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#10 『少女革命ウテナ』一周目

アローラ、岬サニーゴです。
今年も夏休みにやろうと思っていたことが案の定半端に終わり、自分の不甲斐なさを再確認した夏になりました。就活に備えて自分を見つめ直せたということで前向きに捉えておきましょう、改善しないと意味がないんですが。

noteの更新も久々ですね。今回はタイトル通り少女革命ウテナというアニメを見た感想です。

10少女革命ウテナ

といっても全3クールあるアニメの内後半、特に終盤についてはよくわからないことろが多かったため、あまり物語の核心となる話はしません(できません)。一応解説ブログを斜め読みしましたが、もう一度見て自分なりに考えたほうが楽しそうなのでそうします、時間が許すならば。

ちなみにアニメと一切関係ないですが、解説ブログの相互リンク集などを見ると大半のリンクが切れていて面白かったです。それだけ古いアニメだということを実感しました。


見た経緯

少女☆歌劇 レヴュースタァライトという作品をご存知でしょうか?自分はアニメと劇場版2作を見ただけですが、かなり感情を持っていかれました。映像と音楽との異様なまでのマッチや、キャラクター同士の様々な感情とその爆発などもありますが、一番印象的なのは特に説明もなしに発生する戦闘です。

11レヴュスタ

最初は登場人物が舞台少女という設定からくる演技の誇張表現かと思っていたのですが、物語が進むにつれてそれだけでは説明できない超常的な現象が起こります。この異質なシーンがフィクション特有のインパクトを出すために描かれた演出なのか作られた世界観に元から付随している要素なのか、ミスリーディング性を持ちどちらか明示されずに宙ぶらりんに進行する独特な展開に驚き興奮しました。

しかし、この演出は真に独自的なものではないという電波をどこからともなくキャッチしました。曰く「アニメの監督が『少女革命ウテナ』の監督の直弟子」であり、その師匠の作品にはこの特徴があるとのことです。

以上が見た経緯の1つ目で、他に別口からおすすめされただったり「昔のアニメで未だに絶賛されてるアニメは確実に面白いかつ自分の性にあっている」という自身の経験則もあります。とはいえ見ていた当時最も期待していたのは、このレヴュスタとの関係です。


雑感

・OPめちゃくちゃ良い。最終話まで全部飛ばせなかった
・レヴュスタで見覚えのある展開が数点あって、そこから関連性を勝手に見出すのも楽しかった。謎の戦闘とか戦闘毎に挟まる長い演出とか口上とか
・毎話挟まれる全く同じ意味ありげな台詞明らかに壮大な伏線だろって思ったら結末を噛み切れず未回収フラグになりました。理解するためにもう一周したいですね
・影絵少女とかいう意味があったりなかったりする遊び要素めちゃくちゃ素敵
・昔の時代の作品だからか、エッチなシーンが多くていいですね。それも野暮ったいものではなく高尚なエロスが
・樹璃お姉さま
・樹璃お姉さま?その女、誰ですか…………?
・大概の登場キャラが表に出さない異常感情を持っていて、特に恋愛感情の矢印が向く"裏"の理由が多すぎて頭おかしくなる。しかもそれを明示的に描くからもう……
・単純に"ウテナ"って名前もそれなりに意味があるのを終盤になって気づいた。無重力のウテナを思い出したので
・示唆的なオブジェクトが多数描かれていて、多くはまだ理由を理解できていないので誰か教えてほしい。薔薇だったり卵だったり机だったり


本題の少し前

書くのが面倒で雑感に全体の感想を羅列しましたが、今回の主題は有栖川樹璃と高槻枝織が繰り広げる三角関係とその複雑に表裏する矢印です。

10有栖川樹璃0

自分は所謂『樹璃回』と呼ばれる話数(7, 17, 28, 29)が尽く刺さりました。その理由について考えた結果、単純に有栖川樹璃という女が好きということと、その女の"友人"との関わりが極めて多層的で人間らしさを感じたからだと確信しました。そのため、この関係性と自身の考えをまとめようと現在キーボードをカタカタ鳴らしています。

ということで、以下からが本題です。ウテナの大筋についてのネタバレはないと思いますが、上記の『樹璃回』の内容はほぼほぼネタバレしてしまうため、ご注意ください。


本題:樹璃回の三角関係

1. 7話「見果てぬ樹璃」

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有栖川樹璃が恋をしていたときの話
あの頃は何をやるにも3人一緒だった。樹璃と男のフェンシングの試合を枝織が見守る、そんな日常が存在した。

