愛の形

今酒を呑んでいる。酎ハイ。まだお子ちゃまなので甘ったるいお酒しか呑めない。酒が強いのか、または弱いのかはどちらかわからない。どうなんでしょうねえ。家で呑みまくって自分の限界の量を把握しないとなあ。ふぅ、もう今年で21歳か。時が経つのは早いねえ。あっという間だったねえ。

あの人は今、元気だろうか。ふとした瞬間に思い出す。 

元々好きになった人は友達の彼氏だった。別に第一印象はなんとも思ってなかったけれど、友達を交えて話していたら、気づいた時にはゾッコンだった。あの人は繊細な人で、いつも人前で気丈に振る舞って、周りの人が落ち込んでいたらさり気なく声をかけて慰める。そういう人だった。その優しさに気づいたのも、私があの人に慰められたからだった。「なんかあったの?」あの人は言う。私はネガティブな面を人前では見せないようにして明るく振る舞っていたが、あの人は私が落ち込んでいることに気づいてた。そんな風に優しくしてほしくなかった。やめてほしかった。やめて。やめて。嫌だ。切ない。苦しい。苦しくなって切なくなって愛おしくなって、次第に心の中の"好き"がでかくなっていった。気分は最悪だった。友達の彼氏を好きになってしまいたくはなかったから。でも好きになってしまった。もうどうしようもなくなってしまったが、あの人からみた"彼女の友人A"の仮面を被ったまま接し続けた。"友人A"の仮面を被り続けてしばらく経つと、あの人にも気持ちの弱いところがあるとわかった。「弱い人は人の弱いところに敏感で寄り添うことができる。」そんなようなことを以前聞いたことがある。まさにそれだったのかもしれないな。私の友人である彼女はそんなことに気づいてはいないだろう。何故、友人が隣にいるんだ。友人よりも私の方が、あの人の、うんと心の奥底にある凍ったもんを溶かしてやれる。そう思い始めた。私が隣りにいく。

付き合って一ヶ月経つ頃、友人が私の男友達を気にかけるようになっていた。"このまま友人の気持ちが男友達に向けば好都合では?"脳裏を過る。私は男友達にそれとなく友人が好意を持っていることを伝えてその気にさせた。キャラじゃないけど策士なので。ちょっとずつ友人と男友達は距離を縮め、友人はあの人を捨てた。友人はその程度の気持ちだったのだ。その程度の気持ちならさっさと離れてほしかったし、男友達にはそれほど悪いとは思わなかった。

あの人の隣が空いた。どうするか。好きだと暗に伝えるべきか。いや、やめておこう、と一旦チキったが結局アプローチすることにした。どうアプローチしたっけな?参考書貸したんだっけな?あまりよく覚えてない。でも、悲しいことに、あの人は私と距離を置くようになった。以前ほど打ち解けた会話が少なくなっていった。しくじったな。アプローチするんじゃなかったな。アプローチしなければずっとあの人の側にいれたのに。側にはいなくても、アプローチする以前と同じように他愛もない話ができたかもしれない。好きだと伝えなければ、私とあの人の関係性は壊れることはなかった。はあ、はあ。結ぼうとするんじゃなかったな。この気持ちは仕舞い込んでいればよかった。

今すっかりコンタクト取れないあの人はどうしてんだろうな。十年後、二十年後も酒呑みながら思い続けてるんかな。別に一生ひとりもんでもいいかな。想うだけで心が温かくなる人がいるからね。晩酌しながら振られた男を想い続ける人生も悪くないかな。

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