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中国軍機、米軍機と6メートルに異常接近 南シナ海上空~日本への脅威~【日経新聞を学ぶ】

1.中国軍機、米軍機と6メートルに異常接近

米国のインド太平洋軍は29日の声明で、中国軍機が21日に南シナ海上空で米軍機に異常接近したと明らかにした。米軍機の機首から20フィート(約6メートル)以内に近づいたという。「危険な行動だ」として中国軍を非難した。

声明によると、米空軍の偵察機RC135が南シナ海の公海上空で通常の任務を合法的に実施していたところに中国海軍の戦闘機「殲11(J11)」が接近した。偵察機は衝突を避けるための措置を強いられたという。

中国外務省の汪文斌副報道局長は30日の記者会見で「米国が頻繁に中国に艦船を派遣して接近偵察を行い、中国の国家安全に深刻な危害を加えている」と批判。そのうえで「引き続き必要な措置を講じ、自国の主権と安全を断固として守る」と述べた。

インド太平洋軍はRC135から撮影したとみられる当時の映像も公開した。J11とみられる航空機が至近距離で並走する様子が映っている。

インド太平洋軍は声明で「インド太平洋地域の全ての国が国際空域を安全に使って国際法を順守するよう期待する」と言及した。「米国のインド太平洋統合部隊は自由で開かれたインド太平洋地域に向けて注力し、全ての船舶や航空機の安全に配慮しつつ国際法が認める海域や国際空域を飛行して航行し、活動していく」と強調した。

バイデン米政権はこれまでも中国軍機の飛行を懸念してきた。オースティン国防長官は11月下旬にカンボジアで開いた米中国防相会談で「中国軍の航空機がインド太平洋地域でますます危険な行動をとっていると懸念している」と伝えた。

イーライ・ラトナー米国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は7月下旬、米シンクタンクのイベントで中国軍の航空機などによる進路妨害が最近5年間で急増したと批判した。「この行動パターンを続ければ地域で大きな事故が起きるのは時間の問題だ」とも話していた。

ブリンケン米国務長官は2023年の早い時期に中国を訪れる計画だ。米中の対話ルートを維持して軍事衝突を避ける狙いがあるが激しい米中対立は続く公算が大きく、偶発的衝突のリスクは消えない。

(出典:日経新聞2022年12月31日

中国の軍事行動への懸念が高まっています。最も脅威に感じているのは台湾でしょう。その台湾の英語メディアのTAIWAN NEWSの記事を見ておきましょう。近距離に接近した中国の戦闘機の映像もあります。

2.南シナ海で米軍偵察機の6メートル以内に中国軍機が入る映像が公開される

Video shows Chinese warplane within 6 meters of US spy plane in South China Sea
南シナ海で米軍偵察機の6メートル以内に中国軍機が入る映像が公開される

RC-135 forced to take evasive maneuvers to avoid collision with PLAN Shenyang J-11 fighter jet
RC-135はPLAN瀋陽J-11戦闘機との衝突を回避するため、回避行動を取らざるを得なかった。

A Chinese warplane came within 6 meters of a U.S. Air Force (USAF) reconnaissance plane in international airspace over the South China Sea last week, forcing the U.S. aircraft to take evasive maneuvers to avoid a collision.
先週、南シナ海の国際空域で中国の戦闘機が米空軍の偵察機の6メートル以内に接近し、米軍機は衝突を回避するための回避行動を取らざるを得なくなりました。

On Thursday (Dec. 29), the United States Indo-Pacific Command (USINDOPACOM) announced that a People's Liberation Army Navy (PLAN) Shenyang J-11 fighter pilot executed an "unsafe maneuver" when intercepting a USAF RC-135 reconnaissance aircraft, while it was "lawfully conducting routine operations over the South China Sea in international airspace" on Dec. 21. The J-11 pilot allegedly flew an "unsafe maneuver" by flying in front of the nose of the U.S. aircraft, at one point coming within 6 meters.
米国インド太平洋軍(USINDOPACOM)は29日(木)、人民解放軍海軍(PLAN)の瀋陽J-11戦闘機のパイロットが、12月21日に「国際空域の南シナ海で合法的に日常業務を行っていた」米空軍RC-135偵察機を迎撃する際に「安全ではない作戦」を実行したと発表した。J-11のパイロットは米軍機の機首の前を飛行し、一時は6メートル以内に接近する「危険な行動」を取ったとされる。