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そんな仲良しの3人に、少しずつ陰りがみえてくる。それは男が自分かそれ以上にフェンシングの腕が立つ樹璃に恋心を抱いたこと、そして枝織がそれに気づいたことから始まった。

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枝織がなぜ男の恋心に気づいたか。それは彼女が男のことをよく見ていたからに他ならない。端的に言えば、彼女は男のことが気になっていたのだ。

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樹璃と男、誰から見てもお似合いのカップルに映るその組み合わせは、枝織から見ても同様だ。真っ当に戦っては勝ち目がない、そう思った枝織は男に「知ってる?樹璃さんには好きな人がいるのよ。でもそれは、あなたじゃないの」と嘘をつくことで、見事に男と恋仲になる。

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「でも、あなたから彼を奪ってしまったこと、私は後悔していません。こんな私を、あなたはきっと憎んでいますよね。」

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「そう、憎んでるさ。」

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「わたしの想いに、君は気づきもしないんだから。」


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樹璃がいつも身に着けているペンダント、そこには卒業写真から切り取った枝織の写真が入れられていた。

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こうして纏めると、まあそうだろうみたいな展開ですが、アニメの描写や演出のせいでかなりミスリーディングに描かれています 。とはいえ、初見からまあそうだろうと思っていた人は、自分含め一定数はいると思いますが。


2. 17話「死の棘」

今話は現在の話。樹璃たちのいる学園に枝織が転入してくるところから始まる。

彼女は樹璃のことを「昔から素敵だった。強くて、かっこよくて。(中略)いつも私を守ってくれた。樹璃さんだけが私の友達。私が、心から信頼できるのは、樹璃さんだけ」とウテナに話す。

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「でも、私にはもうそんな資格はない」彼女はそうとも発言する。

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そう言いつつも、枝織は昔のように仲良くしようと樹璃に近づく。しかし樹璃は彼女を突き返し、「私は、彼のことなど何とも思っていない。今も、あの頃も」と言い切る。
また、樹璃はウテナに対し「君も枝織と同じだな。残酷な無邪気さだよ」とも言い放つ。

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その後、なんやかんやあって枝織は樹璃のペンダントを手に入れ樹璃の本当の想い人を知り、懺悔室へと足を向ける。

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「私は子供の頃から、樹璃さんが憎かった。才能があって綺麗で、みんなから慕われる、そんな樹璃さんが妬ましかった。そうなんです、彼と愛し合ったのも樹璃さんとの大切なものを奪いたかった、ただそれだけ。だから、だから……」

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「そうじゃないんです。樹璃さんはとても優しくしてくれました。でもそれは私のことをバカにして、地味で取り柄のない私に同情して優しくしてくれるんだって、そう思ってました。そんなの惨めです。だから、樹璃さんとの関係を変えたかったんです。だけど彼とのことは、私を前より惨めにしました。自分から望んでしたはずなのに。でも、今は、今は私もあの人と対等、いや私が勝った。樹璃さんの心の中にはいつも私がいた。勝ったのは私だ。」

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「ウフフ、ああどうしましょう。お友達の秘密を知ってこんなに嬉しくてたまらないなんて。あの人こっそり私の写真を見て一人で悩んでたんだ。あの樹璃さんが、かわいそうに。」

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「ダメ!やっぱりダメよ!!あなたがそんな目で私を見てたなんてどうして?どうしてこんなことになってしまったの?」

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28話「闇に囁く」

病気で休養していたフェンシング部の本当の部長、土谷瑠果が学園に帰ってくることから始まる。

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樹璃よりもフェンシングの腕が立つ瑠夏は、すぐに学園中の女生徒の噂の人となった。
部活の準備に瑠夏がロッカーへ行くと、枝織が剣を持っていた。

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「そうか、君だったのか。僕が休んでいる間、誰かが毎日、僕の剣を磨いてくれていた。嬉しかった。君なんだろ?」
「私、ただ先輩のために。それで毎日この剣を……」

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枝織に手を出す瑠夏に対し、樹璃は彼女には手を出すなと主張するが、もちろん受け入れるつもりはないようで聞く耳を持たない。
それどころか、後のシーンで瑠夏は樹璃の想いを知っているかのように枝織との関係を見せつけてくる。

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それを見た樹璃は枝織に対しても瑠夏から手を引いたほうが良いと主張するが、「あなた、最低ですね」と言われ面白い顔をする。

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なんやかんやあって瑠夏&枝織 VS ウテナの戦闘が始まり、枝織のミスによって瑠夏が敗れる。

