20人の男たち(2/20)2年かけてストーカーした末に逆ナンしたFくん- 1

この話は高校の友達ならば、今でも微かな記憶の中に残っているかもしれない。
高校1年の終わりから2年程、私はストーカーをしていた。(結構マジなやつ)

女子校という環境は、相当な工夫とエネルギーを注がなくては、
異性と出会う機会、異性を好きになる機会、異性と関係を持つ機会に恵まれない。
それは、男子校に通う男子も同じだろう。

異性関係に関心が高い子たちは、積極的に着飾り、狩りに出かけ、
関心が薄い子たちは女子同士楽しく学生生活を過ごす。

この二極化、共学にいればそれは「モテるの?モテないの?」という、
格付けの決定的な判断材料となる。

一方で女子校では、格付けを判定する異性がいないがために選択の自由が与えられる。

無意味な格付けから逃れ、ヒエラルキーに組み込まれる必要がない、
これは、多感な思春期に女子校(または男子校)で過ごすメリットだ。

余談だけど、この辺の女子校話は辛酸なめ子の「女子校育ち」がおすすめ。

さて、私のストーカー話に話を戻す。

そんな環境下、少なからず狩りに出なくては出会いがなかったが、更に私は自転車通学。
放課後に定期券を使って、新宿や原宿に繰り出す同級生を尻目に、
私はたった2.5kmの自宅と学校の往復だけが許された。

高校1年生の冬頃から、放課後に通学路にある図書館の自習室で過ごすことを覚えた。
放課後、どこの繁華街に遊びに行くでもなく、とはいえすんなり自宅へ帰ることは、
思春期のささやかな反抗心が許さなかった。
(と、書いたものの、高円寺の店は私にたくさんの居場所を提供してくれた)

何を期待するでもなく、何かを楽しみにするでもなく、
ただ粛々と宿題を済ませ、本を読み、妄想をしながら小説や絵を描く。

そんな日々が続いたある日。
いつも通り自習室に向かい、いつもの席に座ろうとした途端、
1人の見慣れない男子高校生が目に入った。

ここは、地元の公共図書館。
大体は、なんの仕事をしているかわからないオジさん、
リタイアして何か趣味の調べ物に熱中するおじいさん、
料理や園芸の本を眺めながら子供と過ごす主婦。

そんな人たちばかりが通う公共図書館。
そこに、ネイビーのブレザーに、アイスグレーのパンツに赤いネクタイ(最強の組合せ)の、
それはそれは垢抜けた男子高校生が、気だるそうに勉強しているではないか。

私は今でもその瞬間を覚えている。

大体自習室の常連になると、席の定位置というものが決まってきて、
あの人がここにいるなら、私はセカンドのこの席に座るか…という
大きな居室の中の密度のバランスを取りながら、常連同士、暗黙のテリトリーが出来上がる。

彼は、新参者。
そのバランスを見事に壊し、私の定位置に何食わぬ顔で座っているわけだ。
私は定位置を取られた現実と、それ以上にその独特な存在感に思わず立ち竦んだ。

(この人…かっこいい…)

セカンドの席に足が向かず、しばらく硬直した私に気づいた彼は、
ゆっくりとその気だるそうな姿勢を起こし、私の顔を見て、
ゆっくりとまた自分のノートに視線を戻した。

これが、私と彼の出会いだ。
ここから約2年、私から彼に声をかけるまで、
どこからそんな知恵が出てくるのか自分でも謎なくらい、
巧妙で、かなりダサい私のストーカー生活が始まった。

続く→2年間ストーカーした末に逆ナンしたFくん-2

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