To avoid a collision with the Chinese fighter jet, the U.S. plane was forced to take evasive actions, according to the report. The statement said The U.S. Indo-Pacific Joint force is "dedicated to a free and open Indo-Pacific region and will continue to fly, sail and operate at sea and in international airspace with due regard for the safety of all vessels and aircraft under international law."
中国の戦闘機との衝突を避けるため、米軍機は回避行動を取らざるを得なかったという。声明では、米インド太平洋統合軍は、「自由で開かれたインド太平洋地域に専念し、国際法の下ですべての船舶と航空機の安全に十分配慮しながら、海上と国際空域で飛行、航行、作戦を継続する 」と述べている。

The U.S. Indo-Pacific Command added that it expects all nations in the Indo-Pacific region to "use international airspace safely and in accordance with international law."
米インド太平洋軍は、インド太平洋地域のすべての国が "国際法に従い、安全に国際空域を使用する "ことを期待すると付け加えた。

The press release included a video of the incident, apparently taken from the cockpit of the RC-135. In the video, the J-11 can be seen remarkably close to the window on the left side of the cockpit.
プレスリリースには、RC-135のコックピットから撮影されたと思われる事件のビデオが含まれています。ビデオでは、J-11がコックピットの左側の窓のすぐ近くにいるのが見える。

The Chinese fighter plane can then be seen edging even closer as it moves in front of the U.S. aircraft, putting it on a trajectory to collide with the PLAN jet. To avoid a collision, the U.S. pilot lowers the nose of the aircraft to dip below the Chinese warplane and then banks hard to the right to gain more separation between the two planes.
その後、中国戦闘機はさらに接近し、米軍機の前に移動し、PLANジェットと衝突する軌道に入るのが見える。衝突を避けるため、米軍パイロットは機首を下げて中国軍機の下に潜り込み、右に大きくバンクして2機との間隔を広げます。
(出典:TAIWAN NEWS2022年12月30日

3.日本への脅威

国際政治アナリストの伊藤貫氏が主張されていたことがとても印象的でした。それは、ロシアとウクライナの戦争が長引けば、喜ぶのは中国。米国は二正面作戦を放棄しているので、ロシアと中国の二正面作戦は実行できない。だから、対ロシアとNATOの全面戦争になれば、米国は対ロシアに集中するため、中国が台湾に侵攻しても手が出せない。尖閣諸島をとられても米軍は日本を守ることもない。

確かにそうだな、と思わされました。

そして、中国はそれを見越したように、脅威を高めています。フィナンシャルタイムズもこの米軍の近距離で飛行した中国の戦闘機のことを報道しています。

この中で、中国の空の脅威は今回だけではないことが報じられています。

  • 6月、オーストラリアは、中国の戦闘機が前月に偵察機の近くを飛行し、飛行機のエンジンに吸い込まれた金属片を公開した。

  • カナダはまた、中国の戦闘機が北朝鮮に対する制裁の回避を監視している航空機に嫌がらせをしていると非難した。

戦後、米国が世界の秩序づくりを主導し、ソ連との冷戦に勝利したのは、二正面作戦を可能にする圧倒的な軍事力があったからでした。

しかし、2012年1月、オバマ大統領は国防方針であるこの二正面作戦の断念を宣言しました。その後、「世界の警察官」役をやめると表明しました。

現在の米軍は二正面作戦を遂行する力はありません。もし、このままウクライナが抵抗を続ければ、ロシアは冬に大軍での侵攻を実行するでしょう。そして、今ではウクライナ軍ではなく、NATO軍となりつつある西側との正面衝突。NATOが本格的に参戦すれば、ロシアは公言している通り、戦術核を使う。そうなれば、米軍も一層対ロシアにしか戦力を割くことはできません。

その時、中国が台湾侵攻をしようとも、尖閣諸島を占領しようとも、もしくは他の日本の領土を占拠しようとも、米国は二正面では戦えませんから、台湾も日本も独自で防衛するしかありません。

NATOとロシアの全面衝突が起きた時、その時は日本も中国の脅威に無防備にさらされるときと考えておいた方が良さそうです。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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