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ミニ四駆に戻ってみた。11 方向性

2016.4.2
PM1:20
新潟市江南区 ジャンボドーム

「……という訳で、MS用のファーストトライパーツと書いてありますが、他のシャーシに使っても大丈夫ですよ」

「あ、そうなんですね」

第8回戦も後半にさしかかったところ。

午前の素組み部門で勝利し、ヒロとのレブマシン対決も制した俺は、ミニ四駆に戻ってから初めての賢者タイムを迎えていた。

理想的な展開だ。後は1時間後の立体車フラット対決を制して完全勝利となる。相棒のS2リバティも絶好調、間違いなく行ける。

ふっふっふ。これが余裕というものか。

ふとヒロの方を見ると、依紅瑠さんにH教授式脱脂の講義を行っているところだった。

「で、このパーツクリーナーに入れて少し振ると、ベアリング内のグリスが溶け出す」

「なるほど、こうやるんですね」

丁寧に説明をする姿は焦りを全く感じさせない。 むしろ余裕すら感じられるのはなぜだろうか。

まだ何か隠し持っているというのか?

フオオオオオ

「おっ!」

そんな中、タイムアタックを繰り返すUMAが怪奇現象を引き起こしてしまった。

オフセットトレッドタイヤ(ハード):25秒23
イボイボタイヤ:24秒45

「おい、イボイボの方が速いぞ」

己の予測を超えたタイムに思わず手が止まるヒロ。

流石はイボイボタイヤに愛されし男。

UMAの走りに触発されたのか、他のメンバーも次々にアタックを開始した。

今の状況は...

ヒロ:19秒台(立体用MA)
依紅瑠:20秒ほぼジャスト(VS)
武者:22秒台(みんなのパーツを使用AR)
ほっと:24秒台(S2レブ)

む! いくらダッシュ系じゃないからといってこれはヤバいのでは!?

悔しいが今の俺ではレブでダッシュ系に勝つ事は出来ないようだ。

かといって旧パワダを搭載してしまったらマシンのコンセプトも何も無くなってしまう。

ここは素直にハイパーを積んで走らせる事にしよう。重いマシンにレブでこのタイムなのだからハイパーで充分戦えるはず。

「ぱーぱーーーーーーっ!」

「おお!」

しかしここで娘が襲来!

「ねぇ、こうするんじゃない?」

ガリッ

ああっ、雪風のボディに傷がッ!?

「ねーーー!あっち行こうよぉーーーーーー!」

オーエス、オーエス!

作業中の利き腕はヤメテェ!?

「ぶーぶーーーー!」

S2リバティをチョ○Qばりに前後させちゃうのは流石に心配よ!

ああもうなんて可愛いんだ! 小さな女神よ、俺に勝利を見せてくれ!

可愛いのは間違いないんだが流石にこのままヒロ達と戦うのはしんどすぎる。 1回ぐらい試させてもらわないと。

遊びたがる娘をなだめつつ、S2リバティにハイパーを乗せて走らせてみると。

ギュイィィィ、ズボォ!

「おっと!?」

マジか、レーンチェンジ入らないぞ!

しかしもう時間がない。今できることと言ったらフロントローラーを2段アルミに変え...

「ねーーーー行こうよぉーーーーー!」

ザンギ○フばりの吸引力。

「待って待って、パパこれからレースなんだ」

「ひろさんとぉ?」

「そうだよ」

「………あっち行こ?」

くっ、そんなパーティーを抜け出すような誘い方をどこで覚えた!?

「時間だぞ」

ここでまさかの時間切れ!?

ヒロの声に慌てて時計を確認すると、開始予定時刻きっちりを指していた。

ヤバい、だが負けぬ!

「グッパー、ジャン!」

対戦相手の組み合わせじゃんけんに土地柄が滲み出る。

対戦カードは…

ヒロ 対 依紅瑠
UMA 対 ほっと

いきなりの好カード、ヒロのライズエンペラー(MA)と依紅瑠さんのブリッツァーソニック(VS)との対決だ。

「位置について、用意、スタート!」

ギュイィィィ!

どちらも速い。

しかしコーナーで差がついてしまう。レブ対決の再現を見ているようだ。

ヒロのマシンは安定しているし、平面の加速も申し分なく見える。

やはり強いか、ヒロよ!

