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【制作後記】大合作!バンドブラザーズ 第10弾 -Decade-


はじめに

去る2023年11月14日は、私が生涯で最も愛してやまないゲーム『大合奏!バンドブラザーズP』(以下、バンブラP)の発売10周年の記念日でした。
このゲームはバンブラシリーズの最新作となる3作目。私は1作目からプレイしているのですが、打ち込んだ曲を動画にして投稿したり、SNSでバンブラーと交流したりするようになったのは今作であるPの発売がきっかけです。そういった「ミラ」名義での自己表現の場ができたお陰でバンブラへの意欲もどんどん増していき、そのお陰でバンブラ仲間も増え……という好循環の積み重ねで、今までインターネットでやってくることができました。バンブラで出会った音楽・コンテンツ・仲間はもちろん、バンブラに直接関係ない出会いですらバンブラからのバタフライエフェクトで説明できてしまうことはもはや怖くもあるのですが、これも紛れもない事実。そんな無限の可能性を秘めたゲームを世に出してくれた関係者の皆様、本当にありがとうございます! そして、10周年おめでとうございます!!!
……という思いを持っているのは私だけではないようで、この11月には多くの方が記念の動画を制作したり、思いの丈をSNSに投稿したりしていました。それらの中でもひときわ大規模だったのが、ニコニコ動画に投稿された『大合作!バンドブラザーズ 第10弾 -Decade-』でしょう。私はその企画の参加者の一人であり、動画・技術班の一人であり、運営の一人でもありました。それゆえ、この企画にかける思いが大きすぎて溢れてしまいそうなので、ここに制作後期という形でまとめておきます。前置きが長ぇ!

What's 大合作?

ニコニコ動画にあるバンブラのコミュニティで2009年に始まった合作シリーズ。各参加者が自由なテーマで短いメドレーを制作し、それを繋げて大きなメドレーにする企画。記念すべき第10弾&バンブラPの10周年にあたる今回は本編だけで44人57枠が集結しました。この規模の合作は、バンブラに限らずニコニコ動画全体で見ても珍しいと思います。

自分のメドレー

今回から、特定のテーマに縛られずごちゃまぜの選曲でメドレーを作る「フリー枠」が新設されました。6動画あるうちの最後、チームFがそれに当たります。私はチームFの中でも最後の「エンディング風メドレー」、つまり本合作の大トリを担っています✌

コンセプト

今回、どうしても作りたかったのは「メドレー合作の最後にある、歌声付きの泣けるパート」です。これを果たすにはそもそも全体構成で自分が最後にならなければいけません。そのために露骨にエンディングっぽい音源にしたり、通話中の雑談で「ラストになりたいな~(チラ」と小声で言ったりという少しセコいこともしておりました。また、そもそも大合作のレギュレーションでバンブラの歌声入力が解禁されたのは今作からです。初期の会議で歌声解禁賛成の意見をちょこちょこ出したのも、単に自分がやりたかったからというのが一番の理由かもしれません。
このコンセプトで強く意識した先行作品としては『匿 名 合 作 3』i-fer-eil iyon-re-ne euz=hyu-me-i i-fer-ne-hyu-me;さんパート『春夏冬合作』エルゼイアさんパート、それから歌声付きではありませんが『駆け抜けるメドレーコラボレーションFINAL 火星』のyamaimoさんパートがあります。これらの先行作品への意識から、全体を「イントロ→Aメロ→Bメロ……」とまるで一つの曲のような構成にするという方針もかなり早期に固まりました。

選曲・構成

試行錯誤の後、下表のような構成に落ち着きました。サビ1の後に間奏を入れたかったのですが、2分という時間制限的にどう考えても無理だったのでカットしました(初期構成案は3分以上あった)。

$$
\begin{array}{cclll}
\textsf{1} & \textsf{イントロ} & \textsf{齧りかけの林檎} & \textsf{デンキ街の本屋さん OP / 竹達彩奈} \\
\textsf{2} & \textsf{Aメロ} & \textsf{ミルキーウェイがけせない} & \textsf{IA / mint*(薄荷キャンディP)} \\
\textsf{3} & \textsf{Bメロ} & \textsf{ありがとう、そしていつか、またあおう} & \textsf{大合奏!バンドブラザーズP オリジナル楽曲『テーマ:ありがとう』優秀賞 /ありがトマト} \\
\textsf{4} & \textsf{サビ1} & \textsf{SEASONS} & \textsf{大合奏!バンドブラザーズ 収録曲 / 浜崎あゆみ}\\
\textsf{5} & \textsf{Cメロ} & \textsf{未来予想図II} & \textsf{大合奏!バンドブラザーズDX 収録曲 / DREAMS COME TRUE}\\
\textsf{6} & \textsf{サビ2}& \textsf{from Y to Y} & \textsf{初音ミク・巡音ルカ / ジミーサムP}\\
\textsf{7} & \textsf{アウトロ} & \textsf{冬の花火} & \textsf{匿名ラジオ ワイワイはっぴぃトークショー}\\
\end{array}
$$

