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【日経新聞をより深く】米中間選挙に世代交代の波 Z世代は民主、高齢者は共和~選挙の後にどうなる?~

1.米中間選挙に世代交代の波 Z世代は民主、高齢者は共和

8日投開票の米中間選挙は、生まれた年代によって支持政党が異なる米国社会の「分断」が浮き彫りになった。気候変動対策や銃規制を巡り若者が民主を支持する一方、高齢者は共和に傾く。有権者の世代交代は米国の政治勢力図に変化をもたらす可能性を秘める。

AP通信の出口調査によると、民主に投票した人は18~29歳が53%で共和より13ポイント多かった。30~44歳も52%と共和を9ポイント上回った。逆に45~64歳は共和が54%と民主に11ポイント差をつけた。65歳以上も共和が民主を大きく上回る。

民主を支持したのは「ミレニアル世代」(26~41歳)や有権者の年齢に達した「Z世代」だ。気候変動対策や銃規制の強化などリベラルな政策を好む。南部フロリダ州でZ世代初めての下院議員として当選確実となった25歳のマックスウェル・フロスト氏はツイッターで「Z世代の歴史をつくった」と喜んだ。

(出典:日経新聞2022年11月10日
(出典:日経新聞2022年11月10日

米中間選挙は接戦となっています。日経の報道の様に、世代によって、支持が分かれているのも事実であり、民主党と共和党の支持層の分断が浮き彫りになっています。

2.投票集計機に不具合

2022年の中間選挙において事前から激戦が予想されていたアリゾナ州で、投票開始からわずか数時間後に数十台の電子投票機が故障しました。早速、トランプ前大統領や共和党支持者らは問題発生後に、民主党の不選挙不正を訴えています。

アリゾナ州の中でも人口の多い南部マリコパ郡で電子投票集計機の約20%が故障するという事件が発生しました。当局者によると、郡全体の4分の1の投票所で60台程度が故障していましたが、投票開始から8時間後の午後2時までに17台を修理した模様です。

州知事候補のカリ・レイク氏(共和党)はこの問題を取り上げ、自身のTwitterアカウントで「有権者への警告」を発しました。また、左派寄りの地域では故障は起きていないと主張しています。

カリ・レイク氏を含むアリゾナ州の主要な共和候補は2020年の大統領選で不正があったとのトランプ氏の主張を支持しています。大統領選の時は、バイデン氏が僅差で勝利しています。

アリゾナ州での投票が終了する約3時間前に、レーク氏、同州の連邦上院議員候補ブレイク・マスターズ氏、共和党全国委員会が緊急訴訟を提起。集計機の不具合を理由にマリコパ郡での投票時間を3時間延長して午後10時までとし、それらの集計機による早期投票数の発表を午後11時まで遅らせるよう判事に求めています。

投票機の故障は、共和党支持の有権者の間でも不信感を生じさせています。トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で批判的な投稿をし、不正への懸念を訴えています。

真実は定かではありませんが、大統領選に続いて、中間選挙でも激戦州での出来事です。選挙の正当性はまたしても、議論の的になりそうです。

3.中間選挙の影響は?

天下分け目の決戦ともいえる米中間選挙の投票が終わりました。結果はどのようになるでしょうか。

本記事を執筆している2020年11月10日10時30分の開票速報を見ておきます。

まず、リアルクリアポリティクスです。

(出典:リアルクリアポリティクス

上院(SENATE)、下院(HOUSE)、州知事(GOVERNORS)共に共和党が上回っていますが、事前の予想の「赤い津波」とはなっていません。

次にFox Newsを見てみます。

(出典:Fox News

上院、下院の動きはまったく同じではありませんが、概ね傾向は同じです。上院は接戦、下院は共和党優勢というところです。

下院(議員定数435名)はおそらく、共和党が多数党となるでしょう。上院はやや共和党が優勢に思われますが、激戦州は微差になるので、有効票の数え直しなどがあり、最終結果が出るまでに1カ月程度を擁する可能性も十分あります。

上院、下院とで米議会は成り立っていますが、その違いを見ておきます。


【上院(Senate)】
・「Upper Chamber(上院の議院)」と見なされ、下院よりも審議機能が高いと考えられている。
・100人(各州から2人)の上院議員で構成される。
・上院議員の任期は6年で、務める任期の数に制限はない。
・選出の便宜のため、上院議員は3つのグループに分けられ、1つのグループが2年ごとに改選される。この仕組みにより、経験のある現職議員が常に確保されるようになっている。
・上院議員に欠員が生じた場合には、通常、欠員の出た州の知事の任命によって補充される。
・副大統領が上院議長を務め、可否同数の場合のみ票を投じる。
★下院と同じ広範な立法権を有するが、上院のみに付与されている権限もある。
・連邦最高裁判所と連邦下級裁判所、行政府の主要な役職の大統領による指名人事は、被指名者の就任に先立って上院が承認を与えなければならない。
・上院は、大統領が取り決めた国際条約を可決又は否決する。
・大統領又は連邦最高裁判所裁判官が弾劾訴追された場合には、上院本会議が弾劾裁判を行い、陪審として機能する。

