見出し画像

零龍ギャスカ 構築論&プレイング解説

※全編無料で読めます(有料部分は没ネタ、独り言など)

◇はじめに

こんにちは、minichargerと申します。

この度私が書いた記事は、1月の半ばよりDMvault大会で使用してきた「零龍ギャスカ」というデッキタイプの構築とプレイングについてのものです。

デッキ自体は何ら珍しいものではなく、すでに多くのプレイヤーが各種大会で結果を残してきたかと思いますが、その構築の細かい部分は人によって様々であり、ことプレイングに関しては、vault大会を見る限り高い水準にあるプレイヤーは少ないと思われます。

そこで今回は、私なりに構築とプレイングについての考えを整理し、あるいは一歩引いた視点から精査し、多くの方に共有していただけるようそれらを記事としてまとめることとしました。

【プレイング論】では主に零龍卍誕に向けた動きと卍誕のタイミングについて、【構築論】では主に零龍卍誕の安定性、確実性を中心的なテーマとした各カードの評価について説明しています。

無料で公開しているのであまり実績をアピールする必要もないのですが、ふと振り返ってみたところ、1月の半ばから2月の終わりにかけて、それと4月に入ってからの2回、合計21回ほどvault大会に零龍ギャスカで出場し、そのうち優勝が2回、準優勝が1回、全体で35勝19敗の勝率65%となっていました。まずまずといったところでしょうか。

墓地メタが刺さりやすいことを除いては、アグロの帝王とでも呼べるような速さ、そしてアグロミラーでの高い性能を持つ、底知れずハイパワーなデッキであり、現在、そしてこれからの環境においても、折々に存在感を発揮していくことになるでしょう。

では、どうぞ。

【プレイング論】

 「零龍ギャスカなんてとっとと零龍卍誕して殴るだけの簡単なデッキじゃん」と思っている人が中にはいるかもしれないが、実際のところはそうでもない。卍誕できるタイミングが来たからといって必ずしもすぐに卍誕するべきとは限らないし、卍誕したらしたで攻撃せずそのまま1ターン待つことだってある。そもそも零龍卍誕するためのルートだってすぐに最適なものを見つけられるとは限らない。

 ただし逆に、難しそうなデッキだからといって初めから敬遠する必要はまったくない。ある程度プレイングに幅があるというだけで、相手のデッキとの駆け引きはほとんど必要とせず、パズルのように自分で試合を組み立てて攻め込むことができるため、慣れてしまえば非常にシステマチックなデッキに感じられるだろう。
 そうした零龍ギャスカの奥深さを味わいながら、実戦で適切なプレイングを導き出す力を身に付けてもらうことがこの記事の主な目的である。

 なお、本記事ではデッキ構築を論じる際に、確率を用いた定量的な評価方法を試みており、分量が多くなったためプレイングの話題よりも後ろに配置した。構築の中身について先に軽く知っておきたい方は、『サンプルリスト』や『各カード比較』以降を眺めておくとよいだろう。

・詰め零龍ギャスカ

 あなたが零龍ギャスカを使っていて、初期手札が次の5枚だった場合、先攻1ターン目にどんな動きをとるだろうか。

詰めギャス

(Deck Maker( https://gachi-matome.com/deckmaker/ )より作成)

 構築は下の画像のようなものを想定してほしい。

ギャスカリスト1-1

 もちろん、相手が墓地を利用するデッキかどうか、クローチェフオーコを積んでいるかどうか、などを考慮してプレイが変わることもあるだろうが、そういった要素は深く考えず、漠然と3キル(以内)を目指す方針で取り組んでもらいたい。

 3ターン目までの道すじは思い描けただろうか。

 結論から言ってしまうと、正解といえるプレイは、
a, ザンバリーでザロストを落とし、次のターンにブラッディクロス、ダースシスK
b, ザンバリーとダースシスKを使用し、ザロストとブラッディクロス(またはラピスラズリ)を墓地へ