軸になったのは『7. 冬の花火』です。この曲はラジオ番組で「泣き曲あるある」を言い合っていたところから生まれた養殖物のエモなので、このメドレーのように既存曲の継ぎ接ぎでしんみりさせる試みには最適でした。動画サイトやサブスクで配信されておらず、イベントの円盤を買わないと聴けない曲なので、この際ほかにも趣味曲を盛り込むのを厭わないことにしました。ひとつ想定外だったのは、動画の最後が匿名ラジオの画像だとふざけてるみたいになっちゃうことです(花火の映像のフリー素材で誤魔化しました)。
そして、バンブラ初代・DX・Pの各要素を回収するため『3. ありがとう、そしていつか、またあおう』『4. SEASONS』『5. 未来予想図II』もすぐ固まりました。
次いで、『5. 未来予想図II』からの4音共通つなぎで思いついた『6. from Y to Y』が『7. 冬の花火』と奇跡的にハマったので採用。

残るイントロ・Aメロはなかなか決まりませんでした。イントロをピアノにすることは最初から決めており、尺の都合で4小節(180BPM換算)しかとれないという条件に合う曲を探し回りました。最終的に『4. SEASONS』からの連想で『駆け付けるメドレーコラボレーションR』の8:51:22 pmさんパートを思い出し、『1. 齧りかけの林檎』に白羽の矢が立ちました。OPなのにEDっぽいとネタにされる曲なのでテーマ的にもちょうどよかったですね。
Aメロの2. ミルキーウェイがけせないは、Bメロに向けて16小節で音数を増やせること、Bメロのアウフタクトの音形が『3. ありがとう、そしていつか、またあおう』と近いことから採用しました。

編曲

うまくまとまらないので箇条書きで!

  • 男女ボーカルのデュエットは当初の想定にはなかったが、『5. 未来予想図II』→『6. from Y to Y』の音域の遷移の都合でやむを得ずこうした。結果的に最後の『6. from Y to Y』と『7. 冬の花火』の重ねが聴き取りやすくなってよかった。

  • 『3. ありがとう、そしていつか、またあおう』→『4. SEASONS』で音数が減るので、サビなのに盛り下がってないか不安。ハモリとギタコをサビまで温存することで対策した。

  • 『4. SEASONS』『5. 未来予想図II』は、伴奏の多くのフレーズをバンブラ初代・DXの本家譜面から引用している。

  • ガクダンセットの↑(ドラ)にフィルタのHPを強めにかけると殆ど聞こえないが、ドラムのR(シンバル)と重ねることでこっそり余韻を付加できる。というのを初めて思いついた。

動画

デザイン・レイアウト

いろんな人の手を借りながら、前作までの積み重ねに手を加えていきました。第5弾から使っていたパート配置を第9弾で一新したのが好評だったので、それをもとにブラッシュアップしていきました。

  • 背景つけることで無骨さを緩和し、

  • 角丸・縁取りでパートの境界をわかりやすくして、

  • 楽器名とメロディ強調を見せることで注目箇所を明確化した

のが主な変更点です。いずれも個人の動画ではやったことがあったのですが、大合作では画像や文字色が多様になるので視認性の確保がネックになりました。そこに今回初参加のつよつよデザイナー・あまさんが颯爽と現れて全てを解決してくれましたとさ。めでたしめでたし。

情報表示の自動化

曲名や画像が然るべきタイミングで表示される動画は、手作業ほぼ不要・読み込んで書き出すだけで作れる仕組みを用意しています。これはあいしさんとタッグを組んでプログラミングをしました。他人と共同でこういうことをするのは初めてだったので楽しかったし、普通に有益な経験だなと思いました。
参加者は曲名やタイミングの情報を、Google スプレッドシートに入力します。このシートも、見やすさと情報処理のしやすさを兼ねる必要があるので結構ちゃんと考えて設計しました。シートの情報をAPIで取得して解析し、秒数に換算し、専用のデータ構造に格納する部分をあいしさんが実装。そのデータを受け取って、動画編集ソフト(AviUtl)に読み込むファイル(.exo)を生成する部分を私が実装しました。
上流の処理であるあいしさんのコードを確認することがあったのですが、めちゃくちゃ読みやすく整然と書かれていてビビりました。さらに、あいしさんの定義したデータ構造は、下流にいる私が扱いやすいようにという親切心に満ちていました。元々は私が過去作の知見からデータ構造を指示するはずだったものの時間がなくてできなかったので、私がどう処理するかを全て察してくれたんだと思います。

