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ドル円為替を考える~米国総負債編~

2022年からのFRBの利上げによって、ドルの短期金利は5.25%~5.50%、長期金利は4.3%に上がっています。(2024年6月)

米国の対外負債は約26兆ドルに膨らんでいます。長短の平均金利を5%とすれば、26兆ドル×5%=1.3兆ドル(200兆円)に増えます。

(出典:CEIC/米国対外債務)

米国の2024年度(24年4月-25年3月)以降の対外的な経常収支の赤字は利払い費の増加によって、さらに悪化することになります。

対外債務の増加は続いており、高金利が続く米国は、負債の金利を対外純資産を持つ海外(日本、中国、英国、スイス、産油国)に払うことが困難になるということです。

負債の多い企業がその金利の利払いができなくなることが破産です。国家は通貨を増発できるので、法的な破産はありませんが、国際金融市場では破産します。世界の銀行から米ドルが買われなくなるのです。これが対外負債の頂点でのドルの崩壊です。

しかし、米国には26兆ドルの対外負債だけではありません。米国の総負債(政府の負債+企業の負債+世帯の負債)は100兆ドルに達しています。(1京5,500兆円)

(出典:FRED/米国総負債)

米国のGDP25.4兆ドル(3,940兆円)の4倍です。2008年のリーマンショックの後、米国は「負債を増やすことによって経済を回してきた」のです。

1980年には、米国のこの基準での総負債は4.4兆ドルでした。その後の44年間で23倍、平均年率では7.4%で増えてきたのです。世帯で考えれば、所得の増加率の約3倍のペースで負債を増やし続けてきたということです。

因みに連邦政府の負債は35兆ドル、企業の負債証券の発行と借入が14兆ドル、世帯の負債は20兆ドルとされています。

(出典:FRED/米国政府債務)
(出典:FRED/米国企業債務)
(出典:FRED/米国世帯債務)

米国の1.3億世帯(Census Bureau)の平均の世帯収入は、7万5千ドルです。20兆円の負債を世帯で割ると、年収の2倍の15.4万ドルになります。米国の世帯は銀行預金より遥かに負債が多いのです。

米国の国内負債100兆ドルに対して、2024年の平均金利が4%なら、年間の利払いと配当の必要額は、100兆ドル×4%=4兆ドル(620兆円)という巨額になります。これは米国のGDP15.4兆ドル(3,930兆円)の16%に達する金額です。

米国の平均世帯年収は7.5万ドル(1,162万5千円)、平均の負債は15.4万ドルです。世帯負債の平均金利を5%とすれば7,700ドル(119.4万円)です。世帯の負債の平均の返済期間を10年と考えると、世帯平均15.4万ドル÷10年で、1.54ドルが年平均の返済額となります。すると、米国民は平均7.5万ドルの年収から、利払い7,700ドル、元金返済1.54ドル、合計2.31万ドル(358万円)が負債の返済に消えていきます。年収の30%にもなります。

1.3億世帯のうち、相当数の世帯で借金の返済と利払いができなくなるでしょう。世帯ローン(20兆ドル)は、2025年には20%の4兆ドル(620兆円)程度が不良化するのではないでしょうか。

既にクレジットカードの支払いが30日以上遅れた割合は前年から2.42ポイント上昇し、8.93%と13年ぶりの高水準となっています。90日を超える深刻な延滞に移行した割合も6.86%と2.29ポイント上昇しています。

(出典:日経新聞2024年5月15日)

クレジットカードのローン金利は2024年2月時点で平均年率は22.63%となっています。クレジットカードローンを延滞しても、金利が22%ではその後の所得では払いきれない。雪だるま式に膨らみます。最後は世帯の自己破産しかありません。

(出典:Federal Reserve Bank of St. Louis)

全米で世帯の「不良債権ローン」は減ることはなく、さらに増加率は加速していくでしょう。2009年のリーマンショック後のクレジットカードの延滞率は14%でした。2025年にはリーマンショック後の延滞率を超えてくるでしょう。

また、住宅ローンの固定金利は、現在7%程度ですが、2021年の2.6倍です。負債で消費をしてきた家計は返済と利払いに追われています。

米国経済の根本的な問題は、所得の約3倍の年率7.4%で負債を増加させて、政府の会計、企業の会計、世帯の会計を成立させてきたことにあります。負債は返済しない限り減りません。それには負債の返済が新規の借り入れを上回る必要がありますが、それはありません。

2020年に0.25%だった政策金利が5.25%~5.5%に上がり、利払いの増加によって払えない金利が増えるのはこれからです。

いつまで負債を膨らませ続けることができるのか?それが止まった時は米国のクラッシュですが、その時は近づいてきています。

米国の総負債は2020年の年初からの4年で70兆ドルから100兆ドルへと30兆ドル急増しています。2025年の4%の平均金利なら4兆ドル(620兆円)の米国の政府、企業、世帯にとって不可能な利払いになります。

利払いができなくなっても戦争を起こしながら、負債は最後は踏み倒せばいいと考えているのかもしれません。借金は借入が増える時期には楽になり、買える物も増えて、生活水準も上がります。

しかし、所得に対する返済と利払いが増える時期が来ると、生活を圧迫してきます。リーマンショック後から米国は米ドルの発行を増やし続け、借金を膨らませ続けてきました。15年の負債の増加で演出してきた好景気は、高い金利の利払い増加と共に、終わってきます。

2025年は米ドルの終わりの始まりがはっきりと見えてくる年になるのではないでしょうか。

その時、ドルと円の関係は?

円高になるでしょう。もしかしたら、購買力平価あたりになるかもしれません。

このテーマ終わり。


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