 のどちらかである。

 まずaについて説明する。
1t ラピスラズリをマナチャージ、ザンバリーを召喚してザロストを墓地
   へ
2t ザロストの効果を解決し、復活の儀を解決
   マナチャージなし、ブラッディクロス
   ザロストを犠牲にダースシスKを召喚(ここで墓地の儀を達成)
   ターン終了時に手札の儀を解決
3t 墓地に落ちたステニャンコ、ジエンデザーク、ドレッドブラッドを利
   用して破壊の儀を解決、零龍卍誕
3t開始時までに初期手札以外のカードを7枚墓地に送れるので、破壊の儀を達成できるだけのパーツが揃う確率は約75%である(墓地の儀による相手のクリーチャーの巻き込みや、手札の儀で出てくるオーマ、ダラクまで考慮すればもう少し高い)。さらにその大半は召喚酔いしていないクリーチャーを零龍の横に2体以上残せる。
 よって3ターンで零龍卍誕することを意識するならこの選択が最善だろう。

 なお、1ターン目にザンバリーではなくブラッディクロスを使ってしまうと、手札のザロストを使えるターンが遅れてしまい、3t開始の前に復活の儀を達成できないことがある(3t開始時に参照できる墓地の枚数が2枚減ってしまう)ので、そのプレイは適切ではない。適切、というか結果としてよかったといえるのは、1ターン目にクリーチャーを召喚してくる相手に対してブラッディクロスでビックリーノを落とした場合くらいだろう。

 しかしながら、以上のようなaの動きだと、破壊の儀が達成できなかった場合にかなりもたつくことになるので、それを避けるためにbの動きを選択することも考えられる。

 bの場合でも、3t開始時までに初期手札以外から新たに肥やせる墓地は4枚以上あって、上から引いたブラッディクロスやダースシスKも破壊の儀の達成に役立つことがあるので、ある程度の確率で零龍卍誕することはできる。(破壊の儀さえ達成できれば、その効果でブラッディクロスやダースシスKを墓地から回収して墓地の儀も達成できる)
 また、ダースシスKの効果で山札から墓地に落とした1枚がビックリーノやダースシスKだった場合や、手札の儀でドーピードープをめくった場合は受けのないデッキに対して3キルが可能。最悪、卍誕せずに刻んでいって4キルを狙うことになってもaよりはそれを通しやすいだろう。
 総じて、シールドを半端に割ることのリスクが小さく、できればビックリーノも打点として計上しやすいようなデッキが相手であれば、bの動きも間違っていないといえる。

---

 いかがだっただろうか。本来なら1tブラッディクロス、2tラピスラズリのような動きをすることも多いのだが、今回のようにラピスラズリを使わなくても手札を吐ききれるときはだいたい御役御免となる。

 手札の内容によっては1ターン目からゲームの終わりまでを見据えた慎重なプレイが必要になる、そういった意味で”詰め”零龍ギャスカ問題とした。

・殴るか、待つか

 前の詰め零龍ギャスカ問題では、零龍卍誕までの手順や、卍誕できなかった場合の動きについて考えた。

 では、いざ零龍卍誕の条件を満たしたときは、そのまま卍誕してすぐに攻撃していけばよいのだろうか。

 こんな状況を考えてみてほしい。こちらの先攻3ターン目、盤面には卍誕した零龍、墓地から出したばかりのドレッドブラッドと、破壊の儀の回収から零龍をコストに出したダースシスKが2体。このターン中に攻撃できるのは零龍だけだ。
 対する相手は4cドッカンデイヤー、2ターン目にブーストを決めてマナは3枚、すでに4色揃っているとしよう。

 ここで零龍の5点を入れに行ってしまうと、相手は受けのトリガーを使う必要がないから、フェアリーライフを使ったとしても手札は9枚、次のターンに5マナでデイヤーを出せば捨てる手札は8枚になる。マリゴルドからバライフや追加のデイヤーを呼べることまで考えれば、クリスマを使って7マナに到達し、そのままループに入られてしまう可能性は高いだろう。
 もちろん、相手にデイヤーを引かれていなかったり、ブーストを踏まなかったりすればターンが返ってくることもあるだろうが、大半の構築にはバライフやジューサーも4枚近く採用されており、ブーストを2枚踏んだりクリスマが絡んだりすれば返しには6マナ、マグナからでも十分ループしうるしデイヤーならまず間違いなくターンは返ってこない。

