【Erode】天川エリア/細井 美裕

1993年生まれ。慶應義塾大学卒業。ボイスアーティスト。2019年NTT ICC無響室、YCAMにて22.2ch音響作品「Lenna」を発表。SHUREとMixcloudによるSHURE24 : 世界のオーディオカルチャーをプッシュする24人に選出。第23回文化庁メディア芸術祭アート部門新人賞受賞。

細井は今回、自身の声を使った作品ではなく、この場所に既にある川の音を改めて認識させるサウンドインスタレーション《Erode》(2020)を発表した。多くの場合、サウンドインスタレーションでは楽器やスピーカーから発せられる音そのものが作品となるが、本作ではスピーカーから発せられる音は川の音をよりクリアに聴くための補助線になっており、作品経験後に川の音を耳にすると、これまでとは違う輪郭で音を体験できることが特徴だ。作品と環境音の主従関係を逆転させるという発想は、細井が天川を視察した際に、この場所にある音の豊かさに気がついたことがきっかけとなっている。日常の中で当たり前のようにあることをはっきりと意識し体感することは難しい。細井の作品はまるでテコのように作用し、私達の認識を揺さぶり、今この場所にいる豊かさを自覚させるのである。

Lenna / 2019 / 撮影:木奥惠三
写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

山口情報芸術センター[YCAM] scopic measure #16 / Lenna / 
撮影:谷康弘 写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]

細井美裕+石若駿+YCAM「Sound Mine」/ 撮影:谷康弘
写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]

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