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わたしにとっての金木犀


わたしは金木犀の香りが大好きだ。なんてったって、夏が終わりかけの肌寒くなってきたほんの少しの時期にだけ顔を出して、風と一緒にふわっと香ってくるあの匂いが堪らない。そして、花が咲いている時にずっと匂いが続くのではなく、ふとした瞬間に優しい匂いが鼻に入ってくるっていうのも堪らないのが金木犀の良いところだと思っている。

金木犀って凄くいい匂いだけど気づいたら消えているから、少しでも多く匂いを嗅ぎたくてどこへ行くにも、犬みたいにクンクンしながら金木犀を追うように歩いてしまう。今わたしが街に出るということは、金木犀の香りを楽しむためと言っても過言ではない気がする。求められていないのに追うなんてなんだか都合のいい女になってる気分だ。


それはさておき,



金木犀の香りがする季節になると中学生のことを思い出す。その理由が,中学の時の大好きだった先生が今と同じ時期くらいの時に

「金木犀って知ってる?よく街中を歩いているといい匂いが最近しない?」

とホームルームの時に話し始めたのがきっかけ。確かに下校中とかにいい匂いがするのは分かっていたが、そこらに植えてある花の匂いだったとは思っていなかった。
先生は話を続けて

「この時期になると金木犀が咲くんだけど,金木犀の匂いを嗅ぐと昔のことをふと思い出すんだよな。」

と話していた。先生はこの時期になると今までの思い出が頭に浮かぶと言っていた。この時の私はそうなんだ〜。くらいにしか思っていなかった。

でも、、、


この文を見ればわかる通り,今大学3年生の私は金木犀の香りを嗅ぐと、必ず中学の思い出がポンポンと頭に浮かんでくる。
先生がお花が好きで教室中がお花だらけだったこと,クラス順位が学年でビリだったから皆で逆手でご飯を食べたこと,掃除がちゃんと出来ていなかったら10分間空気椅子をやらされたこと,こんなくだらない出来事を金木犀は思い出してくれる。



私にとっての金木犀とは,自分にとって大切だったけど、歳を重ねるごとに忘れてしまうような存在の、小さな思い出まで呼び起こしてくれるアルバムのかけらとなるお花だと思っている。
この時期にしか思い浮かばない思い出だから、金木犀の香りがしなくなったら忘れるのだろうけど,また金木犀の香りがする時期になったら思い出を振り返って楽しみたいと思う。


もしこれを読む人がいるのであれば、金木犀の香りがした時にふと自分の楽しかった思い出を振り返ってみてほしい。金木犀の香りがもっと好きになるかもしれない,、

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