 では零龍で攻撃せずにターンを返した場合はどうだろうか。上からクローチェフオーコを引かれて零龍がブロックされる、といった懸念はあるにしても、大抵はマナを5~6に伸ばすだけでターンを終えるだろう。シ蔑ザンドの除去も零龍で無効化できる。そして返ってきたターン、満を持して零龍で5点。ここでテック団+ジューサーのような踏み方をしなければ打点が足りなくなることはない。バライフやジューサーからマリゴルドが出てきてそのままループされるという可能性は確かにあるが、それなら前のターンに零龍で攻撃していれば勝てた、というわけでもあるまい。

 このように、増えた手札やシールドトリガーを利用できるカウンター性質のデッキが相手なら、素直に零龍で攻撃しても大丈夫かどうか、そして、1ターン待つことで攻撃を通しやすくなるのかどうかを考える必要がある。

  また、そのターン中に零龍で攻撃するのは避けたいが、卍誕してターンを返すとブロッカーやシャッフが出てきて零龍を止められるおそれがある、という場合は、墓地の儀を解決せず残したままターンを返す、という手段もある。零龍をコストにステニャンコやダースシスKなどを出す動きはとれなくなるが、次のターンの始めにザロストやステニャンコを出す、あるいは手札に持っていればブラッディクロスを唱える、といった動きから零龍卍誕し、相手の盤面を一掃して攻撃に転じることができる(ビックリーノが出るなどして墓地の枚数が足りなくならないように注意)。

 さらに、この”墓地の儀残し”は、一部のデッキに対してカウンター的に用いることもできる。
 墓地が7枚以上ある状態でザンバリーやザロストを出しておけば、パワーの高い相手をブロックした時に卍誕して相手の攻撃をシャットアウトすることが可能。ビックリーノを立てて相手のバーンメアや灰になるほどヒートに反応させるのもその派生といえる。
 また、サファイアウィズダムやアルファディオスではステニャンコやザロストなどの効果を制限できないため、墓地の儀を残すことで簡単に白緑ファイブスターの盤面を壊滅させることができる。

 ただし、いずれにせよ、クローチェフオーコやお清めシャラップなどでお釈迦になる可能性は考慮しておかなければならない。

・使えるテクニック集

 ここまでで零龍ギャスカの動きの大枠は説明できていると思うが、他にも特定のデッキやカードに対して意識しておきたいことがいくつかあるので、順に紹介する。

・クローチェケア
ブラッディクロスや復活の儀などで墓地を肥やすとすぐに墓地の枚数が5枚以上になり、相手の《龍素記号 Xf クローチェ・フオーコ》のG0圏内に入ってしまう。破壊の儀のパーツを集めるためにはそれを避けられないことも多いが、そうしたパーツが手札に揃っているときは、復活の儀のタイミングを遅らせることでクローチェをケアすることができる。
例えば、先攻1ターン目にザンバリーとダースシスKをプレイし、手札からステニャンコとドレッドブラッドを墓地に落としたとする。もうこの時点で次のターンに零龍卍誕できることが決まっているため、ダースシスKの効果で山札から落としたカードがビックリーノやダースシスKであっても、それらがバトルゾーンに出てきたタイミングで復活の儀は解決せず、ドレッドブラッドやステニャンコを出したときに解決するとよい。

・フレア覇道封じ
《終末の時計 ザ・クロック》による受けからの《”必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ”覇道”》というカウンター機構をもった赤青覇道は、零龍ギャスカにとってやや苦手なデッキである。しかし、先攻3ターン目や後攻2ターン目に零龍とステニャンコだけの盤面を作って殴ることができれば、ステニャンコのスレイヤーを活かし、フレアによる強制バトルで覇道を狩ることができる。
ブラッディクロスかシニガミがないとこの盤面を作るのはなかなか難しいが、これができないとクロックからのフレア覇道をケアできないので、狙えるときは狙っていくべきだろう。

・B我封じ
赤単B我にはほとんど受けが積まれておらず、平均的なキルターンもこちらより遅いので、基本的には有利に戦うことができる。とはいえ受けがないのはこちらも同じなので、先攻3ターン目にB我で走られてしまうだけで厳しい。幸い、B我には手札が2枚以上あると動けないという弱点があるので、後攻なら2ターン目にギャスカやデスマーチなどで1点入れられるようにしたい。
ただし、零龍卍誕せず雑に殴っていくだけだと、《”罰怒”ブランド》を絡めて4キルされることになりやすいので注意。

