クレディ・スイス、中銀から最大7兆円調達へ~名門銀行に何が起こっているのか~【日経新聞をより深く】
1.クレディ・スイス、中銀から最大7兆円調達へ
2.クレディ・スイスに何が起こっている。
米国の地銀シリコンバレー銀行(SVB)の破綻に続き、スイスの投資銀行であるクレディ・スイスの危機が表面化しています。
3月14日には「資産の内部管理に重大な弱点がある」と発表していました。原因はSVBと同じ、ドルとユーロの金利の上昇による「保有債券下落による含み損」です。
ドル債券(ドル国債、MBS(不動産担保証券)、社債、その他のローン担保証券)では、約20%の含み損が想定されます。ユーロの金利も0%付近から3%に上昇していますので、ユーロ建ての長期債も約20%は下落しています。
米欧の他の大手銀行に共通する危機ですが、クレディ・スイスはレバレッジの高さから、「カナリア」になったのでしょう。総資産7,558億スイスフランのクレディスイスは欧州、米国、中国、アジア、中東、日本を営業地域にする国際的な投資銀行です。米国の地銀であるシリコンバレー銀行とは違います。
クレディ・スイスの株価は急落しています。
3.クレディ・スイスの事情
クレディ・スイスは近年、スキャンダルが続いていました。ブルガリアの麻薬組織によるマネーロンダリングを巡る有罪判決、モザンピークでの汚職への関与、元従業員と幹部が関与したスパイ・スキャンダル、顧客データのメディアへの大量リークなど。
これに加え、破綻した英金融ベンチャーのグリーンシル・キャピタルの創業者レックス・グリーンシル氏や、同じく破綻したアルケゴス・キャピタル・マネジメントとの関係が明らかになったことで、内部統制の甘さに疑問が持たれていました。この結果、多くの顧客がクレディ・スイスに見切り付け、2022年後半に前例のない規模の顧客流出が起きていました。
ウルリッヒ・ケルナー最高経営責任者(CEO)は顧客とその資産を取り戻すことに着手し、1月には預金が「純流入」になったと発表しました。成果が上がりつつあると思われました。しかし、その後、クレディ・スイスは年次報告書について米証券取引委員会(SEC)に問いただされ、3月9日に予定していた年次報告書の公表を延期しました。さらに10日にシリコンバレー銀行が破綻し、パニックが広がりました。投資家は、金融リスクと預金流出の恐れがあるものを手放し始めました。
クレディ・スイス・グループの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクのアンマー・アルクダイリー氏がクレディ・スイスに追加投資をすることはないと発言したことをきっかけに、株価が暴落。クレディ・スイスはスイス国立銀行に支援の姿勢を公に示すことを求めました。クレディ・スイスの社債のデフォルトに備える1年物の保証料は大手銀行としては、金融危機以来の高水準となっています。
15日の欧州市場が閉じた後、スイスの中央銀行とスイスの金融規制機関であるスイス金融市場監督局(FINMA)は、クレディ・スイスの財務の健全性を証明する共同声明を発表しました。
クレディ・スイスは、「システム上重要な銀行に適用される、より高い資本と流動性の要件を満たしている」ため、米国における銀行の混乱から直接のリスクはないと、共同声明は述べています。しかし、クレディ・スイスの株価と債券価格が下落したこと、そして、必要な場合にはスイス国立銀行が支援することも併せて打ち出しました。
クレディ・スイスに対する不安が再燃したことで、世界の銀行に大きな打撃を与えました。フランスのBNPパリバやソシエテ・ジェネラルのような欧州の金融機関の株価は2桁下落し、JPモルガン・チェースやシティグループなど米国の金融機関も下落しました。
もし、仮にクレディ・スイスがデフォルトするようなことがあれば、規模や世界に関わっていることからして、世界的危機になっていきます。ただ、いよいよとなれば、スイス国立銀行やFRBが救済はするでしょう。それでもそのインパクトは途轍もなく大きいものとなります。
これは、金融危機が始まったサインでしょうか。それとも、一金融機関の問題でしょうか。
3月21日~22日のFOMCはさらに難しくなってきました。
未来創造パートナー 宮野宏樹
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