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ROOM’s Circle by M Vol.7「尾和恵美加さん/株式会社Bulldozer代表取締役運転手」

 みなさん、こんにちは。ミラツク研究員の草刈麻衣です。
 今日は「ROOM’s Circle by "M"」第7回、世界で唯一のアート思考企業を創業・経営されている株式会社Bulldozerの尾和恵美加さんの回のレポートをお届けします。

 「ROOM’s Circle」はミラツクのメンバーシップ「ROOM」内の企画です。毎回一人のゲストをお招きしてお話を伺っています。そして2021年に始まった「ROOM’s Circle by "M"」ではROOMメンバー自身が企画して場を開いています。

 今回お届けする高山道亘さんの企画は参加型で、ゲストのプレゼンを元に、参加者と一緒にディスカッションしながらテーマや問いを深めていきます。

 それでは早速、イベントの様子をご紹介します!

ROOM’s Circle by "M" Vol.7概要

開催日時:11月24日(水)12:00-12:50
場所:ミラツクメンバーシップ「ROOM」内でオンライン公開収録
プログラム
・チェックイン
・ゲストプレゼンテーション
・参加者を交えた対話
・感想共有、ゲストへのギフト

ゲスト情報:尾和 恵美加
さん
株式会社Bulldozer 代表取締役運転手
2014年に日本IBMに新卒入社し、デザイン思考を使った働き方改革のコンサルティングを担当。その後、アートの私塾coconogaccoを経て、デンマークのKaospilotへ留学。2018年に中退し、帰国して株式会社Bulldozerを創業。
右脳爆発系と呼ばれて悩んだ新卒時代に人生のテーマとなった、AI時代に人間にしかできない0から1を生み出す行為。そのための才能の最大化をサポートし、芸術家のようにその企業にしかできない事業を生み出せる、独自の思考フレームワーク“オリジンベースド・アートシンキング”を組み立てて、創業者精神を育成する人材育成やその先の新規事業開発などの文脈で、大企業を中心にワークショップ形式で提供。新社屋としてアートシンキングの聖地“Gravity”も設立し、企業の次世代に繋がるイノベーション創出を牽引している。

https://bulldozer.co.jp/ 

企画・進行:
高山道亘さん(2021年春からROOMメンバー)
Project Creator
外資系企業での事業開発、スタートアップ立ち上げを経て、現在は大企業の新規事業にプロジェクトマネージャーとして関わりながら、大学でプロジェクト設計の研究を行なっている。ロジックよりGoodなVibesを大事にしている。

動画アーカイブ

イベントレポート

テーマ:「アートシンキングの可能性」ー「1000年後にも通ずる価値を生み出す」

 個人や企業がどのようにアートシンキングを活用していくか参加者とゲストで考えを深めました。イベントの前半では尾和さんの活動のご紹介。後半では、実際に現場で悩みを抱えている参加者と、熱のこもった議論が行われました。

まずは、尾和さんのプレゼンテーションからご紹介します。

尾和さん:現代は、何を目指したらいいかわからない迷いの時代。データの過信やトレンド重視の偏りがありながらも、それがすぐに移り変わるために正解も捉えず楽、ゆえに皆が同じ方向に向かい差別化が行われにく時代です。そんな時代の中で、その人やその会社しか見出せないものから生み出される代替できない価値が増えていくと、それぞれの得意領域において、より新しい価値が生み出されていくので、時代も豊かになるのではないか。また、それぞれの才能が発揮できた時にお互いにリスペクトし合う文化ができるので、平和も訪れるんじゃないかなという将来像を持っています。

 当初、海外での起業を検討していたそうですが、日本の希少性に気づき帰国して創業に至りました。人口減少社会かつインスピレーション大国である日本から、次の時代のあり方を発信していきたいとのこと。

そんな尾和さんは元々はIBMでコンサルタントをやっていたそうです。

尾和さん:IBMを始めとしたコンサルティング会社では、プロジェクトにどれだけ貢献したかが重要で、成果を出せない場合には、最悪、会社をクビになることもあります。なのでいつ首が飛ぶんだろうとのヒヤヒヤ感でなかなかバリューが出せなくて。
 また、シンギュラリティ(※A Iが人間の知能を超える技術的特異点)が2045年に来ると言われてたタイミングだったので、人間自体の価値って何だろうと感じていました。0から1を生み出すところが価値になるとして、どう生み出せばいいんだろう、と
尾和さん:この問いへの解を見出すために通ったcoconogaccoでは、芸術家たちと一緒に学ぶ機会があったので、彼らを観察していました。すると、左脳と右脳の掛け合わせで新しいものを作っていることがわかりました。論理的な思考は一周回ってクリエイティブと隣り合わせの世界観だとその時にも感じましたね。
 アートシンキングはよく誤解されるのですが、絵を見たりデッサンをやってみるということではなくて、態度として、行為としてのアートを意味しますそれはどういうことかというと、自分の価値観・哲学で時代文脈を捉えながら、事業を通じて、日々の仕事を通じて、理想の未来へ近づく方法を提案していくということです。
こうしたなかで才能が磨かれ、豊かな時代になっていくと蹴落としたり僻んだり争ったりするのではなく、刺激しあい、高め合うので、健全な発展の起こる時代になります。そういう新時代を作るプレイヤーとして、ワークショップやコンサルティングを通じてアートシンキングを発信しています。

参加者とのディスカッション

 参加者との議論は大変に熱がこもりました。話はアートシンキングに始まり、哲学や価値観のあり方についてまで話が及びました。このレポートでは、参加者の質問の中からいくつかピックアップしてお届けします。

●新しい価値観を受け入れるには何が必要?

