デザイナーの資料本|002 石川硝子工藝舎『コップ20』
前回の記事が思っていた以上に好評だったので、調子に乗って続けます。デザイナーが資料として持っておきたい「資料本」コーナー、2回目はこちらです。
石川硝子工藝舎『コップ20』
我が家でも愛用している、伝統的なガラス作品を岡山で吹かれている石川昌弘さん。その吹業20周年を記念して制作された本です。20周年に合わせて全国をめぐるツアーを行われたので、その「ツアーパンフレット」という体裁になっています。
中身は「コップと10人の写真家」と題して、中川正子さんをはじめとした10人が石川さんの作品を撮影したコーナーや
坂口恭平氏のテキスト、
「略歴は威張ってるようだからいらない」と代わりに綴じ込まれた幼少期の写真、骨折した時のレントゲンなど、いい意味で癖のある、バラエティに富んだ内容になっています。
「資料買い」したポイント
1.表紙
この本はコンテンツはもちろん、資料ポイントがとても高いです。まずは表紙。「フランス装」と呼ばれる、表紙に大してひとまわり大きな紙を折ってカバーする作りになっています。
開くとわかりやすいですね。和紙のカバー越しに表紙の文字が透けて見えるように作られているのも見どころ。
2.見返し
表紙と本文を挟む見返しは、薄水色の薄い紙を使用。ラムネ水のような清涼感のある紙は、ガラス作品にぴったりです。
3.本文は袋綴じ
本文は8ページごとに袋綴じになっています。これをどうするかというと…
付属のガラス製ペーパーナイフがあるので、これを使って一つずつ切り離して行くことで、本とガラスの対話が生まれる…という仕組み。
4.本文の用紙
目立ったポイントの多いこの本ですが、僕にいちばん刺さったのはここ。普通は使われることの少ない「片艶クラフト紙」が本文に使われていることです。一般的には包装紙として使われることの多いこの紙、片方はざらざら、
もう片方はツルツルという質感の違いがあるので、普通は本文に使うことが少ないんです。その代わり、繊細な透け感や和紙のような質感があり、個人的にもzineみたいな薄い本を作るときにはよく使うんですが、書籍の本文で使っているのを見たのは初めてです!
こっちがざらざら
こっちがツルツル。
表紙の和紙にもガラス作品の透け感にも呼応していて、手作り感もありながら繊細…と、すごく良い紙のセレクトだなと思いました。
装丁はサイトヲヒデユキさん
この素敵な装丁を手掛けたのは、mina perhonenのDMや書籍なども手掛けるデザイナーのサイトヲヒデユキさんです。不勉強でお名前を知らなかったので、↓こちらの記事などを読んで、お仕事について調べてみようと思います。
石川硝子工藝舎『コップ20』が買えるお店
今回紹介した本は、書店では見かけませんが、大阪のdieciさんのオンラインショップなどで購入可能です。