主な視聴者である女性の共感を得るために、男性主人公の素敵さよりも、女性ヒロインの描き方でした。
    そのことを受けて昨今の韓国ドラマでは、女性視聴者が憧れる、セリのような自立したヒロインだけでなく、感情移入しやすい、どこにでも居そうな平凡なヒロインや、女性の生きづらさに直面しているヒロインなど、作品ごとに、多様なヒロイン像が描かれています。

「男性が女性を守る」という設定が多かった時代における男性主人公は、財閥や社長など肩書は立派なものの、ドラマの中では、目の前の恋愛に夢中で、ほとんど仕事をする様子が描かれないといったケースが多くありました。仕事を途中でほったらかして、彼女の元に駆け付けたり、公私混同で、財力や権力を惜しみなく彼女のために使う、という描写も珍しくありませんでした。
 しかし、ドラマにおけるリアリティが重要となり、キャラクターの描き方がより丁寧になってきた昨今では、本筋のストーリーと同じくらい、主人公たちの普段の生き方、信念などがしっかりと描かれます。
 今回の『愛の不時着』でも、セリは1話早々、北朝鮮に不時着しますが、韓国ではどのように自立して生きてきたのかについて、回想シーンなどを通じて丁寧に描かれます。韓国に戻ってからも、自分を狙う悪党たちのアジトに自ら乗り込んでいくなど、セリの強さや信念を表現するシーンも多く登場しました。こうした強い女性の描き方も、今どきの視聴者の共感と好感を得た重要な要因の一つと言えます。

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