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ミュンヘンのホフブロイハウス

昔々『サイボーグ009』でツタンカーメンという名を覚え、『王家の紋章』にハマって古代エジプトに惹かれ、初めての海外旅行でエジプトへ行ったらすっかり古代オリエント世界に惚れてしまい、結果、旅先はアラブ・中東のどこかという時期がしばらく続いた。私はイスラム圏旅行中は飲まないことにしていた。いや、別に異教徒の旅行者が飲む分には問題ないのだが(イラン除く)、わざわざモスリムの前で飲むのも何だし、砂漠も多く、大変乾燥しているのでとにかく喉が渇く。アルコールより水水水!となるのだ。

9人ほどのツアーでイスラエルへ行った時も、やはりなんとはなしに滞在中はアルコールを控えていた。帰国日、まずミュンヘンへ。日本行きの便が出るのは半日後で、それまで空港の外で自由に過していいと言う。すると、
「ビアホール行きませんか?」
おおっ、ドイツでドイツのビール!行きます行きます!
誰が言い出したかそのナイスな即席ツアーには全員が参加。空港を出るとぞろぞろとなんかの電車に乗り込み、マリエン広場駅で下りた。

そのビアホールは「ホフブロイハウス」と言った。風格ある外観の建物も、長テーブルのある木調の素敵な空間も、袖とエプロンが可愛らしい民族衣装(ディアンドル)を来たウエイトレスも、「本物だ!」と叫びたくなるほど写真や映像で見た通りのドイツのビアホールだった。何を注文すればいいのかわからなかったが、写真を見てドイツっぽい料理――ソーセージ、ザワークラウト、マッシュポテト?の盛り合わせ――を選び、ビールはラガーで。するとウエイトレスが首を振りながら言う。
「黒ビールにした方がいい。ラガーは不味いから」
そうかあ?と思いつつも、まあ、いいかと黒ビールに変更。量が少なめなのはないかと聞くと、1リットルだと言う。よくわからないがまあ、いいか。
「乾杯!」
まずはごくっごくっ…と存分に流し込む。くーーっ、しばらくアルコールを断っていた喉にビールがしみる~~っ美味い!1リットルジョッキは予想以上にずしりと重たかったが(なぜこれを片手で何個も持てるのだ?!)、飲み切れるかな?なんて心配は全く不要だった。むしろ足りない。温かなザワークラウトもとてもありがたい。実はこの日のミュンヘンの気温は2℃だ。
近くのテーブルの数人のドイツ人が、掲げたジョッキを左右に揺らしながら歌い出した。おおっ、TVで見たことある光景だ、本当にやるんだ・・・・。

満腹満足してホフブロイハウスを後にし、バスでどこかの宮殿を見に行ってから空港へ戻ったのだけど、はて?自分はどこに行ったんだっけ?と長年わからなかった(酔っ払い)。カメラはスーツケースに入れて預けてしまったし、まだ携帯電話もない時代、ホフブロイハウスも宮殿も行った時の記録が何一つ残っていない。辛うじて宮殿正面の階段と、美しい女性の絵が沢山飾られていたと言う記憶から、その宮殿がニンフェンブルク城と判明したのはインターネットの時代になってからだ。

それにしても、また行けたらなあー、ホフブロイハウス。

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