・零龍ギャスカミラー
慣れていないとややこしくなりがちな対面。先攻2ターンで零龍卍誕したり、ポクタマやトムライを当てたりできればイージーウィンできるが、お互いが復活の儀(と手札の儀)を達成していると、片方が零龍卍誕した直後にもう一方も卍誕することになりやすい。そうなると盤面にはお互いの零龍しか残らないので、先に卍誕したとしても破壊の儀でデスマーチを拾えないとやや苦しくなる。
それから、手札の儀の誘発タイミングは自分のターンの終わりだが、相手の手札が0のときにも解決できることを覚えておこう。

・相手のクリーチャーを巻き込んだ破壊の儀の達成
すでに軽く触れている事項ではあるが、しばしば必要になることなので改めて記しておく。
破壊の儀のカウントにはお互いのクリーチャーを数えることができるので、あらかじめ墓地の枚数を確保できていれば、ドレッドブラッドまたはジエンデザークの効果を使った際に墓地の儀を解決し、相手のパワー3000以下のクリーチャーを巻き込んで破壊の儀を達成することができる。

 プレイング論は以上である。私のプレイングを再現するために必要なことはほぼすべて書いたつもりだが、どうしてもその時々の手札や対面のデッキによって考えることが少しずつ違ってくるので、ぜひ自分の手でデッキを回してみて使い方に慣れていってほしい。


【構築論】

 零龍ギャスカというデッキが幅広い相手に対して安定した出力を発揮するためには、構築の段階から零龍卍誕の安定性を高めることが重要である。

 そこで、採用枚数が検討される一部のカード(ラピスラズリ、ブラッディクロス、ドレッドブラッド、ザンバリー、ダースシスK、イワシン)について、「先攻3ターン目に零龍卍誕できる確率」に主眼を置き、計算を単純化するための近似を用いながら、定性的な比較も交えて考察していく。

 また、定量的な比較が難しいその他の採用候補カードや、超GRゾーンに採用すべきカードについても別に考察する。

・方針

 零龍ギャスカの構築に通常は採用される主要なカードの枠を「確定枠」、多くの場合は採用されるがその枚数について検討したい一部のカードの枠を「暫定枠」とし、確定枠と暫定枠を全投入した構築と、その構築から暫定枠の特定のカードのみを外した構築とで、先攻3ターン目に零龍卍誕できる(近似的な)確率を比較する。この差分を当該カードのスコアとし、暫定枠の各カードについて、スコアとそこに反映されていないメリット・デメリットを総合的に考慮しながら採用枚数について論じる。
 なお、デッキの総枚数は40枚であり、確定枠と暫定枠を合わせて足りない分の枚数は黒マナになるだけで効果を持たないカードが入っていると考える。

確定枠
《怨念怪人ギャスカ》×4
《ステニャンコ》×4
《卍∞ ジ・エンデザーク ∞卍》×4
《暗黒鎧 ザロスト》×4
《偽りの名 ドレッド・ブラッド》×2
《ビックリーノ》×2

暫定枠
《虚像の大富豪 ラピス・ラズリ》×4
《ブラッディ・クロス》×4
《堕魔 ザンバリー》×4
《暗黒鎧 ダースシスK》×4
《偽りの名 ドレッド・ブラッド》×2

・《一なる部隊 イワシン》については、計算に含めづらいため暫定枠から省き、後に暫定枠と同じような方法でスコアを計算する。
・《偽りの名 ドレッド・ブラッド》は破壊の儀の達成のために重要なカードであり、暫定枠と同じ扱いにすると3枚目、4枚目を抜くことによるスコアへの影響が大きいと考えて2枚のみを暫定枠とした。
・《堕魔 ザンバリー》と《暗黒鎧 ダースシスK》は同時に採用することでそれぞれの価値を発揮しやすく、まとめて扱ったほうが確率の変動も見やすくなるので、スコア計算の際には両方をまとめて一つの枠とした。

