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源泉徴収の間違いやすいポイント|仙台市役所の事例から学ぶ

今回は給与や年金から徴収される税金「源泉徴収」の実務とみらい創研の所在地がある仙台市役所において発生した源泉徴収のミスの事例から間違いやすいポイントも合わせてお話致します。

源泉徴収ってなに?

源泉徴収とは「お金を払った人」が税金を徴収する制度です。対象は一部の所得税です。本来、所得税はお金を受け取った人が自分で確定申告を行い税金を納めることが原則です。しかし、給与、年金、報酬、配当や利子など一部の個人に対する報酬や料金については、支払う方が予め税金を引いて納めてください…としています。

源泉徴収をしなければならない方を源泉徴収義務者と言います。
何故こんな制度になったかと言うと…色々理由はあると思いますが、国の税金徴収の事務負担軽減が目的なんだと思います。

下記リンク:国税庁 令和5年版源泉徴収のあらまちをご覧いただくと分かりますが、給与以外にも源泉徴収しなければならない場合が有ります。
退職金、年金、その他に投資をしている方で特定口座を利用している場合、株や投資信託の売買で得た利益や配当金、預金をしている方であれば利子からも源泉徴収されます。

そして、企業や団体の経理、税務担当者を悩ますのが「報酬」からも源泉徴収をしなければならない点です。

税理士や弁護士といった士業と呼ばれる職種の方たちに支払った報酬、ホステスさんへの報酬、デザインや脚本・挿絵・講演料や原稿料なども報酬や料金を払った人が源泉徴収をしなければなりません。

どの様な報酬に対して源泉徴収義務が有るのかは、上記リンクの国税庁のホームページで確認してください。

この報酬に対する源泉徴収義務については一部除外される場合が有ります。例えば、給与所得者…つまり一般の会社員の方が個人的に弁護士や税理士に仕事を依頼して支払う報酬については源泉徴収をする必要はありません。

源泉徴収した税金の納付期限は?

次に源泉徴収した後、いつまでに税金を納める期限と納付方法について解説します。原則は源泉徴収をした月の翌月10日までです。給与を例にしてお話します。
給与の締め日が月末、支払日が翌月25日払いである場合、25日に支払った次の月の10日までに源泉徴収した税金を納めます。4月末締め、5月25日払いの給与であれば6月10日までに5月25日支払い分の税金を納めることになります。

原則は毎月行いますが、給与の支給対象になる社員やアルバイトの人数が常時10人未満の場合は、納付時期を半年に1回にすることができます。1月から6月までに支払った給与の分を7月10日、7月から12月に支払った給与の分を1月20日までに納めます。1月だけ20日になるのは、年末年始期間を挟むための配慮です。

この特例の適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出することが必要です。

仙台市役所の事例に見る間違いやすいポイント

みらい創研グループ本社の在る仙台市において、仙台市の市役所の職員さんが、令和4年の夏のボーナスを支給した際に発生する源泉所得税の納付が遅れたため、延滞税など5000万円余りが課される見込みになったというニュースが有りました。

仙台市によりますと、6月末に職員に支給したボーナスにかかる源泉所得税の納付期限が本来7月11日だったにもかかわらず、8月だと勘違いをして納付作業を進めていたそうです。この後、市役所内で同様の間違いがないか調査したところ、職員の給与だけでなく個人に依頼した原稿料や研修の講師料などから源泉徴収をしていないことも判明しました。

源泉徴収の実務でミスが多いのは、この、税金を納める時期の遅れと源泉徴収漏れです。

税理士の顧問を受けて、毎月会計チェックが入っている企業で、小規模で有ればこういったミスも見付けられる確率も上がりますが、給与額や報酬額が多額になる大きな組織の場合、こういった小さなミスを見付けづらく、担当者の勘違いが大きな損失を生むこともあります。

根本的な解決は計算のやり方ではなく税法の理解が必要

源泉徴収に限らず税金や社会保険に関する業務に携わる場合、単に正確な計算するだけでは業務の遂行にはなりません。何故その作業が必要なのか?といったルールの理解が必要です。この源泉徴収に関する業務の場合は「税金」に関するルール…つまり税法の理解を目的にした研修と、税法に則った作業が必要でした。

本来は税務・労務・法務といった業務の習熟には時間が掛かります。もし、今回の様なミスを減らしたければこれら業務の専門家を育成するのが効果的です。しかし、公務員の場合、定期的な人事異動があります。せっかく、関連する法規と実務の両方を理解し始めても異動で関連の少ない部署に行ってしまっては意味がありません。

仙台市役所による記者会見では「徹底」というワードが出てきましたが、専門領域における人事制度の見直しをしなければ根本的な解決は難しいと思います。

同じミスを繰り返さないためにも、先ずは、個人の方に何かしら仕事を依頼して報酬を支払う場合は源泉徴収が必要かどうかの確認を税理士や税務署への指導を受けることをお勧めします。

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