「ゴォール! という訳で決勝進出はヒロに決定!」

「スラスト8°にしたら流石に安定したわ」

それで速度域は周りよりも速いのだから困ったものだ。

それでこそ我がライバルだ!

続く第2レースはUMA対ほっと。

なんだか今日はやたらとUMAを相手にしている気がするな。

UMAが取り出したのは当然ファイヤードラゴン(VS)。

タイム的にはレブのままでも勝てそうではあるが、それではヒロに敵わない。

奴と戦う事を考えるならハイパーで行くしかない。行くぞ!

「位置について、用意、スタート!」

ギュイィィ!

「ははっ!」

圧倒的な速度差。これが俺のリバティーエンペラーだ!

UMAはポカンと口を開けている。先程レブで戦った時と速度が違うからな!

「まだ分からんぞ?」

UMAを叱咤するヒロの声。

それと同時にS2リバティがレーンチェンジに差し掛かり、瞬間、姿勢が乱れた!

スポォォンッ

「入ったぁぁぁ!?」

コースアウト用のダンボール箱にホールイン・ワン!

ちくしょうめぇ!

「待てさ、まだ分からんだろ?」

フオオオオオ

ファイヤードラゴンは未だに走り続けている。確かにレースは終わっていない。

しかし忘れてはならない。彼はイボイボタイヤに愛されし男。

レーンチェンジごときで奴を止められるのであれば、立体コース連覇など成し得てはいないのだ。

フオオオオオオオオオ!

ファイヤードラゴンが雄叫びを上げつつゴール!

「あれっ、パパ負けたの?」

「負けたんだよ」

「そうなんだ」

父の悲しみを知ってか知らずか、結果だけ聞くと妻の元へと走っていった。

ああっ女神さまっ!

悔しさで震えていると、ヒロから提案があった。

「3位決定戦やろうぜ」

「おう」

とりあえず返事をしたが、それってつまりは?

「自分とですね」

「よし、早速やりましょう!」

相手は依紅瑠さん。

さっきのレースで電池も多少はヘタっているはず。今度こそキッチリとレーンチェンジをクリアしてやる!

「位置について、用意、スタート!」

依紅瑠さんが少し遠慮したのか、スタートが僅かに遅れたように見えた。

しかしおじさんは遠慮しないよ? S2リバティ、今のうちにトンズラだ!

スポォォンッ

「またかよ!?」

結局コースアウト。

そしてブリッツァーソニックは悠然とウイニングラン。

終わった………。

また負けた。アホすぎだろ俺。



そして本日の最終レース。

ヒロ 対 UMA。

独身教授と変態仮面。

このブログ、変なキーワード検索で上位になったりしないよな?

ギュイィィ

ちなみに決勝戦の内容だが、敬虔なる読者諸兄におかれましてはもはや説明不要と思われますので省略いたします。

ええ、まぁ大差でしたなぁ。

「無理だわ」

「フッ」

「てな訳で、午後の部優勝は……独身教授ヒィィィロォォォォォ!!!」

1位:ヒロ ライズエンペラー(MA)
2位:UMA ファイヤードラゴン(VS)
3位:依紅瑠 ブリッツァーソニック(VS)
最下位:ほっと リバティエンペラー(S2)

「あ、これ賞品です」

「あ、どうも」

優勝商品:駄菓子×2

武者さんからのサプライズ。賞品システムは次回からも導入しよう。

そんなこんなで第8回戦はこれにて閉幕。

各自ゴミを持ち帰りつつ解散となった。




4/5(火)
PM11:00
ほっと家 2F

「いやぁ、しかし人数が多いと賑やかでいいねぇ」

「そうだな」

いつもの電話反省会。

対決の後にはこうしてレースを振り返るのがお決まりのパターンとなっていた。

まぁ反省会と言ってもダラダラと作業しながらテキトーに話すだけなのだが、この日は少々違った。

「しかし、お前のS2は思ったほど速度出てなかったなぁ」

「……は?」

なん…だと…?

「待て待て! レーンチェンジさえ入っていれば一番速度が出ていたのは俺のS2リバティだったはずだ!」

「うーん、そうかぁ?」

そんなバカなっ!?