 なお、この方法で比較することが難しいために暫定枠に入れなかったカード(デスマーチ、大罪より生まれし果実、ビックリーノ)については、下の『その他の採用候補』にて考察する。

・計算方法

 先攻3ターン目に零龍卍誕できる確率を、〈手札の儀を達成できる(近似的な)確率〉×〈(その儀を達成したという条件のもとでの)破壊の儀を達成できる(近似的な)確率〉×〈(それらの儀を達成したという条件のもとでの)墓地の儀を達成できる(近似的な)確率〉、として計算する。(復活の儀については、破壊の儀や墓地の儀を達成するまでに段階的に達成されるものとして計算に組み入れている。)以下にそれぞれの儀の達成確率の(近似的な)計算方法を記す。なお、相手からの干渉は一切考えていない。
 また、計算には一部、以下のツールを利用した。
https://yazirusis.com/calc/probability.html 複数のカードの確率計算機(マリガン対応)

・手札の儀
 2ターン目までにドローした6枚のカードが、以下のいずれかの条件を満たす。
(1)ギャスカを含む
(2)ラピスラズリを含む
(3)ザンバリーまたはダースシスKを合計2枚以上含む

実際にはダースシスK2枚のみで手札を吐ききることはできないが、1ターン目にブラッディクロスでザロストやビックリーノを落とせば吐ききれるようになるし、他にもブラッディクロス+ステニャンコ+ダースシスK、ブラッディクロス+ブラッディクロス+ザンバリー、のような手札の吐き方もあることから、総合的にはやや小さめに見積もっていることになる。

・破壊の儀
 3ターン目までに見えているカードの中に、ステニャンコ、ジエンデザーク、ドレッドブラッドが合計2枚以上ある。ただし、
・ステニャンコが2枚あるだけの場合は除く。
・ステニャンコが1枚もない場合は、40%の確率で破壊元のクリーチャーが足りず達成できないものとする。
・3ターン目までに見えているカードは、〈 手札6枚 ー 使用したカードの枚数 + (復活の儀でめくる枚数の平均程度とみなせる)1枚 + ブラッディクロスを1枚以上引いた場合はさらに2枚 〉のカードを、〈40枚 - 使用したカードの枚数〉のデッキから引いたものとする。ただし使用したカードの枚数は、ギャスカまたはラピスラズリの1枚のみ、または、2ターン目までにブラッディクロスを1枚以上引いた場合はこれを加えた2枚とする。
・さらに、ダースシスKを4枚採用している場合は最後に1%を加える。

他の条件との兼ね合いを考えると計算が複雑になることから、単純に「X枚のカードをY枚のデッキからドローした」状況とみなすための特殊な方法を導入した。これにより実際の確率よりも多少低く見積もることになる。また、ダースシスKの寄与は、他のカードの枚数を減らした場合の調整まで考えると正確に見積もるのが難しいため、低めに見た1%で固定とした。

・墓地の儀
 破壊の儀の項で導入した式を用いて、〈 手札7枚 - 使用したカード3枚(手札の儀で1枚、破壊の儀で2枚) + 復活の儀の2枚 〉を〈40枚 - 使用したカード3枚〉のデッキから引いたものとし、ブラッディクロスまたはダースシスKが見えているおおよその確率を求める。
 どちらかが見えていれば1、どちらも見えていなければ0.55の確率で達成できるものとする。

ギャスカではなくラピスラズリで手札を吐かなければならない場合を考えると、ブラッディクロスやダースシスKがあれば100%、なくても55%で達成という設定は少し高すぎではあるが、ラピスラズリかギャスカかで補正を加えると余計に複雑になるし、後攻の場合まで考慮すればこれであまり問題ないだろう。
加えて、ブラッディクロスを使っていれば破壊の儀の達成率が上がるので、破壊の儀を達成しているという条件下ではブラッディクロスが見えている確率がもう少し高くなっているはずである。

・スコア一覧

 まず、基準となる、暫定枠をすべて投入したときの値は、
  0.876×0.554×0.908≒0.441
  (手札) (破壊) (墓地)
 となる。
 ただし、これは実際の確率よりも低く見積もった値であるし、実戦ではもう少し卍誕のパターンが増えるため、この値自体はあまり重要ではない。目を向けるべきは、以下に示す、それぞれのカードを抜いた場合との比較である。

