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「ブラックカースト」とは? 総務部がブラックカーストに君臨するメカニズム

ブラックカーストとは何か

ブラックカーストとは何か。
これは私が考えた言葉で、組織の中の忙しさ争いを表す言葉です。

スクールカーストのように無意識に生まれる上下関係で、忙しい部署の人が、そうでない部署に対して、自分の方がえらい感じがするというものです。

言い換えると「私はあなたと違って忙しいんです」と言ってマウントを取れること自体が、ブラックカーストの社会にいる証拠です。

今回の話は、特に市役所の企画課とか財政課とかを念頭にしたものですが、市役所に限らず民間企業でも、支社よりも本社の方が忙しくなりやすかったり、本社の中でも総務部の方が忙しくなりやすかったりすると思います。

国家公務員なら、ハローワークで働く職員よりも都道府県の県庁所在地にある労働局で働く職員の方がが忙しくなりやすいですし、都道府県ごとの労働局よりも、やっぱり霞が関の厚生労働省の方が忙しくなりやすい状況にあります。

つまり、「組織の中枢になるほど忙しくなりやすい」と言うことです。

そのメカニズムを心理的な側面から説明します。

この記事の主役は総務部

これを読んでいる方は、確率的に言うと総務部以外の人が多いと思います。

では、総務部の人にどういうイメージがありますか?

「いつも忙しそう?」

と言うのもあるかもしれませんが、どちらかと言うと

「余計な仕事を頼んでくる」

「細かいこと言ってくる」

「助けてくれない」

そういった、ネガティブな気持ちを抱いたことのある人が多いと思います。

でも総務部の人って実は普通の人です。

偉そうにしたくてしてるわけじゃなくて、例えばこれまで別の部署にいた人が人事異動に総務部に異動したり、そういう人が半分以上です。

性格が悪くて言っているわけではなく、仕事の性質上そうなってしまうのです。

それは、総務部の仕事に特徴があるからです。
総務部って基本的には、他の部署からデータをもらわないと仕事ができません。

財政課なら、「予算の根拠資料を出してください」
人事課なら、「先月の残業時間を提出してください」
企画課なら、「政策の進捗状況を教えてください」

他の部署からデータを集めて仕事をするのが総務部です。

✅ 総務部の人は必ずしもサイコパスじゃなくて普通の人
✅ 他の人からデータを貰って仕事する

本題に入る前にこの2点を抑えてください。

なぜ、総務部は仕事が増え続けるのか?

なぜ、総務部は仕事が増え続けるのか?
原因は三つ。

1.実際に業務が多くなりやすい

総務部とは、社長直々に頼まれやすい部署です。

市町村の場合、市長が変わるたびに
「何々推進室を作ります」
「何々戦略策定します」
と言うのが発生し、そういうのはだいたい総務部の仕事です。
だから、実際に業務が増えやすいのです。

2.「やった方がいいけどやってない仕事」が無限にある

総務部の仕事の特性上、「やった方がいいけどやってない仕事」が無限にあります。
だから、やろうとすればいくらでも仕事を増やせてしまう余地があるのです。

例えば人事課の場合、究極を言うと給料さえ払ってくれれば、絶対にやらなきゃいけない仕事は多くありません。
ですが実際には、例えば人材育成計画作ったり、人事評価を管理したり、休暇の取得状況を把握したり、サービス残業がないかちゃんとチェックしたり、残業が多い人に産業医の面接の声をかけたり、・・・。

やろうとすればいくらでも仕事があります。

また、「昔はやってなかったけど今やってる仕事」が多いのも特徴です。

他の部署にもそういった側面はあるかもしれませんが、現場に近い部署ほど、やらなければいけない仕事はすでに行っています。

ですが、総務部は、「やらなきゃいけないけど、やらなくてもなんとかなる」という性質があります。

そういった背景から、総務部は、やろうとすればいくらでも仕事を増やす余地があります。

3.他の部署にお願いする心理が原因

総務部では、他の部署に作業をお願いすることが多いです。
これが「自分が忙しくしなきゃいけない」と言う気持ちを生み出している原因になっています。

総務部では普段から他の部署との間で、
他の部署の人から

「自分の方が忙しい」

と言われています。そこの競り合いがあり、負けたくなくて張り合ってしまったり、逆に、忙しい人に頼むのが申し訳ないと思ってしまいます。

そういう感情から、無意識に自らを忙しい状態にしようとしてしまうという心理が働きます。

この記事を読んでいるあなた、次の4月で自分が財政課に異動したらどうしますか?

