深夜徘徊

どこに行くでもなく、深夜に車で飛び出した。

大勢のトラックが、荷物を積み終わったのか、それとも降ろし終わったのか、列になって高速道路入り口に吸い込まれていく。

それを見て「働かなくては」なんて考える自分が嫌だった。

深夜徘徊は、体に溜まった毒をろ過する作業だ。とふと思った。
現実は直視できない。だから夜に潜むことをやめられない。

小さい頃はたしか天使になりたかった。
本気で空を飛べると思っていたし、本気で全人類を愛することができると思っていた。

現実は違った、空は飛べなかったし、愛せない人類がたくさんできた。

いまでも、すべてを愛する妄想をしている。
その妄想が叶うことはないだろうけど。

都会の喧騒の端っこの、都会といえば都会な場所で一人、田舎に住みたいと思う。
もうそう思って何年経っただろうか、未だにここから旅立つ決心はできていない。

本当はこんなことをやっている暇はない、刻一刻と迫る光に怯えながら、そろそろ帰らなくてはと思う。

また快適なあの家に戻ろう、嫌になるほど快適で、嫌になるほど窮屈な。

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