人生は重要な選択肢の連続

これはもう10年以上前のお話になります。

その日わたくしは朝いつものように起きると何故か一隻のボートの中に居ました。

辺りは一面水面で霧が濃く遠くを見渡しても見える物さえありません。

わたくしの他にも寝てる人が居ました。

全員で4人。それぞれお互い知らない人ばかりが乗り合わせています。

まずは自己紹介。

わたくしは当時学生でしたのでそのままお伝え致しました。

次に20代後半の会社員の方。

そして40代の経営者の方。

最後に80代で一人暮らししているおじいちゃん。

不思議なことに皆んなに前日の記憶はなくなぜ自分がボートに乗ってここに居るのか誰もわかりません。

ボートには布袋があり中にはそれなりの量の干し肉が入っていました。まるでこの状況が想定されてたかのような、それとも誰かに仕組まれてたかのような物資です。

40代の人は言いました。まずはこの食糧をそれぞれに分けておこうと

20代の人は言いました。保管場所は一箇所に決めておいて食べる時は皆んな揃って食べるようにしようと

わたくしはおじいちゃんを見て思いました。もしこのまま漂流生活が続くとわたくしとおじいちゃんはきっと他の人達より食べる量が少ないであろう、最初に同じ量を分けてしまうと最初に食べきった人が残った食料を巡り争いの種になりかねないと。

わたくしは一箇所に保管して皆んなで揃って食べる方に賛成致しました。

おじいちゃんは皆んなで揃って食べる案に賛成で1日ごとに食べる量を決め分けて一箇所に保管するのがいいのではないかと言いました。

話し合った結果おじいちゃんの意見でまとまりました。

飲み水は漂流してるのが湖だったため汲んでおけばなんとかなりました。

最初は知らない人同士で意見の違いもあってぎこちなさもありましたが、時間が経つとお互いのことを話したりして親睦は深まりました。

住んでる場所は皆んなそれぞれ遠く離れていてやはりなんの接点もありません。

おじいちゃんは子供が結婚して家を出てしまい、おばあちゃんも亡くしてずっと一人で暮らしてるとのこと。

わたくしがもっとお近くに住んでたらお伺い出来たのにと話すとおじいちゃんは寂しそうに言いました。

いいんだよ、もう慣れてるしお迎えも近いからねえと

わたくしは自分の言葉のチョイスをミスったのではないかと思いました。この場ではリアルな意見は抜きにして帰ったらお伺いに行きますねと言ってあげるのが正解だったのかなと、おじいちゃんの寂しそうな顔を見て思いました。

何日か経ち食料も残すところ後1日分ほどになりました。

誰もこっそり食べたりせずちゃんと決められた分のお食事を守ってこれまでやってこれました。

どうしよう、もう食べ物がないな

頑張って魚を捕まえるしかないが霧が濃くて水の中が見えないし、これまで魚が泳いでるの見た事ないな

わたくし今日の食べるお食事は半分でいいので残りは皆様の明日の分にしましょう?

おじいちゃんも言いました。儂は一口で大丈夫だから残りは明日の皆んなの分に回してくれと

20代の男性は言いました。いや僕も今日の分を少なくして明日の分に回します。

40代の男性も言いました。俺もそうしよう!これまで協力してやってきたんだから最後まで皆んなで協力しよう!

一隻の狭いボート内では強い一体感が芽生えてました。

帰ったらうんと美味しいもの食べたいな〜

君と俺の住んでる場所は会いに行けない距離ではないから帰れたら一緒に何か食べようじゃないか!

いいですね〜!

船の上ではこんな状況でも明るく希望を持った会話で弾みました。

途端にボートは眩しい光に包まれ、光に目が慣れてくると水面に女の人が立っていました。

私は女神、よくここまで争わずお互いを高め合い生き抜いてきましたね。1つずつ願いを叶えましょう。

20代の男性は言いました。僕は家に帰りたい!すぐにでも彼女に会いたい!

わかりました。あなたを彼女と過ごしていたここへ来る前日の時間軸に戻しましょう。

20代の男性は光に包まれながら体が消えかかりました。最後にこっちを振り向いて言いました。

ここでの皆さんとの生活は忘れません、ありがとうございました!

次はあなたの番ですと40代の男性に女神が問います。

男性は言いました。

俺も妻と子供が待つ家にすぐにでも帰りたい!

わかりました。あなたを家族で過ごしてたここへ来る前日の時間軸に戻しましょう。

男性は光に包まれながらこっちを向いて言いました。

お爺さん、お嬢ちゃん、楽しかったよ、君達と一緒で良かった、ありがとう!

次はあなたの番ですと女神がわたくしに問います。

わたくしも家族やお友達と過ごしてた生活に今すぐ帰りたいです!

わかりました。あなたを学校で過ごしてたここへ来る前日の時間軸に戻しましょう。

わたくしは光に包まれながらおじいちゃんに言いました。

おじいちゃん今までありがとう、おかげで寂しくも怖くもなかったよ、おじいちゃんも帰っても元気で居てね。

次はあなたの番ですと女神はおじいさんに問います。

おじいさんは言いました。

儂は帰っても誰も待つ者が居ない、それよりもここで皆んなと居る生活が楽しかった。もうあの者達に会えないのは寂しい、またここで皆んなと一緒に居たい。

わかりました。では帰った者達を今のこの時間軸に呼び戻しましょう。

学校に居たわたくしは瞬きをした次の瞬間、ボートの上に居ました。そこには沢山の干し肉が入った布袋を持ったおじいちゃんが立っていて、満遍の笑顔で言いました。

「おかえり」


本当はタイトル通りこのお話に何個も選択肢を出して選んだ選択の結果に基づいたお話を書くつもりでしたが、えす実特有のエグみが出てしまうのでまろやかに簡潔に致しましたε-(´∀`; ) ふぅ

それでは ごきげんようଘ( ੭ ॑꒳ ॑)੭*.° えす実

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