動画班の統括

そんなわけで、私たちは今作の動画に最も詳しい二人になっていたので、動画班の統括も行いました。動画班とは、各参加者用に自動生成されたファイルをもとに動画を書き出したり、参加者とやりとりして要望を反映したりする役職で、今回は12人体制でした。このメンバーには本当に助けられました。当初はこんなに大規模な企画になるとは予想できず、全部私一人でやる予定だったので。
特に思い出深いのが、ある週末の3連休です。動画班が始動して最初の週末でした。チャットでは昼間から様々な質問や情報共有がリアルタイムで交わされたり、早くも動画の初版が上がってきたり。各々は一人でパソコンに向かっているだけなのに、そこには確かに「文化祭の準備」みたいな共通の目的意識を持った連帯感が生まれていました。班のメンバーがこんなにも積極的・自律的に動いてくれたことに、かなりジーンと来てしまいました。急に担任の先生みたいなことを言ってすみません。

運営

主催のRITAさんから最初に声がかかったのは、企画の存在が告知される10日前、5月18日でした。集められたのは、過去作主催経験のあるあっとさんと--RAY--さん、動画技術面で貢献のあるあいしさんと私。この5人が本企画の運営陣として、公開までの半年をともにすることになります。

参加者募集

最初に任されたのは参加者募集のTwiPlaを作ることです。これ自体は数時間で準備できたのですが、ここでまるで自分が参加者募集の広報担当者かのような気持ちが勝手に芽生えます。それゆえ、7月に参加者募集を締め切るまでの2ヶ月間は「怖くないよ!参加してね!(意訳)」という宣伝ツイートを連発しながら、「誰か増えてないかな~~」と頻繁にTwiPlaをリロードする生活が始まりました。
このあたりで実感したのですが、大合作で主催の他に運営という立場が設けられたのは今回が初めてでした(DX時代は知らないけど)。「あなたは主催サイドですよ」というバッジが与えられたおかげで、「私、出しゃばりすぎ……?」みたいな遠慮をすることなく周知できたのは良かったと思います。(これは参加者募集に限らず、全員に通知の飛ぶ重要連絡を流すときとかも同じでした。)
そういうわけで、参加を迷い中の方へのアプローチや質問対応の窓口としても動いていました。そのおかげもあってか、ギリギリまで迷い中だった方の結構な割合が参加側にレバーを倒してくれたのはほんとに嬉しかったです。一部の方には、「完成しなかったら辞退してもいいから、とりあえず参加を!」という半ば強引な押しをしたのですが、その方も含めて参加者全員がメドレーを提出して動画に登場できたのは、いい意味で想定を裏切られました。

相談環境の整備

また、希望者がアドバイスやミス指摘を受けられる環境の整備することも提案しました。過去作ではこういう相互支援が行われている気配はなかったのですが、今回メドレー初制作の方も多かったので、動画のコメ欄が「これは……w」みたいな空気になるパートがあると居た堪れないためです。
私も自分が詳しいテーマのメドレーにはいくつか助言しましたが、そうでないメドレーまではあまり手が回りませんでした。そんな中、知らない原曲をわざわざ履修してまでアドバイスをしてくれた方もいて、本当に助かりました。
結果的には、もしこのアドバイス体制がなくても「これは……w」みたいなパートはなかったと思いますが、クオリティの向上に一役買ったのは確かだと思います。

進捗管理

今回、めちゃめちゃ順調に余裕を持って完成させることができました。これはひとえに主催の采配のおかげです。
運営が5人体制だったおかげで、進捗がやばそうな人は早期段階で目を届かせることができたし、動画班が12人もいたおかげで負担を分散できました。
チーム全体の仮動画が完成したのは、最も早いAチームで10月18日、投稿約1ヶ月前。それからミスチェック・修正にも十分に時間を割き、全チームとも公開前日までに予約投稿できました。過去作で投稿当日早朝の修羅場を見たことがある人も今回はかなり気が楽だったのではないでしょうか。
一つ予期していなかったのは、参加者を6チームに割り振って打順を考える工程です。今回の合作の規模が想定以上だったのは前述のとおりですが、この工程に限っては考えうる組み合わせが$${O(n!)}$$のオーダーで増えるのです。当初--RAY--さんにほぼ一任する想定でしたが、流石にスケジュール的に押してもおかしくない状況でした。そこに今回初参加のつよつよDJ・こうちゃさんが颯爽と現れて全てを解決してくれましたとさ。めでたしめでたし。

おわりに

自分の話をします。今回の大合作は、私がバンブラからのバタフライエフェクトで学んだことの集大成だと感じています。耳コピやアレンジ・打ち込みの小技などのバンブラに直接関係ある部分はもちろん、プログラミングや動画編集、ネット上の相手とのコミュニケーションもバンブラPきっかけで身につけました。それらをちゃんと活かして、こういう大きい企画に携われたことは本当に幸いでした。
この企画のことは半年間つねに頭の片隅にあったので、もうそれ用の脳の領域を確保しなくていいんだなというのは、ホッとするようで寂しさが大きいです。動画の公開前ですら、ようやく披露できるというワクワクよりも、半年かけて用意した持ち弾を消費してしまう喪失感のほうが勝っていたかもしれません。

若干の燃え尽きた感はありますが、今後もバンブラ含めネット上での活動は変わらずマイペースで続けていこうと思います。


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