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再出発できた恩を、子どもたちに/フローレンス 岩井純一さん #N男N女 File.1

明日の社会を良くしようと、様々な課題や問題と日々格闘するNPO法人。
そこで働く人たちを戦隊ヒーローに例えるなら、自らの正義を信じてリーダーシップを発揮する代表は赤レンジャーか。では、いつでも冷静沈着な青レンジャー、周りを明るくするムードメーカーの黄レンジャーは・・・?

定期連載「N男N女」では、それぞれの個性や強みを発揮しながら、熱い思いを持って団体の活動を下支えする職員らにスポットを当てる。

初回は、我らがNPO未来ラボの広報チームリーダーであり、病児保育事業などを展開する認定NPO法人フローレンス職員の岩井純一さん。

「フローレンスの病児保育がなかったら、孤独でどうなっていたかわからない 」。フローレンスが、病児保育サービスを提供するひとり親の方へ呼び掛けて開催した交流イベント。岩井純一さんは、参加者のひとり親の方からの声に思わず涙が込み上げそうになったという。

参加者の中には自身も大変な状況にいるにも関わらず、「自分よりもっと大変な状況にいる人に利用枠を譲っていきたい」と話す人も。「自分もしんどいはずなのに、人のことも考えられる、思えるのは本当にすごいなって感動しました」

仕事を通した感動や学びは数えきれない中で、「最近、うれしかった出来事の一つ」と笑う。

社会問題解決へ前例のないことに挑みたい

フローレンスでは、病児保育や障害児保育、特別養子縁組など多岐に渡る事業を展開している。「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」。そんなビジョンに共感し、岩井さんは二年前に、制作プロダクションからフローレンスに転職した。

ずっと子どもに関わる仕事をしたいと思っていました。フローレンスでは、目の前で困っている人たちを支えるだけでなく、その背景にある社会問題自体の解決を見据えています。 病児保育事業のように、周りから「絶対にうまくいかない」と言われていたことも、とにかくやってみて「小さな解」を作り、広げていく。時には政治に働きかけて、法律も変えていく。 そんな風に前例のないことに挑戦していこうとする人たちと一緒に働きたいと思い、転職を決めました。

もともとは WEB サイトのデザインやコンテンツを考えるWEB ディレクターとして採用された岩井さん。半年前からは、広報担当となって、法人にくる取材依頼の対応や、ホームページに掲載する記事の執筆、 SNS での情報発信などを手掛けている。

働きたいと思った時に、たまたま募集していた職種が WEB ディレクターでした。実務経験はゼロだったのですが、フローレンスで働きたい!という熱い思いだけで押し切りました。 広報の仕事にはずっと興味があって、自分から手を上げました。
フローレンスでは「やりたい」と思ったら、出来ない理由を探すのではなく「どうやればいいか」を考える。挑戦できるのが、面白い。 またその他に、全国100以上の NPO や社会的企業が加盟する新公益連盟の事務局もやっています。調整役を担うことも多い中で、コミュニケーション力や人との繋がりという自分の強みが生かせている。 NPO は一般企業に比べて、お金やヒトなどのリソースが足りていない。いかにそれを獲得するか。自分の得意や強みを最大限、発揮できる場で、NPO同士の連携やソーシャルセクターがスケールしていくための施策を考えることは大切だし面白いですね。

荒れた中学時代の経験からNPOに関心が生まれた

そんな岩井さんが NPOという言葉を初めて知ったのは、高校生の時。所属していた高校のボランティア部で活動する中で、海外の子どもの貧困に興味を持ったという。イラクなどの紛争地で支援活動をしていたピースウィンズ・ジャパンを知り、当時住んでいた新潟から東京の事務所を訪ねたこともある。

ピースウィンズ・ジャパンを訪ねて、何を話したか全然覚えていないけど、こういう働き方をしている人が日本にもいるということをリアルに知ることができたのは大きかったですね。 大学は国際関係学部に進んで、東南アジアの子どもたちの支援にずっと関わってきました。卒業後に NPO に就職することも考えたのですが、当時は、新卒で NPO に就職という選択肢はほとんどなくて・・・。まずは、社会人として経験を積もうと一般企業に就職しました。 社会人になってからも、働きながらブリッジフォースマイルやキッズドアなど、子どもたちを支援する NPO にボランティアやプロボノなどとして関わりを続けていました。

「子ども」をキーワードに、ずっと NPO に関わってきた岩井さん。大人に比べて、選択肢を持てない子どもたちに、自分自身の世界を広げる機会やきっかけ、居場所を作っていきたいという。その原体験は、岩井さん自身の子ども時代にある。

中学校の時に、学校全体が荒れていて、自分もあまり学校に行っていなかった。自分の将来に対しても投げやりに考えていて、どうしようもない子どもでした。 そんな時に、友達が交通事故で亡くなったんです。絵がうまくて将来は漫画家になりたいと頑張っていた。自分で書いた四コマ漫画を見せてくれたこともあったなぁ。夢を持っていた人が亡くなって、なんで自分みたいなクズが生きてるんだろうってふさぎ込んだ。
そこから、将来のことを少しずつ考えるようになって、高校に進学することにしました。 第一志望の高校を受けたけど、落ちて、まぁしょうがないかとヘラヘラしながら中学の先生に報告に行ったら、目の前で泣かれちゃって。先生や親をはじめ周りの大人が、自分のことをずっと思ってくれていて、戻れる居場所があったから、自分も再出発することができたと思っています。 自分が受けた恩を、同じような境遇にいる子どもたちに関わることで返していきたい、それが原点です。

NPO同士のつながりを作りたい

最後にこれから取り組んでいきたいことを聞いた。

  NPOの活動や、社会問題を他人事だと思っている人はまだまだ多く、そうした意識を変えていきたいです。 関心を持ってもらうには、情報発信は本当に重要。「こんなに大変で、苦しんでるんです」というようなことを伝えるだけでは不十分。僕自身も心を動かされるような、現場のポジティブな変化や成長を、ストーリー性を持って伝えていくことを意識していきたいと思っています。それが共感を生んで、自分事になっていく。 あと、 NPO 自身がスケールしていくための展開をしていきたい。最近よく聞かれるようになったコレクティブ・インパクト。一団体やセクターの垣根を超えて、 NPO ・企業・行政が連携して、一つの問題に取り組んでいく。まずは NPO 同士がもっとつながりを持って、ノウハウや課題を共有していけるようなプラットフォーム、コミュニティを作っていきたいと思っています。 まだまだやれることは沢山あると思っています。

子どもの笑顔があふれる社会、そしてNPO業界
全体の将来を見据え、常にアンテナを張り巡らせ精力的に活動する岩井さん。
自身の原体験から来る強い思いに触れた気がしました。

NPOに関わる一人一人が、それぞれの物語を持っていると思います。
あなたは、どんな物語を持っていますか?

文章・編集 はしみー


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