・虚像の大富豪 ラピス・ラズリ(4枚→0枚)
 (0.876×0.554×0.908)-(0.697×0.554×0.908)≒0.090
スコア:9.0
備考:×実際は墓地の儀の達成率が少し上がってしまう。
   ◎後攻だと手札の儀の変動幅がもう少し大きくなると考えられる。

・ブラッディ・クロス(4枚→0枚)
 (0.876×0.554×0.908)-(0.876×0.506×0.786)≒0.092
スコア:9.2
備考:◎実際は墓地の儀の達成率がもう少し下がる。
   ◎2枚以上使う場合があることも考えると、破壊の儀の変動幅ももう
   少し大きい。
   ◎手札の儀も本当は少し下がる。
   ×相手の墓地を肥やしてしまうデメリットがある。

・堕魔 ザンバリー&暗黒鎧 ダースシスK(8枚→0枚)
 (0.876×0.554×0.908)-(0.764×0.544×0.786)≒0.114
スコア:11.4 /2
備考:◎実際は破壊の儀の変動幅がより大きい。
   ◎ザンバリーもダースシスKも、卍誕時(卍誕後)のクリーチャーの
   頭数を多くするのに役立つ。
   ◎ザンバリーはブロッカーとして有用な場面もある。
   ◎ダースシスKは、オーマ 丙-二式の効果で回収した場合など、手
   札から破壊の儀を誘発させられることもある。

・偽りの名 ドレッド・ブラッド(4枚→2枚)
 (0.876×0.554×0.908)-(0.876×0.450×0.908)≒0.083
スコア:8.3 ×2
備考:◎実際は墓地の儀の達成率も若干下がる。
   ×ステニャンコを交えて破壊の儀を達成した場合よりも盤面のクリー
   チャーが1体減る。
   ◎テック団の波壊Goをケアした殴り方ができることもある。

・一なる部隊 イワシン(暫定枠はそのまま、イワシン4枚と0枚を比較)
 (0.876×0.630×0.958)-(0.876×0.554×0.908)≒0.088
スコア:8.8
備考:×破壊の儀の上昇幅は、イワシンによりデッキを4枚圧縮したものと
   して計算した。この計算法だとブラッディクロスに用いたものよりも
   大きな値が出る。
   ◎墓地の儀の変動幅はざっくり5%と見積もったが、ブラッディクロ
   スやダースシスKを減らした場合はより大きくなる。
   ◎手札の入れ替えができることもあるので、手札の儀も若干だが達成
   しやすくなる。
   ×マナに置きづらいという小さくないデメリットがある。

・各カード比較

 前節でスコアを算出した5種の枠のうち、突出して高いスコアが得られたのがドレッドブラッドである(2枚しか外していないのに4枚外した他の枠と大差ないスコアであった)。ステニャンコが絡む場合よりも盤面のクリーチャーが1体多く減ることにはなるが、頭数が足りず破壊の儀を達成できなくなる可能性についてはスコアにある程度加味されているので、安定した零龍卍誕のためにはドレッドブラッドは4枚採用すべきだと言えるだろう。

 反対に、ザンバリーとダースシスKについては、8枚まとめて一枠とした割にスコアはあまり高くなかった。ステニャンコがない場合にザンバリーを出して破壊元のクリーチャーを確保したり、手札のダースシスKで破壊の儀を達成できることがあったりと、卍誕ルートを広げられる枠でもある上に、ダースシスKは自身の蘇生効果を発動させやすくするため、ザンバリーはダースシスKの破壊元として出すためにしっかり枚数を確保したいところではあるが、他の枠との兼ね合いで大幅に枚数を減らしうる枠でもあるということだろう。

