命と向き合う

研修医になったころ
救急外来ではひっきりなしに救急車がやってきて
昼も夜もなく皆働いていた

苦しくて息ができないおじいちゃん
交通事故で瀕死の状態のおばあさん
脳出血などで意識のない方々

わたしは、彼ら彼女らの命を助けたいと強く思った
自分にできることは何かと考えた

そんなとき、ご家族がやってきて
もう、これ以上の治療は望みませんと言った
もうすこし頑張れば助かるかもしれないのに

なんで?
助かるかもしれないのに?

こどもさんの親御さんは決してそんなことは
言わない。最後までがんばってください。
ということがほとんど

ご家族、患者さん、医療者が同じ方向をむいて
治療に励むことができる
それも。自分が小児科医を選択した理由のひとつ

でも、それは自分が死というものを恐れ、
逃げていただけなのかもしれない。


時がたち、
自分の考え方も少しずつ変化してきた

命を長らえることだけが幸せではないこと
唯一無二の限りある今回の人生を
どれだけ真剣に向き合って
命をかがやかせて生きることができるかということ
死ぬ瞬間だけが大切なわけではないこと

その人の魂が本当に望んでいることは何なのか
そんなことを皆で考えながらお仕事ができる
そんな現場で働きたいと思うようになった

まだまだ辛い瞬間はあるけれど
自分だけでもひとりだけでも
一人一人の魂に寄り添える存在でありたいと思う

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