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路上生活者をあざ笑う若者たち

数日前から、若者がホームレスの方に「食べ物を買ってあげる」といってコンビニに同行し、レジの前で置き去りにして逃げ出し、困惑するその姿を撮影して喜ぶという動画が拡散され批判が集まっています。
この騒動を見て、アランドロン主演の映画「太陽がいっぱい」を思い起こしました。

アランドロン演じる主人公は貧乏な芸術家ですが、ある日、お金持ちで嫌な性格の友人に船遊びに誘われます。小さなヨットに乗り移った時に、ボンボンの友人はアランドロンの乗ったボートを海に残してクルーザーを発進させ、嘲笑います。話題になっている動画は、まさにこのシーンと同じです。そしてアランドロン扮する貧乏な青年は、芸術界における階級への復讐を目論みます。
高度経済成長期以降の日本では、貧富の差はあれど、社会には階級といえるほどのものは存在しないと思われてきました。それゆえ、生活に困窮する人を「別次元の人」と捉え蔑視するようなこともなくなったかに見えました。
しかし所得格差の拡大が人々から希望を奪い、同時に、自分より「下層」だと感じる人には極めて冷徹になれてしまうようです。今回の動画には、そのような我が国のメンタリティーが現れているように思えてなりません。
太陽がいっぱいでのアランドロンは、階級社会に苦しむ大衆の象徴ですが、その青年が自分を蔑む無慈悲な富裕層に復讐を遂げます。
日本をはじめ各国で所得格差の拡大に悩んでいますが、この問題を放置したままにしておくと、貧困に苦しむ人々の怒りがさらに膨らみ、暴発してしまうように感じます。

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