未来からの提案 ―個人のニーズに合った街の楽しみ方―
「心読めるくんプロジェクト」を提案する。このプロジェクトは「心読めるくん」により様々な人の思考を読み取ることで、行動心理学の分野を発展させ、快適で活気ある街づくりを進めるプロジェクトである。現在の日本には日本人や観光客をはじめ多くの人が生活しているが、混雑のような、疲れる要因が多くある。しかし、それを解決しようにも人間の行動は一概に定義することができないため、都市部の円滑な人の移動を研究することは困難を極める。
大勢の人が行き交う京都・地下鉄四条駅構内の様子(筆者撮影)
そこで、「心読めるくん」を導入することで様々な人の行動パターンを分析し、快適な移動や観光を楽しめる街づくりに生かせないだろうか。ここからは具体的な提案内容や期待を述べる。
心読めるくんのイメージ、その活用例と行動心理学への応用、そして最終的な快適で活発な街づくりへの応用の三つの観点から考える。まず、「心読めるくん」のイメージを簡単に表すと下の図のようになる。
人が考えていることをそのまま読み取り、表示する(図では人がリンゴをイメージしており、そのイメージを「心読めるくん」が読み取って表示している)。「心読めるくん」は今考えていることだけでなく、これから起こそうとしている行動(どこに行こうか、どの道を通ろうかなど)もすべて読み取ることができる。老若男女、国籍を問わず、ありとあらゆる人の行動予測データを集め、それを統計的に表すことを初期段階での目標とする。
データを集めた後の具体的な活用例としては人がいつ、どのような思考回路で行動するかを分析するのに役立てる。冒頭で、人の行動を研究することは困難を極める、と述べたが、「心読めるくん」で集めた膨大なデータをもとに行動心理学の発展を目指す。その究極系としては、単に「〇〇する傾向がある」というだけでなく、ありとあらゆる行動パターンをすべて分析できるようなものを目指す。そして主に混雑する都市部において、今後どのような設計をすることによってより快適に街の移動や観光を楽しめるかを研究する。
最終的な社会への応用としては、都市部で個人に合わせた最適なルートを提示することを目標とする。例えば、せかされることなくゆっくり歩きたい、という人には多少遠回りでも人が少なく、歩きやすいルートを提唱する。また、多少混雑していてもとにかく早く目的地につきたい、という人は最短ルートを提唱する。そのような形で、望まない混雑や疲れに巻き込まれない個人のニーズに沿った提案をすることができる。
このシステムが実現すれば、今よりも過密地域における混雑は減るのではないだろうか。ニーズによって道を分けた設計の例として、ニューヨークの建設スタジオDXA studio による「Midtown Viaduct」がある。
出典:AXIS Web Magazine.”建築スタジオ DXA studioによる「Midtown Viaduct」ニューヨークの交通渋滞を緩和する歩道橋の設計案”.<https://www.axismag.jp/posts/2019/03/120583.html>.(2020年2月17日閲覧)
これは通勤者向けの最短距離を通るルートと散策を楽しみたい人向けの長距離ルートをもった歩道橋である。「心読めるくん」から行動心理学を発展させたうえで提唱する都市づくりはこの例よりももっと快適なものを目指している。
さて、ここまで理想とする社会へのアプローチを考えてみた。これを実現するためには今後何をすべきだろうか。例を二つ上げたい。まずは行動心理学という学問分野の発展である。人の行動は一元化することができず、多くの例外が発生する。そのため現在の技術では個人が望む最適解を提唱することは困難である。「心読めるくん」の開発の前段階として、行動心理学分野の研究をさらに発展させておくことが望まれる。
もう一つの提案は多くの価値観を受け入れる心構えを持つことである。心読めるくん関連の研究による目標が達成されれば、ますます人の移動が激しくなることが予想される。そんなときに自分の価値観だけにとらわれず、多文化共生とともに今後の社会の発展につなげていく必要があるだろう。
文責:SA
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