実生ゆず
皆さんは「実生ゆず」をご存じだろうか?市場で売買され、皆さんが口にするゆずがどのように伝わり、栽培されているのか考えたことはあるだろうか?私は今課題を通し、実生ゆずの重要性、希少性などを深く学んだ。学んだことをより深く掘り下げるにあたり、徹底した調査、実際に行った取材経験より、実生ゆずについてまとめることとする。
まず、ゆずには「実生」のゆずと「接ぎ木」のゆずがある。「実生ゆず」とは種子から発芽して成長した樹木で栽培されたゆずであり、「接ぎ木ゆず」とは成長過程で接ぎ木をすることで成長させた樹木で栽培されたゆずである。実生ゆずは発芽してから実をつけるまでに18年もの歳月がかかると言われており、収穫するまでにあまりにも時間がかかるため、市場に出回っているものはほとんどが3~4年で実をつける接ぎ木ゆずである。加えて、接ぎ木ゆずの生産量が年々増加するのに対して、実生のゆずは全国に5,000本しかなく、大変貴重なゆずなのである。その1つ1つが生産者の手作業によって栽培されており、手間暇がかかるのも貴重なゆずである原因となっている。「ゆずの栽培面積、収穫量、出荷量」
黄緑 ゆずの収穫量、緑 ゆずの出荷量、深緑 ゆずの栽培面積
ゆずが初めて登場するのは続日本書紀の記述より奈良時代前後と言われている。今から1300年前のことで、おそらく当時の中国から遣隋使または遣唐使によって大陸との交流の中で、もたらされたのではないかと推測されている。実生ゆずの場合は種子から始まって、親と同じ長い成長周期を繰り返した後、果実を実らす。実生ゆずの種子が日本に持ち込まれても問題なく成長を遂げることが出来ることから種子により伝わったものと考えられる。 柑橘類の栽培に関しては江戸時代中期頃に始まり、多くは「みかん」であった。今回取材した実生ゆずは、明治時代に箕面市北部にある止々呂美地区の特産品となっていたが、昭和30年代に一層盛んになった。実生ゆずは1000年もの時を超えて、生産者が1つ1つ手作業によって継承してきた宝なのである。
インタビューを通して、実生ゆずは手間暇がかかる分、甘味、酸味などの味や風味などが接ぎ木ゆずより多いことが分かった。実生ゆずは種子から発芽しているため、接ぎ木のものよりゆず本来の味と風味、香りを有していると言われるが、香味研究分野で様々な実績を持つ、福岡女子大学栄養健康科学科の石川洋哉准教授の成分分析では実生ゆずは市販のゆずと比べて、甘味は1.75倍、酸味は1.6倍多いということが分かった。そのため、香りなどが重視される化粧用品、アロマオイル、調味料などに利用されることが多い。しかし、ゆずを使った商品に関しては果汁を使用するものがほとんどで、果汁をしぼった後のゆず皮は廃棄される。しかも、ゆずの皮には揮発性の高い油が含まれているので、産業廃棄物として処理されてしまうのだ。
実生ゆずは山奥で生産されるが、生産の現状はたくさんのゆず木に対して、生産者が1本1本手作業で行うため、非常に重労働だという。尚且つ、生産者の高齢化が進むため、作業の幅が減少し、困ることも多く、早期の後継者育成が求められるという。インタビュー中、「生産者は利益なんか求めていない。実生ゆずを後世に残すことだけを考えている。」という内容を聞き、自分自身、実生ゆずの栽培にどれほどの難点があるのかを考えさせられた。ただ、甘味、酸味といった味は本来のゆずより濃く、風味、香りも強い。1000年の時を超えて、現代まで継承された実生ゆずは日本人の勤勉さが生んだ、日本を代表する果実なのである。そんな実生ゆずが直面する現状は明確である。日本人がゆずを知り、日本を表現する1つの手段として活用することは、実生ゆずが直面する現状を打破する上で最も重要である。1人1人に何が出来るのか、何をするべきなのかを再度考え直していきたい。
<ホームページ>
国立公文書館HP
http://www.archives.go.jp/exhibition/digital/rekishitomonogatari/contents/03.html
実生ゆずのかな川
https://www.yuzucha-kanagawa.com/実生ゆずについて/
ゆらぎスタイル
http://yuragi.co.jp/distillation/
ユズの香り
https://books.google.co.jp/books?id=_xQuDwAAQBAJ&pg=PA13&lpg=PA13&dq=ああ
大阪府箕面市HP
https://www.city.minoh.lg.jp/kankou/yuzu.html
<本>
香り選書「ゆずの香り~柚子は日本が世界に誇れる柑橘~」沢村正義
(山本 翔)
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