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『総理にされた男』 中山七里

中山七里さんの著作を読むのはこれが2冊目。
1冊目は佐藤健さんを主役に据えて映画化された『護られなかった者たちへ』。
この本をきっかけに、中里氏の書く社会派ミステリー(?)
へ引き込まれた。

あらすじ

内閣総理大臣が謎の病気で危篤状態。そこで、総理大臣にそっくりな売れない舞台役者の加納慎策に官房長官から総理を演じて欲しいと密命が。
泥沼の政治世界に飛び込んだ一般人の慎策。彼は巧みな演説と総理大臣瓜二つの容姿で政治界をなんとか切り抜けていく。そんな中、日本大使館がテロリストに襲撃される。慎策がとった行動とは。テロリストにどう立ち向かうのか、国民を欺き続けられるのか。

感想

テンポ良く繰り広げられる展開にあっという間に引き込まれた。ありえない設定だが、官僚政治や憲法九条の問題点が慎策の体験や視点を通してよくわかる。読後は一般人にはわかりにくい政界が少し身近に感じられるだろう。そして何より、官房長官の日本国民の特性に関する表現はまさに言い得て妙。
政治に疎いと倦厭しがちな人におすすめしたい本。

表現

「それでいいとは、多分誰も思っていないでしょう。自衛隊などという世界有数の軍事力を擁しながら軍隊ではないと言い張り、憲法九条を遵守すると言いながらその時々で解釈を変更する。姑息で場当たり的な対処であるのは、日本人全員が承知しています。しかし、それがこの国のかたちなのですよ」

 「信条よりは心情を、論理よりは倫理を優先させる国民性とでも言えばいいのでしょうかね。現状、湯船の外には極寒の風が吹いている。外に出れば瞬間的には間違いなく寒い思いをする。だから、湯船の中が微温湯で放っておけば風邪を引くのが分かり切っているのに、ぎりぎりまで粘っている」


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