いやしかし、冗談でこんな事を言うような奴じゃないしなぁ。

信じたくは無いが、これは確かめるしかない!



4/6(水)
PM 0:00
新潟市江南区 ジャンボドーム

そんな訳で、一人きりのリベンジマッチを行う事となった。

先客のダンディーな男性、タムさんと雑談を交わしつつ、まずはハイパーを搭載したS2リバティのタイムを計ることにした。

その結果は…
(動画➡https://twitter.com/hot_mini4/status/718803891345707009?s=09)

22秒14。

( ゚д゚) ニジューニビョーイチヨン…

(つд⊂)ゴシゴシ
 
(;゚д゚) ニジューニビョーイチヨン?

(つд⊂)ゴシゴシ 

(;゚д゚) エッ!?

遅っッッッッッッそォォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!

オッソォォォォォォ

オッ…ソォ……

……。

ぐふっ。

なんで?どうして?

何故か急にペースダウンし、レーンチェンジでも飛ばなくなった我が愛車。

いや、ヒロの言うとおり元々遅かったのか?

そんなバカな! 俺のS2がこんなに遅い訳がない!

瞬間、頭に血がのぼる。

旧パワダ、赤大径バレル、2段アルミを取り出してパワソで強引にタイムを叩き出そうとして...止めた。

いやいや、俺はもうパワーソースに甘えないと決めたばかりじゃないか。

ヒロの言ったとおり、俺が遅かった。それが結論。

ちくしょうめぇぇぇぇぇぇ!

ああ〜泣きてぇ〜。

いやいや、落ち込んでいる場合じゃない。

俺のS2リバティが微妙な速度だったのは正直認めよう。うむ、うむ...くっ。

だがしかし、それはあくまでもS2の話。俺のメインはS1なのだから心が折れるにはまだ早い!

まずはS2リバティ、こいつをメインでブチ抜くところから始めよう!

早速S2を平面仕様に変更、モーターをレブに載せ替えた。

その状態でタイムを測定、その後S1でも同様に計測を行った結果...

S1:26秒31
S2:24秒14

なんでだよ。

いや、分かってる。駆動系がちゃんと組めていないんだ。

色々と試した抵抗抜きが裏目に出たのだろう。だったら元に戻してみるか。

ギュイィィ

「うっ」

駄目だ、遅い。

そもそもの速度が違い過ぎる。

これが今の俺の実力だ。

全く、なにが「速いマシンを作れるようになった」だ。クッソ遅いじゃないか。

情けない。

4/20(水)
PM 6:00
新潟市中央区 ホビーロード

「これ、何に見えます?」

「え? 犬ですよね。影絵の」

「正解は『手』です」

「………」

言いながら手を動かしているのは、ミニ四駆歴20年以上という大ベテランのうみはねさん。

その主戦場はミニ四駆の平面速度を競う競技、通称『カツフラ』と呼ばれるレースだ。

ひとたびその手がマシンを組めば秒速7mを超える超高速マシンを生み出す。俺が知る限り最強クラスのレーサーだ。

そんな実力差のある方とお話すると、自分がいかに知識不足なのか思い知る事となる。

そして今日はSさんも加わり、会話のレベルが俺のキャパシティを超えた。

うむ。半分以上理解できん!

説明しよう。ほっとはバカである。そしてミニ四駆初心者でもある。

ふはははサッパリだぜ!

ところでこのホビーロード、最近では月1回のペースで大会が開催されている。

実力ごとに初級~中級者用のミドルクラスと親子クラス、そして上級者用のエキスパートクラスが用意されている。

「そう言えば、こばやん(X遣いのベテランさん)は初出場がエキスパートでしたよ」

「えっ」

「あの時は20代前半だったかな?『自分はもう大人だから』って」

なんというメンタル!

いや、大会に出るという事はそのくらいの気概がなければならないのか。

「まずは出てみないと」

確かに興味はある。つーか出たい!

来月の大会は8日(日)、コースはフラットの予定か。

大会、そうか。いよいよ出てみるか!

