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縦ロールのウマ娘

アローラ!岬サニーゴです。
少し前まで粘り強く夏曲を聞いていたのですが、秋分もとうに過ぎいよいよ気温も下がってきたため、おとなしく秋曲を聞いています。


それはそれとして、カワカミプリンセスが育成ウマ娘として実装されましたね。皆さんは引きましたか?自分は鋼の意志で天井まで石を貯めていたので当然……

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天井まで貯めた意味は?



ということで、今回はカワカミプリンセスの話をしようと思います。ただ、彼女の素晴らしさを語り切るには自身の理解と咀嚼が追いついていないため、今回はごくごく一部を取り上げます。

少し話は変わりますが、最近『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』なる本を読んでいます。

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これはひょんなことから「プリンセスになること / プリンセスであること」というキャッチコピーを目にし、これ少女革命ウテナの理解高めるのに便利やなって思い手に取りました。実際に少女革命ウテナにおける『王子様とお姫様』の概念を、20世紀後半から平成半ばまでの〈カワイイ〉や〈プリンセス〉の移り変わりから考えることができてとても楽しめました。

本書は、第一章に〈カワイイ〉という概念の変遷を時代の流れと共に解き明かし、第二章では〈プリンセス〉が多様化してしまった背景を考えます。
第三章以降は自分の興味と外れるためあまり読んでいませんが、この二章分は広義アイドルコンテンツを理解する助けとなりました。
特に、本書は過去の女性の流行を雑誌から読み解く特徴があり、これが女性雑誌に新しい風を取り入れる内容の『薄紅色にこんがらがって』というイベコミュでの多層的な感情が発生する理由をよく教えてくれます。

今回は、この本の『〈プリンセス〉とは何者か?』について踏まえつつ、カワカミプリンセスのコミュの一部を考えてみたいと思います。



〈プリンセス〉が指す意味の変遷

カワカミプリンセスはプリンセスを目指しているが、そのプリンセスは決して王族の娘という意味の姫では無い。なぜならこの意味でのプリンセスは、先天的にしかなれないからだ。
では、後天的に得られるプリンセスとは一体何なのか。

プリンセスの根っこの意味は姫、つまり王族の娘である。
ここから、王族という高貴さに着目し「お嬢様」「セレブリティ」「ソーシャライト」がプリンセスの意味傘下に入るが、これらもまた先天的なものである。
また、唯一無二の大切さに着目し「愛しい女性」という意味で使われることもあるが、これは比喩表現の域を出ず、プリンセスの本質でもなくカワカミプリンセスのエピソードでもフレーバー程度にしか出ないため、紹介に留める。


この高貴さを表すプリンセスは、自信とプライドをもって使命に取り組む立派な女性像を形作る。そして、このイメージに憧れた女性のことも、しだいにプリンセスと呼ばれるようになった。

彼女達は「身分的にはプリンセスになれなくとも、イデオロギーはプリンセスになれる」と考えた。これこそが後天的に得られるプリンセスである。
また、この意味では「誰でもプリンセスになれる」ため、ポピュラー文化の対象としてこの志のプリンセスが用いられてきた。ウマ娘作中のプリファイもそういった商業コンテンツの一つであろう。


これで先天的なプリンセスと後天的なプリンセスが出現したが、他にもプリンセスが登場する。それは、ファッションとしてのプリンセスだ。
このプリンセスには高貴さも生き様も存在しない。ただ自分らしさを演出する1ツールとしてのみ存在する。

最後に、ポピュラー文化によって新たに策定されたプリンセスを説明する。コマーシャリズムが対象とする大衆を考えると、このプリンセスには親しみやすさの属性付きまとう。例えば白雪姫のように最初はプリンセスではない存在だったり、やんちゃでいわゆる「お転婆」として描かれたりする。こういったギャップを埋め込むことでこのプリンセスは「周りから愛される存在」となる。

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カワカミプリンセスの〈プリンセス〉は

それでは、カワカミプリンセスはどの〈プリンセス〉に属するのか。自分は「誰でもプリンセスになれる」という文言が再解釈されたプリンセスだと解釈する。そう、自分はカワカミプリンセスを、ある意味で新しいプリンセスの概念だと考えている。

カワカミプリンセスが憧れているプリファイは、先程の最後に紹介した親しみやすさのあるプリンセスである。プリファイの主人公は(異常なまでに)お転婆であり、また劇場版では主人公と伝説のトレーナーとの二人で起こす奇跡という大衆文化由来のエピソードが多分に含まれている。

一方で、カワカミプリンセスはキングヘイローに憧れる描写も度々描かれる。具体的には、キングヘイローの持つ高貴な所作やいい意味でのプライドの高さに憧れている。これは史実においてキングヘイローがカワカミプリンセスの父親であることのオマージュではあるが、プリファイの話がなかった初期のコミュではこのキングヘイローに憧れるシーンしかなく、無視できない存在だと考える。
キングヘイローは牡馬でありプリンセスとは呼びづらいが、育成ストーリーを鑑みてあえて分類するならば「イデオロギーでのプリンセス」の割合が大きい。

つまり、カワカミプリンセスは「ポピュラー文化文脈でのプリンセス」と「イデオロギーでのプリンセス」の両方に憧れているということになる。言い換えると、カワカミプリンセスには「憧れのブレ」が存在する。これは一体何を表すのか。


よくよく考えたらこれはただの前フリなので、後はいい感じに妄想してください。自分でもまとまっていないし、いい加減長いので。



縦ロールのウマ娘

本題です。

縦ロールのウマ娘とは誰のことか?彼女はウマ娘ストーリー(育成ではない、キャラ個別ストーリー)の第5話と第7話に登場します。

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マジで誰?