 ラピスラズリ、ブラッディクロス、イワシンの3種については、どれも同程度のスコアであった。そこでスコア以外の部分に目を向けると、特に気になるのがイワシンの「黒マナにならない」点である。せっかく墓地に落としたいカードをたくさん引けていても、ギャスカを出すためにマナに置いてしまっては意味がない。特に先攻の場合はイワシンを1枚引くだけでも邪魔になる場合がある。ただ、破壊の儀でブラッディクロスやダースシスKではなくデスマーチを回収しやすくなるのは優秀な点であるため、そうした墓地を肥やすカードの採用枚数を減らした場合や、デスマーチを多めに採用した場合などはイワシンも採用候補になるだろう。なお、マナに置きづらいデメリットを軽減するために1~2枚のみ採用することも十分に考えられる。
 ブラッディクロスはスコアがやや小さめに見積もられており、実際には卍誕率に比較的大きく寄与するように感じているので、零龍ギャスカミラーや対カリヤドネを強く意識するのでなければ、個人的には3~4枚採用すべきカードであると思う。
 ラピスラズリは1枚で手札の儀を達成でき、自身が2打点持ちであるため卍誕できずとも殴っていくプランを最低限とることができるが、3ターン目から中途半端に攻撃していったところでそう簡単に勝てるわけではないので、ザンバリーやダースシスKなど手札を吐きやすいカードを十分に採用しているならば1~2枚削ってもよいと思う。

・その他の採用候補

《死神術士デスマーチ》
 破壊の儀で回収して打点を作ることが主な役割。ブラッディクロスやザンバリーがあれば手札を使い切る助けにもなる。
 墓地の儀を先に解決できていない場合はブラッディクロスやダースシスKを優先して回収することにはなるが、同型対面では同じタイミングで卍誕することが少なくないので、デスマーチによる追加の1点が重要になる。
 0~2枚の間で選択か。

《大罪より生まれし果実》
 ダースシスkの破壊元のかさ増しになるほか、破壊の儀の回収から墓地メタをめくりに行ったり、悪くてもラピスラズリの前の1ターン目の動きになったりと小回りの利くカード。破壊の儀のカウント1つに数えられるので、ダースシスK2枚と合わせて後手1ターン目に零龍卍誕、なんて動きもできる。
 このカードのオーラ版ともいえる《失罪 モグニ否フ》は、《オーマ 丙-二式》で回収できる点では果実に勝るも、墓地の枚数を増やしにくくなることがあるため、基本的には果実が優先されるだろう。
 器用なカードではあるが、デッキの基本的な動きにはあまり絡まないので、「墓地メタのGRクリーチャーを活かしたい」などのはっきりした目的がある場合にのみ採用することになると思う。

《ビックリーノ》
 ザロストのように盾から墓地を肥やすことはできないが、墓地に落としたターンに復活の儀を使える点は優秀。
 卍誕できないときに小型で刻んでいくプランまで考えるなら3~4枚採用したいところだが、4cデイヤーなどのデッキに対して場持ちがあまりよくないため、2枚程度に抑えてもよいだろう。

<以下、あまり採用する価値のないカード>

轟轟轟ブランド…ギャスカやラピスラズリを出したときにこそ使いたいのに、墓地に落としても意味がない。
ジョラゴン・リロード…色が弱い。ブラッディクロスかザンバリーでいい。
各種シールドトリガー…同速以上の速いデッキを対策するなら自分の動きにもなるザンバリーがある。ループフィニッシュなどトリガーで止まらない負け方が多い。

・超GRゾーン

 採用候補に挙がるGRクリーチャーの数はそれなりに多く、何を採用するかにはある程度自由がきく。

・《シニガミ 丁-四式》、《ダラク 丙-二式》
墓地の儀の達成に役立つため、この2枠は確定と言ってよいだろう。

・《ロッキーロック》
能動的に破壊できる機会が多く、頭数を増やしながら実質的にGRの圧縮にもなる。特にドレッドブラッドとジエンデザークで破壊の儀を達成したいときに優秀。また、相手のシ蔑ザンドによる妨害にも強い。ほぼ確定で入る枠。

・《オーマ 丙-二式》
破壊の儀要員がドレッドブラッドまたはジエンデザーク1枚しかないときでも、墓地にダースシスKがあればオーマで回収して達成できる。あるいは、破壊の儀と合わせて2枚を墓地から回収できるので、とれる動きが多少増える。ダースシスKを4枚採用しているならこれも採用したい。