そんな話をしながら、ついでに持ってきたS2を見て頂く事になった。

うみはねさんもポン組みMSを持参されているとのことで、その走りも非常に気になる。

銀色の充電器(どうやら貴重な品らしい)から取り出したホカホカ電池をセットし、いよいよ走り出そうとしたその時。

「あ、スイッチ落としたっぽい」

「ええっ」

まさかのパーツ不足! 走る姿が見られない!

ああっ、お金さえ! お金さえあればMSのキットを買ってこられるのに!

などと金欠に喘いでいると、コースに新しいお客さんが現れた。

登ってこられたのは体格の良い男性。手にはプラスチック製の工具箱。

「俺サイクロンマグナムめっちゃ好きだったんスよ!」

そう言いながら取り出したのは、サイクロンマグナムプレミアム(AR)。

「ホントは青い方が好きなんですけど」

そう言いながら肉抜きされたソニック系のボディへと乗せ換えスイッチを入れる。どうやらガチモードのようだ。

ギュイィ

スピードは初期の俺と同等。みんな通る道なんだよね。ヒロがおかしいんだよね。

1人でウンウンと頷いていると男性が口を開いた。

「どうしたら速くなりますかね?」

そこからうみはねさんの診察が始まった。

表、裏、ギヤ等をくまなく調べていく。そして…

「ここです」

プロペラシャフトが左右にガタついていた。

男性のマシンにはスプリントダッシュが搭載されていたが、ダッシュ系のパワーで受けの部分が削られてしまったらしい。

そして速度不足の原因はもうひとつ。

「試しにどうです?」

うみはねさんが男性に追い充電した電池を渡す。

そしてそのままスタート。

ギュイィィィィ!

「おお、速い!?」

まるで別のマシンのような速さを見せるAR。やはり追い充電の効果は絶大だ。

ついでに自分もお借りする事に。

人肌の温もりに胸踊るのは若かりし頃以来か(スルー推奨)。

ギュイィィィィ!

おお、さっきとはまるで違う!

「ダッシュ系モーターを使えば速くなるんですけど、それだけじゃ速い人には追い付けなくなります」

ああ、もっと上手くいった時のレブマシンで試したかった。

「ね? こんな風にランクが下のモーターでも速度が出てるでしょ?(ニヤリ)」

やめて先生! この子は失敗作なのよッ!?

ぐぬぬ、今度から2台体勢にしておこう。

「ジャパンカップとかも出られるんですか?」

「いえ出てないです。立体車も組みますけど、自分はフラットの方に楽しみを感じているので。

どっちも中途半端にやっていると自分が何をしたかったのかがボヤけて行って、そのまま辞めてしまったりもあるので。

自分がどっちの方向を向いているのかをしっかり持っておいた方が良いですよ」

男性に向けられた答えを反芻する。

うむ、方向性か。

やがてSさんとこばにゃんさんも合流。

またまた会話のレベルが上がっていき、とうとう俺の脳は思考を放棄した。

「ここに越えられない壁がありますね」

「ええ」

俺と男性ペア、そしてエキスパートの皆さんとの間を指でなぞってみる。

「いや? 壁なんて無いですよ?」

「えっ」

「壁なんて意識したことないなぁ」

「えっ」

「越えられないと思っちゃうとまずいっすよ」

………!

「そういや半年で越えてった人もいたっけ」

「ああ柏崎の人ね。一時は抜かれたよ」

なぁぁぁぁにぃぃぃぃぃ!?

クー○ポコ?

え、ホントに?

マジですか?

だったら、やるしかない!

やるしかないぞ!

ミニ四駆の大会、なんとしてでも出場してやるッ!

うおおお! やってやる、やってやるぞおおおおおお!!!



【 次 回 予 告 】

壁なんてない...その言葉に触発された俺はホビーロードの大会にエントリーする事を決意した。

その事をヒロに伝えると、なんとまさかの事態が判明! ぐぬぬ、やるなヒロよ!

そんな中、ひょんな事から俺はミニ四駆の極限進化を目の当たりにする事になるのだった!

次回、ミニ四駆に戻ってみた。

「超大径の誤解」

丁寧に作業すれば誰だって出来るのだ。

ほぼ毎夜10時頃~YouTubeにてゲームorミニ四駆の生配信を行っています!お気軽に遊びに来てください!https://www.youtube.com/channel/UC38sxZzD1yC-rTQzTaS7h5A