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2割特例・少額特例・80%経過措置|インボイの特例や経過措置の整理!

この記事では、インボイスに関する特例や経過措置が、どの事業者に対していつまで適用されるかを整理してお伝えしたいと思います。


2割特例を利用できる事業者とは?

先ずは2割特例のお話から始めます。2割特例とは、売上に掛かる消費税に20%を掛けた分を納税する特例のことです。

例えば1年間の売上が990万円の事業者がいたとします。この売上に掛かる消費税は90万円です。2割特例を適用すると、この売上に掛かる消費税90万円に2割を掛けた分である18万円が納税額となります。

2割特例は納税負担も消費税計算の事務負担もだいぶ軽減される便利な制度ですが、対象者が非常に絞られます。2割特例を利用できる事業者は、本来は免税事業者だけどインボイス登録事業者になった方です。

インボイスが始まらなくても、現行の制度で消費税課税事業者になる方は対象になりません。

例えば令和5年は免税だった事業者が登録手続きをして、10月1日のインボイス開始時にインボイス登録事業者になるとします。

令和5年が免税事業者になるかどうかは基準期間と特定期間で判定を行います。先ずは基準期間の課税売上高が1000万円を超えるかどうかで判定します。基準期間とは、判定期間の2年度前です。令和5年度の基準期間は令和3年度となります。

次の判定に移ります。基準期間の判定で1000万円を超えていなくても、特定期間の課税売上高が1000万円を超えて更に給与の支払総額が1000万円を超えている場合は課税事業者となります。

特定期間については、判定する期間の前年度の前半6ヶ月のことを言います。令和5年度の特定期間は令和4年度の前半6ヶ月となります。

もう一つの注意点が、この2割特例の対象になるかどうかの判定は毎年行わなければならない点です。令和5年度は2割特例を使えましたとしても、令和6年度の基準期間・特定期間で課税事業者に該当する場合は2割特例が使えません。

少額特例を利用できる事業者とは?

次に、少額特例の解説に入ります。少額特例を理解するにはインボイスの原則を知る必要が有ります。

1年間の消費税込みの売上が1100万円、税込みの経費の支払いが550万円の事業者が居たとします。この事業者の消費税納税額は、この様に、売上に掛かる消費税100万円から経費に掛かる消費税50万円を引き、残った額を納税します。この差し引き計算のことを仕入税額控除と言います。

インボイス制度が始まると影響するのが、この経費に掛かる消費税部分です。インボイスの登録番号など必要事項が記載された領収証などを保管しないと差し引くことができない…つまり、仕入税額控除ができなくなります。

少額特例はこの経費に掛かる消費税について、1回の取引で税込み1万円未満であれば、インボイス不要で仕入税額控除ができるとする特例です。

つまり、経費に掛かる消費税50万円の部分も、経費の内訳が1回の取引が全て1万円未満であれば、全額控除可能です。

では、少額特例の対象者のお話をします。この特例の主な対象は中小企業になります。2割特例は、本来なら消費税が免税になるような売上規模が小さい事業者を対象にしていたのに対し、少額特例は対象とする事業者の規模がやや大きくなります。

対象とする事業規模は基準期間の課税売上高が1億円以下「又は」特定期間の課税売上高が5千万円以下の事業者が対象になります。基準期間と特定期間の考え方は先ほどの2割特例でもお話しました。2割特例と異なるのは、基準期間と特定期間の売上高についてどちらかが当てはまれば対象になる点です。

もう一つの注意点が、少額特例も対象になるかどうかの判定は毎年行わなければならない点です。令和5年度が対象になったからと言って、令和6年度も引き続き無条件で対象になる訳では無いことにご注意ください。

仕入税額控除80%経過措置を利用できる事業者とは?

では、3つ目「仕入税額控除80%経過措置」の解説をします。長いので経過措置とか80%控除とか略して使われることも有ります。

どの様な制度になるかと言うと…先ほどと同じ様に、1年間の消費税込みの売上が1100万円、税込みの経費の支払いが550万円の事業者が居たとします。

インボイス制度が始まると、この経費に掛かる消費税部分は、インボイスの登録番号など必要事項が記載された領収証や請求書を保管しないと仕入税額控除ができなくなります。

しかし、この「仕入税額控除80%経過措置」を利用すれば、インボイスの保管が無くても、経費に掛かる消費税の内80%は仕入税額控除ができるようになります。つまり、先ほどの計算で出た経費に掛かる消費税の50万円の内80%…つまり40万円は仕入税額控除可能となります。

次に対象となる事業者のお話をします。この「仕入税額控除80%経過措置」は対象者に制限が有りません。どの規模の事業者でも利用できます。

よって、少額特例を利用している事業者であれば、インボイスの無い1万円以上の取引に対して80%経過措置を使うことで、消費税納税額の大幅な増加を抑えることができます。

特例・経過措置の期限

ここからは、各特例・経過措置がいつまで利用できるか期限のお話をします。

2割特例はインボイスが始まる令和5年10月1日から令和8年9月30日の「属する」課税期間で利用できます。「令和8年9月30日まで」ではなく「属する」としている点にご注意ください。

個人事業者を例に解説します。2割特例で消費税の計算をし始めるのが令和5年10月1日からです。よって、次の年の確定申告の際には所得税の他、消費税の申告書も提出して納めます。ただし、この年に限って消費税は令和5年10月1日から12月31日までの3ヶ月分のみが対象となります。

そして、令和8年の確定申告ですが、令和8年1月1日から12月31日までが2割特例の対象になります。令和8年9月30日の「属する」課税期間とは、9月30日を含んだ事業年度と言い換えられます。

少額特例は令和5年10月1日~令和11年9月30日までの6年間利用できます。2割特例と異なるのは9月30日の属する…ではなく、令和11年9月30日までの取引で特例の効力が切れることです。つまり、令和11年10月1日からの取引については税込み1万円未満でも、仕入税額控除をしたければインボイスの保存を求められます。

仕入税額控除80%経過措置は2段階で期限が設けられています。まず、最初の期限が令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間です。こちらも令和8年9月30日「まで」となりますのでご注意ください。

その後、令和8年10月1日~令和11年9月30日の3年間は仕入税額の控除率が80%から50%に引き下げられます。

少額特例同様に令和11年10月1日からの取引については、仕入税額控除をしたければインボイスの保存を求められます。

インボイの特例や経過措置の整理については以上となります。今後、インボイスに関する法改正があるかもしれません。特に消費税課税事業者の方が消費税申告をする際は最新の情報を確認するようにご注意ください。


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