見出し画像

クレディ・スイス、中銀から最大7兆円調達へ~名門銀行に何が起こっているのか~【日経新聞をより深く】

1.クレディ・スイス、中銀から最大7兆円調達へ

スイスの金融大手クレディ・スイス・グループは16日、スイス国立銀行(中央銀行)の資金供給策を使って最大500億スイスフラン(約7兆1000億円)を調達する用意があると発表した。「先制して流動性を強化するため断固たる行動を取る」と強調した。

15日の欧州株式市場では同社の経営不安が広がり、株価が一時前日比で約3割下落していた。スイス国立銀はスイス金融市場監督機構(FINMA)と連名で出した同日の声明で「システム上重要な銀行に対する資本や流動性の要件を満たしている」との見解を示し、必要があれば資金供給で支援すると表明していた。

クレディ・スイスは債券などを担保に資金を借りられる中銀の供給枠を活用し、手元流動性を厚くする。ウルリッヒ・ケルナー最高経営責任者(CEO)は「クレディ・スイスを強くするための断固とした行動を示すものだ」とコメントした。発表は現地時間未明で、投資家の動揺を抑えるため迅速な対応を迫られた。

世界各地で金融事業を展開するクレディ・スイスは「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」の指定を受け、国際的な銀行規制で自己資本などに厳しい要件が課されている。同社によると危機局面で対応できる手元資金の水準を示す「流動性カバレッジ比率(LCR)」は14日時点で約150%と、2022年末時点の144%から改善した。「金利リスクに保守的な持ち高をとっている」と説明して財務の健全性を強調した。

クレディ・スイスはリスク管理を巡る問題や経営管理上の不祥事が相次ぎ、最近は中核の富裕層向け事業で預かり資産の流出も続いて経営不安が広がっていた。15日には筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクの会長が追加出資をしないと述べたと伝わり、株安に拍車がかかった。

クレディ・スイスの発表を受けて外国為替市場では安全通貨の円が幅広い通貨に対して売られた。対ドルの円相場は発表前の1ドル=132円50銭近辺から一時133円台半ばと1円ほど円安・ドル高が進行した。スイス国立銀による支援で大きな混乱は避けられるとの期待感が広がった。

(出典:日経新聞2023年3月16日

2.クレディ・スイスに何が起こっている。

米国の地銀シリコンバレー銀行(SVB)の破綻に続き、スイスの投資銀行であるクレディ・スイスの危機が表面化しています。

3月14日には「資産の内部管理に重大な弱点がある」と発表していました。原因はSVBと同じ、ドルとユーロの金利の上昇による「保有債券下落による含み損」です。

ドル債券(ドル国債、MBS(不動産担保証券)、社債、その他のローン担保証券)では、約20%の含み損が想定されます。ユーロの金利も0%付近から3%に上昇していますので、ユーロ建ての長期債も約20%は下落しています。

米欧の他の大手銀行に共通する危機ですが、クレディ・スイスはレバレッジの高さから、「カナリア」になったのでしょう。総資産7,558億スイスフランのクレディスイスは欧州、米国、中国、アジア、中東、日本を営業地域にする国際的な投資銀行です。米国の地銀であるシリコンバレー銀行とは違います。

クレディ・スイスの株価は急落しています。

(出典:グーグルファイナンス

3.クレディ・スイスの事情

クレディ・スイスは近年、スキャンダルが続いていました。ブルガリアの麻薬組織によるマネーロンダリングを巡る有罪判決、モザンピークでの汚職への関与、元従業員と幹部が関与したスパイ・スキャンダル、顧客データのメディアへの大量リークなど。

これに加え、破綻した英金融ベンチャーのグリーンシル・キャピタルの創業者レックス・グリーンシル氏や、同じく破綻したアルケゴス・キャピタル・マネジメントとの関係が明らかになったことで、内部統制の甘さに疑問が持たれていました。この結果、多くの顧客がクレディ・スイスに見切り付け、2022年後半に前例のない規模の顧客流出が起きていました。

ウルリッヒ・ケルナー最高経営責任者(CEO)は顧客とその資産を取り戻すことに着手し、1月には預金が「純流入」になったと発表しました。成果が上がりつつあると思われました。しかし、その後、クレディ・スイスは年次報告書について米証券取引委員会(SEC)に問いただされ、3月9日に予定していた年次報告書の公表を延期しました。さらに10日にシリコンバレー銀行が破綻し、パニックが広がりました。投資家は、金融リスクと預金流出の恐れがあるものを手放し始めました。

クレディ・スイス・グループの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクのアンマー・アルクダイリー氏がクレディ・スイスに追加投資をすることはないと発言したことをきっかけに、株価が暴落。クレディ・スイスはスイス国立銀行に支援の姿勢を公に示すことを求めました。クレディ・スイスの社債のデフォルトに備える1年物の保証料は大手銀行としては、金融危機以来の高水準となっています。

15日の欧州市場が閉じた後、スイスの中央銀行とスイスの金融規制機関であるスイス金融市場監督局(FINMA)は、クレディ・スイスの財務の健全性を証明する共同声明を発表しました。

クレディ・スイスは、「システム上重要な銀行に適用される、より高い資本と流動性の要件を満たしている」ため、米国における銀行の混乱から直接のリスクはないと、共同声明は述べています。しかし、クレディ・スイスの株価と債券価格が下落したこと、そして、必要な場合にはスイス国立銀行が支援することも併せて打ち出しました。

クレディ・スイスに対する不安が再燃したことで、世界の銀行に大きな打撃を与えました。フランスのBNPパリバやソシエテ・ジェネラルのような欧州の金融機関の株価は2桁下落し、JPモルガン・チェースやシティグループなど米国の金融機関も下落しました。

もし、仮にクレディ・スイスがデフォルトするようなことがあれば、規模や世界に関わっていることからして、世界的危機になっていきます。ただ、いよいよとなれば、スイス国立銀行やFRBが救済はするでしょう。それでもそのインパクトは途轍もなく大きいものとなります。

これは、金融危機が始まったサインでしょうか。それとも、一金融機関の問題でしょうか。

3月21日~22日のFOMCはさらに難しくなってきました。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

自分が関心があることを多くの人にもシェアすることで、より広く世の中を動きを知っていただきたいと思い、執筆しております。もし、よろしければ、サポートお願いします!サポートしていただいたものは、より記事の質を上げるために使わせていただきますm(__)m