「相手のウマ娘には見覚えがある。トゥインクル・シリーズでもかなりの成績を収めている強豪だ……!」

とトレーナーは言っていましたが、建前だけのお嬢様にありがちな、虚飾に満ちたみみっちさが随所に滲み出ています。かわいいね。

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そんな縦ロールの縦子はカワカミプリンセスを「自称プリンセスの、最近調子こいてる庶民娘」とイチャモンを付け(ついでに王子様と呼ばれたトレーナーに対してもイチャモンを付け)、走りで勝負することになります。

「ふっ……カワカミさんと言ったわねえ。
貴方……姫とはどんな存在だと思っていますの?」

「!? そんなの決まってますわ! お姫様とは、華麗で、優雅で、勇ましく──」

「……ふふふ、ふはははははは! ちゃんちゃらおかしいですわ!
いいこと、よく聞いておきなさい!」

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縦子のレース終盤での強烈な追い上げにカワカミプリンセスは追いつくことができず、走りの勝負に敗れます。カワカミプリンセスはこのレース結果に対して

だ、だって、だって……! くやし~んですわ~!!
何が悔しいって、あの意地悪な方の言動……!

そっくりだったんですの! プリファイに出てくる……ダークウマ娘側のリーダー、『ダークプリンセス』に!

と話し、縦子は嫌なキャラクターとして描かれます。

しかし、ここで重要なのは、カワカミプリンセスは負けたことではなく、負けた相手に対して悔しさを感じている点です。これはカワカミプリンセスの勝負に対するモチベーションが、『勝つこと』ではなく『(プリファイのような)プリンセスとして活躍すること』であることを物語っています。

つまり、この時点でのカワカミプリンセスは目標のプリンセス像がブレており表層しか見えておらず、更にレースに対しての意識が他のウマ娘とズレているのです。そんな彼女のことを、他のプリンセスやウマ娘は、表には出さずとも疎ましく思っているでしょう。反論があるなら育成ストーリーを見てください、お願いします。


そんな中、周りの空気を鑑みず彼女に声をかけ、この両方を同時に教えてくれたのがこの『縦ロールのウマ娘』なのです。

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縦子の干渉によって、カワカミプリンセスとトレーナーは目指すべき道を再確認することができ、共に一つ成長を遂げました。その成長の結果、この次次回の第7話では、縦子も出走したレースでカワカミプリンセスは見事一着を手にしました。

その回で、縦子も実は(案の定)庶民娘でプリファイファンであったことが明かされます。もしかすると、縦子はカワカミプリンセスに昔の自分を重ねていたのかもしれませんね。自分はそうだと信じてやまないのですが。


カワカミプリンセスのストーリーの中で、縦子はプリファイの「ダークプリンセス」のような、嫌味のある高飛車な態度を取ります。これは縦子自身のキャラクターでもあるとは思いますが、このキャラがどう思われるかを理解した上でカワカミプリンセスに声をかけ、プリファイのような物語に必要な汚れ役を買って出たようにも捉えられます。
この優しさに満ち溢れた尊大な心意気も、一つの〈プリンセス〉です。

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縦ロールのウマ娘は、カワカミプリンセスに挫折と光を同時に示しました。

挫折はもちろん、カワカミプリンセスにウマ娘としても〈プリンセス〉としてもまだまだ未熟であると痛感させること。
そして光は、庶民娘でプリファイに憧れてプリンセスになろうと努力した先に、ウマ娘としても〈プリンセス〉としても輝ける未来が待っているということです。


第7話より先の話はありませんが、これからも縦子にはカワカミプリンセスの走る道を照らし続けて欲しい。私、岬サニーゴはそう願っています。



終わり

縦子の話の部分が相対的にコンパクトに収まりましたが、彼女の気高さが伝わったでしょうか。自分は妄想癖が激しく都合のいい解釈や概念を勝手に結びつけるのが好きなので、今回の内容が皆さんと解釈一致するかはわかりませんが、楽しんでもらえたなら幸いです。

本当は〈プリンセス〉単体の話やカワカミプリンセスの育成ストーリーの話をしようとも思っていたのですが、理解不足な点が多々出そうなのと、単純に時間がかかるため、縦子の話をメインにすることにしました。

〈プリンセス〉の話については参考にした『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』に書いていない自分が感じたことも書いたため、まあ話半分に聞いてもらえればと思います。この本ではより理論的に〈プリンセス〉の変遷を見ているので、詳細な話が知りたい方は是非読んでみてください。


あと、これはナナシスやってる人間にしか伝わらないんですが、今回のようにモブキャラにクソデカ感情を押し付けたケースは聖コルシカ学園アイドル部部長に対してもありました。アイドル戦国時代を知りアイドル氷河期を経てなおアイドルへの愛を絶やすことなくアイドル部を存続させた、デカい女です。さっき見たらナナシスのメインストーリーの多くが無料開放されていたので、興味のある方は是非読んでみてください。

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また縦ロール?


それはそれとして

カワカミプリンセスの育成ストーリーは、縦子が出てこないにしろ極めて素晴らしいものになっているので、まだ育成したことがない人は是非ガチャガチャを回して課金してガチャガチャを回して育成してみてください。ナナシスのメインストーリーが好きな人は絶対刺さると思います。
エリ女の史実知ってる人は途中で展開を予測できるかもしれませんが、予測できても絶叫できるので楽しみにしててください。

といっても、自分はまだストーリーを全部開けれていないんですよね。牝馬n冠で特殊イベントが起こると最近知り、やらなきゃな~と頭を抱えています。
ついこの間から新しいイベントも始まったので、そのpt稼ぎがてらに何度か挑戦してみようと思います。


長くなってしまいましたので、今回はこの辺りで終わらせていただきます。
それでは、皆様、よきトレーナーライフを送ってくださいまし。