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「ねえ、次は勝てますよね。だって奇跡の力は私達のものだもの。あんなやつらに……」
「次はない。……何度やっても同じさ。負けたのは花嫁のせいでもある」
「そんな、酷いわ!私が、どれほどあなたのことを思ってきたか。そうよ!毎日あなたの剣を磨いて!あなたのことだけを!」
「あれはね、僕の剣じゃなかったんだ。」
「え……?」

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「……君の演技、面白かったよ。アドリブにしては上出来だ」

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29話「空より淡き瑠璃色の」

枝織は瑠夏への想いが捨てきれず、周りの目もありどんどん精神が荒んでくる。

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樹璃はそんな枝織を不憫に思い、瑠夏にヨリを戻すよう懇願する。

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「すまないが、君のその申し出は受け入れられない。……君の友情には感心させられるよ。だが彼女は、わがままで強引で自分勝手で、おまけに嘘つきときている。申し訳ないが、誰があんな女とだ。」

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もちろん樹璃はブチギレて瑠夏に殴りかかる。今度はミスリーディングでないと強調するためか、樹璃が瑠夏を嫌っていることが明言される。

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「貴様は何か勘違いをしている。私は、私の想いなど届かなくても良いのだ。もし奇跡の力を手に入れたとしても、私が望むのは貴様から彼女を解放すること、それだけだ。これ以上好きにはさせん。」

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なんやかんやあって樹璃はウテナと戦闘するよう、瑠夏に強いられた。
戦闘は樹璃の優勢で進むが、ウテナの剣によりペンダントが破壊されると樹璃は自身で胸の薔薇を千切り、舞台から降りる。

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これは瑠夏との契約に背く行為だが、彼は「樹璃、心配ない。……心配ないよ、樹璃」と隣で呟く。

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その後、瑠夏が再び学園から姿を消し、代わりに樹璃がフェンシング部の部長を務めることとなった。

部長としての務めで居合わせた病院で、影絵少女による噂話を樹璃は耳にする。

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B子「ねえ知ってる?」
A子「うん、あの患者さん、昨日亡くなったのよね~」
B子「いい男だったのにかわいそー」
A子「退院したらまたフェンシングやりたいって言ってたのに…」
B子「あの人、自分の病気のこと知ってたみたい。なのに無理して病院を抜け出して、学校に戻って…」
A子「きっとフェンシング部に好きな子でもいたんだわ」
B子「そういえばあの人、よく言ってたわ。愛する人に奇跡の力をあげたいって。あの人を解放してあげたいって」
A子「何それ?どういうこと?」
B子「さあ~?」

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奇妙な矢印の相似

上の図には極めて興味深い内容が含まれています。樹璃から出ている矢印と瑠夏から出ている矢印に注目すると、どちらも同じ色と向きの矢印を持っています。

これが意味することは、瑠夏と樹璃の立場が事実上同じであることを意味します。つまり、作中で瑠夏が樹璃に言った台詞は瑠夏に、樹璃が瑠夏に言った台詞は樹璃に跳ね返るということです。

貴様は何か勘違いをしている。私は、私の想いなど届かなくても良いのだ。もし奇跡の力を手に入れたとしても、私が望むのは貴様から彼女を解放すること、それだけだ。これ以上好きにはさせん。
樹璃、彼女は愚か者だ。自分に降ってきた奇跡が、誰かの犠牲の上に成り立っていることに気付かないのだからな。だが、そんなやつこそ奇跡を手にする!理不尽だと思わないか、樹璃!

この反射関係を知った上で樹璃回を見ると、それはもう感情がグチャグチャになります。みなさんも是非試してみてください。


終わり

長々と書きましたが、要は樹璃回は本当にキモいと褒め称えていただけです。

樹璃はこの作品の中では周りとの繋がりが比較的少ないキャラクターですが、一方で繋がりのある人物の周りではこれほどにも複雑な関係が築かれています。
制作チームの発言や特典のブックレットなどを見るとそのあたりの裏話やこだわりが見えるそうですが、情報が散漫としていてよく分かっていません。個人ブログがまだ生存していた時代に見ていれば、もう少し簡単に情報が集めれたかもしれませんね。詳細をご存知の人がもしいれば、教えてもらえると助かります。

また、今回は作品に対する自分の理解不足のため触れなかった話が多々あります。樹璃に関する話にしても、『王子様とお姫様』や『奇跡の力』といった少女革命ウテナの根幹をなすテーマが、これらの樹璃回とどのように関係するかなどは一切触れていません。いずれそのあたりの話も深堀りできたらなぁとは思っています。

話が長くなってきました。最後に、28話『空より淡き瑠璃色の』に登場する示唆的過ぎる椅子を貼って終わりにしようと思います。

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