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勉強会レポート:第8回エールのつながる夜会


テーマ:足のむくみの診かた 〜圧迫療法、履き方のコツ教えます〜
講師:エール在宅診療所 皮膚・排泄ケア認定看護師 石井佳子
開催日:2023年11月16日(木)


むくみとは?

むくみとは皮膚の下にある皮下組織に余分な水分(間質液)がたまる状態のことです。

むくみは身体のどの部位でも起こりますが、

  • 血液の40%が集中している

  • 地面に近く重力の影響を受けやすい

  • 心臓から遠い

という理由から、血流が悪くなりやすい「足」がむくみやすく、在宅の患者さんにも足が浮腫んでいる方がとても多いです。

↑ 指までむくんでしまうことも

足がむくむとどうなる?

足がむくむと、重くなったりだるさや不快感を感じるだけでなく、思うように歩けなくなってしまうことで転倒のリスクが高まり…

結果としてQOL(生活の質)が下がってしまいます。

むくみの原因と基本的な治療

足がむくむ原因は、

  •  心臓病腎臓病肝臓病などの疾患が原因で起こるむくみ

  •  静脈の流れが悪くなるために起こるむくみ

  •  リンパ管の輸送が障害されて起こるリンパ浮腫

  •  疾患はないが活動性が低い高齢者の廃用性症候群によるむくみ

と様々にあり、多くの人は何科を受診したら良いのかわかりません。

  • 通院が困難な人や在宅診療を受けている場合は主治医に相談

  • 病気が隠れている可能性もあるので、とりあえず血管外科の受診

をお勧めしますが、

病気でも病気でなくても、むくむときの基本的な治療は圧迫療法です。

圧迫療法と弾性ストッキング

圧迫療法とは?

「圧迫療法」とは、装具を用いて圧迫することで下肢に溜まった静脈の血液やリンパ液を心臓へ戻す方法です。

足の静脈はふくらはぎの筋肉の働きで心臓へ戻っているので、この作用を増強させるために以下のような装具を用いてふくらはぎの筋肉を収縮させます。

  • 弾性ストキング → 略して「弾スト

  • 弾性包帯

  • マジックテープを用いた圧調節が可能な圧迫装具

  • 空気を送り空気カフを膨らませる間欠的空気圧迫法

弾ストは医師の指示が必要な「治療」です

弾ストを提案すると、よくこんな言葉が返ってきます。

たかが靴下…と思われてしまいがちな弾ストですが、先に説明したとおり「圧迫療法」という治療のひとつです。

一般医療機器として認可されているものが多く、足の静脈の流れや細かい血管の循環の改善を増強する効果あります。

しかし、適切なもの(サイズ等)を使わないと効果が得られないうえに、血流障害や圧迫による傷などの合併症のリスク(※)もあるため、着用にあたっては医師の指示が必要です。

※ 合併症リスクの例

弾ストを正しく着用するには

弾ストの着用には、

  1. 正しく履く

  2. 継続して履く

  3. 傷を作らないように履く

ことが重要で、そのためにはケアマネージャーや看護師、ヘルパーによる支援が必要です。

また、少しでも(自分で)楽に履けて長く継続してもらうために道具を使用したり緩めの弾ストを提案することも有効です。

さらに、弾ストを履いたあとのフォローも重要で、

  • 弾ストの端(膝下)が丸まっていないか → みみず腫れの原因に

  • 弾ストにがよっていないか

  • はあっているか

  • 長すぎないか(サイズの確認)

  • 引っ張りすぎていないか

  • 皮膚が乾燥していないか → ひび割れから傷ができる

これらのポイントを確認したうえで、解決方法をレクチャーしたり保湿をするなどの対応が必要です。

また、履いただけで安心しないよう、座っていてもできる足首の運動(つまさきや踵を上げる等)を教えるのも有効で、これだけでも筋ポンプ作用が補助されて効果UPが期待できます。

実際に弾ストを履いてみよう!(演習)

当日は現地にて、弾スト着用方法のデモンストレーションと参加者の体験コーナーが設けられました。

その中から、道具を使用した着用方法をご紹介します。

フィッティンググローブを使用した履き方

つま先、踵、足首までの位置合わせにグローブを使用し、滑らない加工が施された手のひら側の全面を使用して弾ストを引き上げます。

足首までフィットしたらグローブを外してふくらはぎまで伸ばします。

ARIONのマグナイド2 in 1を使用した履き方

パラシュート生地で作られた滑りやすい袋状の道具を着用し、上から弾ストを履いて最後に引き抜くことで簡単に着用できます。

マグネットで接着されているため、引き抜き時は簡単に外れます。

ドッフン・ドナーセットを使用した履き方

机上に固定させた棒状の道具と、石鹸水の入った伸縮性のあるウレタンのバッグ(輪状)を使用して、弾ストを裏返しの状態でバッグに巻きつけます。

これを足にはめて転がすことで、力をかけずに履くことができます。

まとめ

  • 足のむくみとは組織間液が溜まる状態で圧迫療法が重要

  • 圧迫療法は医師の指示が必要

  • 履いてはいけない人がいるので注意

  • 弾ストは履きにくいので支援が必要

  • 履いた後のケアが必要

第8回 エールのつながる夜会 当日の様子

製品案内

当日ご紹介した弾性ストッキングや着脱補助器具は「九州メディカル株式会社」の製品です。
https://www.kyushu-med.jp/ (HP)

こちらのサイトから商品の詳細をご確認またはご購入いただけます。
https://www.kms-shop.co.jp/ (直営WEBストア)






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