「自分は偉そうな態度とらないようにしよう」とか思うのではないでしょうか。

でも、いざその立場になると、他の人にお願いする場面が出てきます。

他の職員からデータをもらって仕事をするのが総務部ですから、
例えば

「予算の根拠資料を出してください」

これは財政課としては普通のことです。

しかし、他の部署からしてみれば、普段の仕事があって
「忙しいのに、なんでやらなきゃいけない」

と思ってしまいます。これも当然のことです。

それに対して財政課の人も、それが分かっててお願いしていますので、よほど肝が据わった人とかでない限り、

「ちょっと悪いな」

みたいに思うはずです。

そこがポイントです。


やっぱり職場は「忙しい人が優位にある」みたいな空気が、伝統的な職場ほどあります。

これがブラックカーストの根本的な原因です。

「忙しくない人が忙しい人にお願いするのは申し訳ない」

そういう空気がある以上、その組織の取りまとめをする総務部はブラックカーストの空気の影響を一番受けやすいと言えます。

他の部署との間で張り合う場面が多く、「うちの部署の方が忙しい」と言われる場面に遭遇してしまうことが多いので、例えば、他の部署にお願いした時に

「忙しいんだからお前らに言われる筋合いはない」

みたいなことを言われたり、言葉で言わなくても表情で「忙しいんだけど」と言うのは分かります。

「うちの課は人数が少ない」といった愚痴も日常的に言われるのが総務部。

そういうのを積み重ねていくと、いやでも認識がブラックカーストに染まってしまいます。

つまり、

「自分も忙しくなければ太刀打ちできない!!」

「忙しい人間にならないと他の部署に太刀打ちできない」

そう言う思いが、無意識のうちに積み重ねて植え付けられていくのです。

自分を忙しい人間に、自らしてしまい、そして、そう思うだけでなくて、自分で実際に仕事を増やしてしまって忙しい人間になってしまうのです。

つまり、

✅ 総務部は他の部署にお願いする機会が多い
✅ 「うちは忙しいのに」とか常に言われる
✅ 相手よりも忙しい状態にすることによって自分を納得させる

それが無意識に起きています。

どうやって自分の仕事を増やすのか?

ここまでは気持ちの面を説明してきましたが、では、どうして実際に仕事が増えてしまうのでしょうか。

やはり、「やることいくらでもある」と言うのがポイント。

私の経験を話します。

企画課にいたとき、私は総合計画の進捗状況調査を担当していました。

その時に「こんな忙しい時期に」と言われたりしました。

私も未熟だったので、張り合ってしまい、「こっちだって忙しいんです」って言ってしまったりもしました。

そうすると、忙しいと言っておきながら定時で帰るわけにはいかないのです。

何をしていたかと言うと、

夜遅くまで残って総合計画の進捗状況をグラフにしてみたりとか、進捗状況の分類ごとの傾向を分析したり、

言ってみれば、やらなくていいことをやっていました

その時は必要だと思って一生懸命やっていましたが、今思えば

「忙しくて総合計画どころじゃない」と言われたことに腹が立って

「自分の方が忙しいんだ」思いたくて、

「自分の方が忙しいんだ」っていう気持ちと、実際の状況一致させるために残業していたのだと思います。

これは、他の人にアピールするというより、自分に言い聞かせるため、

「忙しいんだから、他の人から「俺の方が忙しい」って言われても気にする必要はないんだ」と。

そう思いたくてがむしゃらに残業してたんだと思います。

ブラックカーストから離れよう

総務部は他の部署にお願いする機会が多いです。
そうするたびにに「ブラックカースト争い」。

「うちはお前らより忙しいから」
「いやいや、うちの方が忙しいですよ!」

これを繰り返していてもしょうがありません。

とはいえ、メンタル強い人だったら「必要な仕事なんだから、相手にお願いして当然」と思えるかもしれないですし、相手にお願いしたら、自分は定時で帰るっていうこともできるかもしれません。

それができる人は良いですが、(私も企画課と財政課の累計で6〜7年目くらいでそういう境地に達しましたが)、普通はそれができなくて、自分を納得させるために残業してしまうと思います。

ブラックカーストの根本の原因は

「忙しくなきゃいけない」

そういう誤った認識です。

「忙しい人が評価されるべき」だとか、
「忙しくない人はずるい」、

そう思うことがそもそも間違っています。

逆に普段から全員が忙しかったら組織は回リません。全員が毎日フル稼働していたら災害の時も対応できないですし、例えば療養休暇が出た部署に他の部署から職員を異動させるとかもできません。

「忙しいことが正義」という考えを捨てましょう!

忙しい状況の時って客観的に自分を見ること難しいかもしれません。ですが、ここまで読んでくださった方は、ブラックカーストという概念を理解しました!

ブラックカースト争いを一歩引いて、巻き込まれないようにしましょう!

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