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病気やケガで働けなくなったときに備える就業不能保険

思いがけず病気やケガによって、長期間にわたって働けなくなると、収入が減少して生活が厳しくなりかねません。

健康保険の傷病手当金、労災保険といった公的な保障がありますが、それだけでは足りないケースもあります。フリーランスや自営業などの場合は、そもそも公的な保障を十分に受けられないことが多いです。

そのような場合に備えるために「就業不能保険」があります。病気やケガで長期間働けなくなって収入が減るリスクに対して、経済的な安心を提供する保険です。
 
2021年度「生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)から引用します。
世帯主が就労不能となった場合に対する現在の経済的備えについて、「不安」と回答した割合は74.6%もあります。3年前の前回調査時の72.7%と比べて増えています。
生活障害・就業不能保障保険・生活障害・就業不能保障特約の加入率は18.4%で、前回調査時の12.0%から1.5倍も増えています。
 
就業不能保険のニーズは高まっているといえるのです。


1 就業不能保険のメリットとデメリット


(1)メリット


①経済的安心が得られる
病気やケガで働けなくなった場合に給付金を受け取れます。収入減少による生活費の心配を軽減することができます。
 
②公的な保障の不足をカバーできる
傷病手当金などだけでは不足する場合、就業不能保険を活用できます。
フリーランスや自営業者は、公的医療保険などの保障が限られているため、就業不能保険に加入するメリットは大きいといえます。
 
③選択肢の幅がある
商品ごとに保障内容が異なるため、自分に合ったプランを選べます。

(2)デメリット


①支払対象外期間がある
給付金を受け取るためには一定の支払対象外期間があることに注意する必要があります。
 
②保険料の支払い負担がある
所定の保険料を支払わなければならないので、過度に負担にならないか考慮する必要があります。
なお、給付金の支払事由に該当した場合、以後の保険料を免除する商品もあります。

2 就業不能保険を選ぶ際のポイント・注意点


就業不能保険は、商品ごとに保障内容や受け取れる期間が異なるため、自分の希望に合ったものを選ぶことが大切です。
自分のライフスタイルやニーズをきちんと把握し、個々の状況に合ったプランを検討しましょう。

(1)加入条件


就業不能保険は、各々の保険会社が定める一定の条件を満たす必要があります。
ひとつは、職業や年収です。警察官などリスクが高い職業など、年収が低いとか定収入がないといった場合は、条件が厳しくなる可能性があります。
もうひとつは、健康状態です。既往症があったり現在の健康状態に問題があったりする場合は条件が厳しくなる可能性があります。

(2)保険期間


今後、自分が働く予定の期間に合わせて設定できます。
 
①年満期
10年、15年、20年など一定の年数を保険期間とします。
 
②歳満期
55歳、60歳、65歳、70歳までなど、契約当初に定めた年齢までを保険期間とします。

(3)支払対象外期間


契約当初から一定期間は給付を受け取れないので、注意が必要です。この期間は保険会社によって異なり、60日や180日などが多いです。

(4)給付金の受け取り


病気やケガで所定の就業不能状態が所定の期間継続したときに受けることができます。一時金や年金、月払いの給付金など商品によってまちまちです。
生存している限りあるいは所定の年齢まで受け取れるもの、一定期間(6カ月、1年など)受け取れるものなどさまざまです。
 
就業不能保険で受け取れる給付金の額を設定できる範囲は商品によって異なります。たとえば、月額10万円から50万円まで5万円単位で選べる商品があります。
ただし、収入や所得に応じて設定できる上限があります。
また、保障額が高額になると保険料も高くなってしまうので注意が必要です。

(5)対象になる病気やケガ


保障対象となる就業不能状態とはどんな状態かは、保険会社や商品によりまちまちです。商品を選ぶ際のチェックポイントになります。
たとえば、正常な妊娠や出産による場合は、就業不能保険の対象外となります。また、精神疾患による場合も保険会社ごとに異なるため確認が必要です。
 
さらに、特定の疾病に絞って保障する商品もあります。疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中・肝硬変・慢性腎不全)で所定期間継続して入院・在宅療養した場合を対象とするものなどです。
医療保険(特約)などほかの保障と組み合わせている商品もあります。

3 給付金を受けられる場合、受けられない場合


給付金を受け取るための条件は保険会社によって異なります。
一般的な保険会社の条件をもとに、給付金を受けられるケースと受けられないケースを示します。
 

(1)給付金を受けられるケース


①病気やケガの治療のために国内の病院等に入院している状態
②医師の指示により自宅等で在宅療養している状態
③障害等級1級または2級に認定された状態

 
精神疾患による就業不能状態も一部の商品で保障されていますが、保険会社ごとに異なるため確認が必要です。
 

(2)給付金を受けられないケース


①支払対象外期間内に就業不能状態から回復した場合
②自覚症状のみ(医学的他覚所見なし)の場合
③就業不能状態から回復後に復職できない場合
④契約者の故意または重大な過失、犯罪行為などによる事故、自然災害や紛争、戦争などが原因となるケガによる就業不能状態

 
なお、精神疾患による就業不能状態は保障対象外とする商品が多いので注意が必要です。

4 就業不能保険と所得補償保険との相違点


就業不能保険はおもに生命保険会社が、所得補償保険はおもに損害保険会社が取り扱っています。
どちらも病気やケガによる収入減少に備える保険ですが、いくつか違いがあります。

(1)保険期間


就業不能保険は、60歳から70歳満了などの長期にわたって保障します。
所得補償保険は、1年から5年などの短期的な保障をします。保険期間が満了すれば就業不能状態が継続していても保障を受けられなくなります。保険期間満了後も保証が必要な場合は更新することになります。

(2)給付金の金額


就業不能保険は、職業や年収に応じて設定され、月額10万円から50万円の範囲になることが多いです。
所得補償保険は、平均所得額の平均の40%~80%程度が上限となります。

(3)保険料


就業不能保険は、保険期間中は一定額です。
所得補償保険は、更新するごとに保険料が上がります。
 


 
病気やケガで働けなくなり収入が減少する場合は、まずは公的な保障あるいは貯蓄等で補てんできるかを検討する必要があります。

勤務者の場合は、健康保険の傷病手当金を、給与の3分の2の額ですが、1年6カ月受け取ることができます。しかし、就業不能状態が長期間になれば、不足するケースもありえます。
フリーランスや自営業者の場合は、傷病手当金を受け取れないため、保険でのカバーを検討しておく必要性が高くなります。
 
いずれも、支払対象外期間内に回復するケースもあること、保険料の支払負担といった考慮も必要です。
就業不能保険に加入するかどうかは、個別の事情を十分に踏まえて慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

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