【下院(House of Representatives)】
・「House of the People(人民の議院)」と見なされる。
・435人の下院議員で構成され、議席数は人口に応じて各州に割り振られる。5つの準州と属領、すなわちコロンビア特別区(首都)、米領サモア、グアム、プエルトリコ、米領バージン諸島からも、投票権のない代表者が選出される。
・下院議員の任期は全員2年で、任期の数に制限はなく、全員が同時期に選出される。
・各議員は、下院選挙区と呼ばれる州内の特定区域から、1人ずつ議員が選出される。
・下院議員に欠員が生じた場合には、補欠選挙又は総選挙によってのみ補充される。
・下院議員は下院議長を選出する。下院議長は下院の統括者であり、実際には多数党に所属する。
★上院と共有することなく下院だけに付与されている特別な権限および責任として、以下に示すものが含まれる。
・大統領と連邦最高裁判所裁判官に対する弾劾訴追を行う権限。
・歳入の徴収に関するすべての法案は、まず下院に提出されなければならない。
・いずれの大統領候補も選挙人の過半数を獲得しなかった場合、下院が大統領を選出する。この場合、各州の議員団はそれぞれ1票を有する。


バイデンの残り2年は少なくとも下院は共和党が握ることになり、「ねじれ国会」となります。そのため、民主党の国債を発行する財政拡張と減税法案が通りにくくなります。

共和党には反対が約70%と多い、ウクライナ軍への武器支援は、削減される可能性が高くなります。緊縮財政の多い共和党では、インフレ抑制の利上げは強化されるのではないでしょうか。

さらに予想される傾向として、前方展開の米軍は、世界から撤収する方向が強くなるでしょう。日本への駐留もグアム島へ引く可能性があります。米軍の前方展開と軍事費は、日本の約3倍も高い医療保険と並び、米国の巨額財政赤字の原因です。2021年のアフガンからの撤収もその一環といえます。それが、共和党が優勢になると加速する可能性が高い。

日本の政治の方向も米国が民主党から共和党主導になってくると、転換が起こります。米国が世界に広げていったグローバルな金融中心から、米国の国内産業を保護する方向へシフトします。そのため、輸出増加を目指し、ドルの独歩高から、ドル安への修正も進む可能性が高くなります。

GAFAMの株価が低下していることも政治の変化を反映しているように思います。

民主党寄りがはっきりしていたTwitterは、「共和党支持」を明確にしているイーロン・マスク氏が買収したことで、共和党寄りとまでは言わなくても、中立にはなっていくと思われます。

また、これも民主党寄りが鮮明だったメタ(旧フェイスブック)の株価も年初は335ドルでしたが、88ドルまで下落しました。74%の下落。強かった情報発信力を失ってきています。

1兆ドル(145兆円)だったメタの株価時価総額は、2564億ドル(37兆円)に暴落しています。資本力がなくなり、社員は大量にレイオフすると発表されました。

2022年の株価下落の主なものは、ナスダックのGAFAM(年初は時価総額が800兆円)の暴落です。

時価総額が200兆円を超えていたアマゾンの株価も50%下落しています。コロナで25%伸びた売上も、現在は減っており、物販部門は赤字となっています。そのため、物販部門の売却の評価はゼロとなり、クラウド部門の評価だけの株価となっています。

GAFAMは全て民主党支持であり、情報戦でこれまで民主党を支えてきました。しかし、インフレによって個人消費が落ち込み、ネット広告費が大幅に削減され、これまでの勢いはなくなりました。コロナによるロックダウンと1.9兆円(275兆円)の財政支出拡大から、米国の株価バブルを作ってきたGAFAMの株価低下は、金利の上昇だけが原因ではないと考えられます。

リモートワークや外出をしない生活で伸びた産業などへの「高い成長期待」は薄らいでいます。ZOOMの株価は1年で65%低下、NETFIXも60%下がっています。強烈な下げです。

民主党寄りの企業の高い成長は終わりを迎えている可能性があります。

米国では主張がはっきりしています。

軍需産業、グローバル金融のウォール街、情報産業、メディア、ワクチンと医療産業、医療は民主党派です。高学歴が多い。米国の高等教育は社会主義化しています。

一方、米国の内陸部に多い、農業・畜産業、資源産業(二酸化炭排出量が多い)、伝統的な製造業、全米ライフル協会は共和党派です。

米国の方向性はどちらに向くか。少なとも現時点では、共和党が下院を制することで、これまでの2年間と同じとはならないと思われます。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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