・《ポクタマたま》、《トムライ 丙-三式》
ミラーやカリヤドネなどの墓地利用デッキに対して勝敗を分けうる。特にミラーではトムライでも十分決定的な効果があるので、環境によっては両方採用してもよいだろう。

・《補充 CL-20》、《バルバルバルチュー》、《ツタンメカーネン》
手札の儀の達成のために切ったリソースを再び補充できるGRクリーチャー。墓地にないブラッディクロスやダースシスK、あるいはデスマーチを引きに行ったり、引けなくても破壊の儀で回収したギャスカやラピスラズリから捨てるカードを増やせるため、墓地の儀の達成に役立つ。また、卍誕せずに殴っていかなければならないときも、バルチューやメカーネンなら後続を引き込みやすい。
ただし、メカーネンによる相手の1ドローで4cデイヤーに、バルチューの盾回収で一部のビートデッキに対して不利な条件を作ってしまうといったデメリットもある。
デイヤーが跋扈した環境では、バルチュー≧補充>メカーネン、といった優先度だろうか。

・《ドドド・ドーピードープ》
卍誕できずに殴っていくときに打点として優秀であるほか、攻撃時に手札を捨てる効果もこのデッキではメリットになる。
ただし何もせずに他のカードの効果で破壊してしまうことも少なくない。
なお、《ヘルエグリゴリ-零式》は破壊効果がデメリットとなる場面が多いこと、《鋼ド級 ダテンクウェールB》は殴らず1ターン待つ動きに支障をきたすことからあまり採用すべきではない。

・《バクシュ 丙-二式》
相手にたった1枚セルフハンデスさせるより、少しでも自分の動きを強めたり墓地利用デッキをメタったりした方がよいことが多いので、あまり採用する価値は高くないと思う。

・サンプルリスト

 以上の考察を踏まえて、私が組んだデッキリストを2つ提示する。

 もちろん、その時期・その場所の環境によって正しい構築は変化するものだし、ここまで何度も確率を語っておきながら、結局のところは私自身の感覚に頼った判断をしている要素が多いので、ある程度零龍ギャスカというデッキを使い慣れている人はぜひ自分の感覚を頼りに構築を吟味してほしい。

<サンプル1>

4 x 怨念怪人ギャスカ
4 x 虚像の大富豪 ラピス・ラズリ
4 x ステニャンコ
4 x 卍∞ ジ・エンデザーク ∞卍
4 x 偽りの名 ドレッド・ブラッド
4 x 暗黒鎧 ザロスト
4 x ブラッディ・クロス
4 x 暗黒鎧 ダースシスK
4 x 堕魔 ザンバリー
3 x ビックリーノ
1 x 死神術士デスマーチ

2 x シニガミ 丁-四式
2 x ダラク 丙‐二式
2 x ロッキーロック
2 x オーマ 丙-二式
2 x ドドド・ドーピードープ
2 x ポクタマたま

1 x 零龍

欲しいカードを素直に4投した、使いやすい構成ではないだろうか。
実際、4/25のDMvault大会ではこのリストを使って優勝している。

<サンプル2>

4 x 怨念怪人ギャスカ
4 x 虚像の大富豪 ラピス・ラズリ
4 x ステニャンコ
4 x 卍∞ ジ・エンデザーク ∞卍
4 x 偽りの名 ドレッド・ブラッド
4 x 暗黒鎧 ザロスト
4 x 暗黒鎧 ダースシスK
3 x 堕魔 ザンバリー
2 x ブラッディ・クロス
2 x ビックリーノ
2 x 一なる部隊 イワシン
2 x 死神術士デスマーチ
1 x 大罪より生まれし果実

2 x シニガミ 丁-四式
2 x ダラク 丙‐二式
2 x ロッキーロック
2 x オーマ 丙-二式
2 x ポクタマたま
2 x トムライ 丙-三式

1 x 零龍

こちらはサンプル1よりもミラーを意識した構築になっている。ピン投の大罪より生まれし果実も使い勝手は悪くないだろうと思う。


◇おわりに

記事の内容は以上です。読んでいただきありがとうございました。

ここから先はただのガラクタ置き場です。有料で販売するという意図はなく、いわゆる投げ銭という形で、ここまでの内容が気に入った方に購入していただければと思います。

ここから先は

848字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?