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京都府立植物園の開発ってどうなってるの?

美濃やまびと

昨年4月、Twitterで「京都府立植物園」がトレンド入りした。その時に植物園の再開発を知った人も多かったのではないだろうか。かくいう私もその中のひとりだ。開発反対の署名には4日間で1万5千人以上が賛同し、話題となった。

それから1年以上経ったいま、果たして京都府立植物園の開発はどうなったのか?


結論から言うと開発計画は止まっていない。それどころか京都府知事は北山エリア再開発のために新部局『文化施設政策監』を設置し、中身のない説明を繰り返しながら着々と計画を進行している。

植物園のための有識者懇話会もやっているし、ちゃんと意見を聞いてくれてるのでは?と思う人もいるかもしれない。
でも残念ながら、懇話会は “やってる感” をだすためのポーズでしかない。


なぜそう言えるのか。

答えは京都府立植物園が開発されることになったその理由の中にある。

ここで植物園開発の理由を京都府財政の問題だと思っている人には、まず下のリンク先にある北山エリア再開発の試算を見てほしい↓

北山エリア整備事業手法等検討業務 報告書

旧総合資料館跡地にシアターコンプレックスを建て、京都府立大学の敷地に1万人を収容できる規模のアリーナを建て、植物園の温室は移設してイチから新しく建設することを検討している。

…… 見ての通り、資料によればどの施設もランニング収支は赤字だ。

突出して建設費のかかるアリーナは初期は約150億と言っていたが、資材の高騰や防音対策などの理由ですでに約170億まで値上がりしている。

ちなみにこれは開発費の一部でしかない。アリーナはもう一つサブアリーナを建設する予定だし、京都府がMICE誘致と言っているからにはコンベンションセンターも建設するだろう。
そしてこれまでの京都府内での大規模公共事業の推移をみれば、建設費はこれからもあれこれ理由をつけて間違いなく増えていく。まして商業化=儲かるなどという図式をいまの日本の状況において根拠なく信じるのはあまりにも楽観的だ。

仮に財政の問題であるならば、この開発は決して失敗の許されない大事業ということになる。では再開発による税収増の根拠とは?いったいどれほど具体性のある数字に基づいているのか?

北山エリアの住民説明会で京都府は、住民からの最終的な開発の金額についての質問に対し「まだ額が出ていない」と言い放った。予算の上限すら明らかにしていないのだ。そして京都府知事が「財政の問題で」と言ったことは当然だがこれまでに一度もない。
植物園の維持費も出せないほど困窮しているのであればそもそもこんな再開発をやれるはずがないのだから。


ならば、京都府立植物園が開発されようとしている理由とは…?

それは植物園の隣、京都府立大学の敷地に建設しようとしているアリーナの資料の中に非常にシンプルに書いてある。

「体育館単体での収益確保は難しく、植物園含む事業検討が必要」

『北山エリアにおけるアリーナ的要素を持った体育施設の整備可能性調査業務 最終報告資料
(概要版)』7ページ「事業者ヒアリングの結果」地域ポテンシャル 文中よ

この資料の中での“体育館”はアリーナのことを指している。

つまりアリーナの収益は赤字の可能性が高い、利益をだすためには植物園も一体で事業をしなければならない、と言っているのだ。

やはり財政の問題では、と思いたくなるかもしれないが、実はアリーナを建設しようとしている場所・京都府立大学の学生にとって1万人も観客を収容できるようないわゆる“商業アリーナ”は必要ない。彼らに必要なのは普通の“体育館”だ。
必要ないのになぜ建設しようとしているかについては改めて詳しく述べたいので一旦ここでの説明は省くが、つまり『学生にとっては必要ないアリーナを学内に建設したいが、赤字の可能性が高いので儲けを出すために植物園も商業開発したい』という耳を疑いたくなるような理由なのである。

そしてここでアリーナの収益確保にこだわっているのは府民のためではない。アリーナ事業に参入する企業の儲けのためだ。それは先ほどと同じ資料の「事業者ヒアリングの結果」の最後の一文からうかがい知れる。

「各社スキームによって得意・不得意はあるが、総じて予算次第で対応可能とのこと。更に、植物園を含めた検討に興味がある事業者が多くみられた」

『北山エリアにおけるアリーナ的要素を持った体育施設の整備可能性調査業務 最終報告資料
(概要版)』7ページ「事業者ヒアリングの結果」官民連携スキーム 文中より

北山エリア整備基本計画で物議を醸したテーマパーク感溢れるあのイメージ図は、企業からの要望をそのまま反映した結果だろう。

そりゃバックヤードを追いやって商業施設を建てたり芝生広場に野外ステージを置いたりバラ園のなかでイベントをやろうとしたりもするよな、と思う。
そうでもしなければ北山エリアにおいてのアリーナは企業にとって魅力のある事業にならないのだ。

京都府立植物園の再開発は本来の役割としての“植物園の魅力”を向上させるためではなく、アリーナにやってくる人々にエンタメを提供してお金を落とさせるための魔改造なのである。


そんなわけで「アリーナの収益を確保する」という使命を勝手に背負わされた植物園は、アリーナが建設される限り収奪されることが決まっている。
しかし有識者懇話会は植物園とアリーナで別々に開催され、関連なんてまるでないフリを決め込んでいるのだ。


合計で14万筆以上もの署名も無視して、京都府立植物園は商業開発されようとしている。



 ———  いったいどうすればいいのか?


再開発の実態を知る人が一人でも多く増えていくことしかない。そしてそのひとりひとりが何かの小さな行動を起こしていくことでしか変えられない。
14万筆の署名がただの数字ではなく人々の意志の現れだということを証明していくこと以外に、計画を止める方法はないのだと思う。

それは別の言い方をすれば、動く人が増えるならば止められる可能性があるということだ。

私は署名の団体に所属しておらず、住んでいる場所も植物園に近いわけではない。ある意味北山からは物理的な距離があるのだが、そんな少し外側からの視点で「京都府立植物園の開発ってどうなってるの?」の答えになるような情報を発信していきたいと思う。

それが、誰かのアクションのきっかけになることを願って。