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地銀の国内債含み損1.4兆円 3カ月で倍増、金利上昇響く~金利上昇は地銀を追い込む~【日経新聞をより深く】

1.地銀の国内債含み損1.4兆円 3カ月で倍増、金利上昇響く

地方銀行が保有する国債など国内債の含み損が急拡大している。2022年12月末時点の損益状況を集計したところ合計1兆4600億円と、22年9月末から3カ月で倍増したことがわかった。日銀が12月に長期金利の変動許容幅を拡大し、金利が上昇(債券価格が下落)したため。低金利のなか有価証券運用への依存度を高めてきた反動で金利上昇局面で含み損が大きくなりやすい。融資や配当、不良債権処理など経営余力を低下させるリスクがある。

全国99の地銀を対象に国債や地方債、社債など国内債の含み損を調べた。債券を保有しない長崎銀行を除く98行のうち95行が含み損となった。22年3月末に2000億円、9月末に6700億円と金利の上昇に沿って含み損が膨らんでいる。

個別行では福岡銀行の含み損が745億円(9月末は422億円)と大きかった。北海道銀行は9月末時点は3億円の含み益だったが、66億円の含み損に転じた。

低金利環境が長引き、本業の貸し出しで稼げない地銀は市場運用で収益を補ってきた。日銀によると、11月末の地銀の国債保有残高は17兆円、地方債19兆円と大きい。

(出典:日経新聞2023年2月14日

2.日銀政策修正は地銀にどんな影響を与えるか

2022年12月19日から20日の金融政策決定会合において、日銀はイールドカーブコントロール(YCC)の運営方針を見直し、長期金利操作の変動幅を±0.25%から±0.5%に拡大しました。

それによって、国債利回りは中~長期を中心に上昇しました。それによって、預貸金利の利ざやが改善するとの見方から、銀行セクターの収益回復期待が高まったことから、上昇しました。

(出典:日経新聞2023年3月3日

確かに金利の上昇は一般論として銀行収益にプラスの影響を与えると考えられますが、そう簡単な話ではありません。

今回の政策修正に関しては、短期金利に連動する変動金利が多い貸出金利への影響は限定的と考えられます。また、金融機関における貸出金利の引き上げは一般事業会社における値上げに相当するため、今後、金融政策が正常化に向かい短期金利を含めて上昇した場合も、市場金利が上昇した分、貸出金利を単純に引き上げられるとは限りません。加えて、保有する国債等の評価損や金利上昇に伴う信用コストの増加懸念もあります。

特に地銀は、これまで貸出金利を引き下げて貸出残高を増やす戦略を採用しており、今後、金利上昇局面となった場合、これまでの戦略を大幅に見直さなければならなくなります。

3.保有国債の含み損と地銀経営

そして、金利の上昇によって、金利上昇によって新規運用の利回り改善が期待できるものの、すでに保有している円債では評価損が拡大することになります。特に地銀は、低金利環境下で長期・超長期円債のウェイトを高める戦略を採ってきており、日銀によれば、地銀の国内債のデュレーション(平均残存期間)は、17年度の4年から、21年度には7年に長期化しています。

この間、都銀の国内債デュレーションは、17年度の4年から21年度には3年にむしろ短期化しています。債券であるため、満期保有によって損失を回避することはできるものの、その場合、長期にわたって低利回りの債券を保有し続けざるを得なくなります。昨年来、海外金利の上昇によって、外債評価損も拡大しており、地銀の余資運用戦略は岐路に立たされています。

今後、金利が上昇すれば、保有国債の含み損が拡大します。22年3月末に2000億円、9月末に6700億円、12月末に1兆4600億円となっています。昨年9月と12月を比較すると、含み損は3倍に拡大しています。

含み損の拡大は経営の重荷となる。横浜銀行など国際統一基準行(10行)では有価証券評価差額金の減少を通じて、自己資本比率が低下し、貸し出し余力が落ちます。国内基準行は算定ルールが緩和されており、自己資本比率の低下には直結しません。ただ、含み損を抱えた債券に資金を固定し続けることを嫌って損失処理に踏み込むケースも多くあります。会計上の配当可能原資も減ってしまいます。

外債や株式を含めた有価証券全体の含み益は15年3月末の6兆2000億円から8600億円まで減少しました。地銀は含み益のある有価証券を売却して不良債権処理や構造改革費用に充ててきました。23年度以降は、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済も本格化します。益出しでカバーしてきた当期純利益も確保できず、赤字に転落する地銀が出てくる可能性もあるでしょう。

金利の上昇は、地銀に収益改善以上に、運用の含み損で厳しさを突きつけると思われます。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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