参加者からの問い(1):立ち上げ直後の組織には受け入れられやすいと思う反面、既存組織ではワークショップ後に自分たちの文脈に戻ってしまい「その発想は置いておこう」となる可能性もあるような気がします。そうならないように気をつけているのはどんなところですか?

尾和さん:業態や状況にPDCAサイクルを脇に置いて新しいことを考えることが難しいです。既存業務は現状のPDCAサイクルで進める一方、新規事業はビジョン型で進めていくのがいいかと思います。世に行うパーパス経営であり、この使い分けというのは両利き経営ということになるかと思います。その上で、パーパス経営で進めていく場合は、自分たちは何を目指すのかということを自分規模、チーム規模、会社規模で見直して、自分ゴト化しながら、業務に落としていきます。
ビジョン経営、パーパス経営という考え方があります。自分たちは何を目指すのかということを見直して、業務にも落としていきましょうという考え方です。(中略)
 でも、製造業で規模の大きい会社だと工場などの現状のPDCAサイクルを脇に置いて新しいことを考えることが難しい。そういう時には既存業務は現状サイクルで新規事業はビジョン型で、やりながらまとめていく。
 その他の会社についても、トップが考えていることや社風、社是などをベースにしつつ少しずつ変革していきます。守るところと変えるところの選別を通してどのようにアクションするか、会社のカルチャーによると思います。その判断すらできないというときに、アートシンキングで行う「哲学」の見直しが判断基準になります。

●会社の「哲学」について

参加者からの問い(2):個人が持ってる哲学と組織が持っている哲学は、どうすり合わせるのが良いでしょうか。経営者と創業者の哲学だけではユニバーサルにならないのではないかと思いますが。

尾和さん:どんな人間関係も価値観の重なっているところがあるから成り立ちますが、会社と従業員も同じです。お互いの哲学が重ならないと、離職率が高まったり、ぶら下がっているだけの社員が増えます。(中略)こうした場合は、会社を法人という人として捉え、価値観の擦り合わせを行います。
 個人の哲学(オリジン)と会社の重なるところを抽出して、会社を自分ゴト化していくワークショップでも、正解や打ち出の小槌みたいなものはない。時間かけて対話していきながら、どういうふうにしていくか考えるっていうところがミソだと思うんですよね。夫婦関係と一緒ですね。工夫のひとつの方法として、アートシンキングがある、ということなんです。

●価値観のアップデート

参加者からの問い(3):100年前のバイブルとして残っているような価値観でも、表面的だと感じることがあります。松下幸之助が言ったことは素晴らしく聞こえますが、今の時代背景に必ずしも当てはまらない。組織内の価値観アップデートについて、ワークショップの経験を通じてお感じになっていることを教えてください。どの現場にも当てはまるような原則や法則性などがあれば、自分のフィールドでも生かしたいです。

尾和さん:大きな会社であっても、哲学を「1回決めて終わり」ではなくて、時代によって変化させることが重要です。
(中略)
 例えばパナソニックの水道哲学は戦後の時代の話で、安く多く供給していくことが民を豊かにするという思想から来ています。が、何を供給するのかは時代によって変わる。そして、誰かが答えを持ってることではなく、自ら考えなくてはいけない。何を供給するか、自分の軸を見つめ直すことがブームですがそれだけでは不十分で、もっと会社の歴史や国の歴史、など大局を見つめて時代文脈を捉えることが必要です。
 また、組織としての哲学をアップデートさせる時、経営層から出てくるものにはインパクトがあります。時代の象徴としてそれを読み解くことはまず重要です。次にそれをみんなが自分ごと化してもらわないといけない。一人で考えてもらう時間も、部署ごとで話すことも必要。できる限りいろんなサイズ、レイヤーの人たちと組みながらもやっていくのがいいと思います。

●1000年後を予測する

参加者からの問い(4)
:1000年後までのあり方をつくっていく取り組み、事例があれば教えてください

尾和さん:どういうものが 1000年前から今にかけて残ってきたのかを振り返ることは重要で、アートシンキングの中では「時間の振り子」と概念化しています。現状のデータを基点とした過去から未来の予測だと狭い範囲のことしかわからないので、1000年の時間軸を知ることで、同じ分だけ先にいくことができると思っています。いろんなところに行って分析リサーチしながらそのエッセンスを提供させていただくようなことを普段行ってます。

 この後、参加者から東日本大震災の1000年先への警鐘として創作盆踊りという取り組みなどがシェアされて「これってアートシンキング?」などと盛り上がりました。
 お話を伺ってみて、最初はテーマを難しく感じましたが、法人を一人の人間と捉え人間関係構築プロセスのように例えながらお話してくださったので、私にでも理解することができました。「正解はなく、様々な形態で対話を重ねるということが未来を作っていく」と今日のお話を解釈しつつ、大変共感しました。

尾和さん、貴重なお話をありがとうございました!

(文章:ミラツク研究員 草刈麻衣)

草刈麻衣
ミラツク非常勤研究員。身近な製品の需要増が野生動物の激減や人権問題に深く影響を与えていることに衝撃を受け、NGOの世界へ。国際青年環境NGO A SEED JAPAN、アジア太平洋資料センター(PARC)を経て現在、出版社コモンズとのダブルワーク。

前回の高山道亘さんの企画はこちら


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