ものかきさんにちょうせんじょう。

「高齢者問題はあぁぁぁぁぁぁあ!ウワッハッハーーン!!」 
私は首にかけた一眼レフで彼の顔を激写していたが、マイクを前に手元の資料をつまらなさそうに見ていたはずのN議員は、突然錯乱して泣き叫びはじめた。 
「お?どうしたんだ」 
私がN議員の顔を覗き込むと、肌色の顔の表面にうっすらと涙や鼻水が見える。 
「N議員、もっと具体的に教えて下さい」 
「ですから、みなさんのご指摘を真摯に受け止め…」 
耳をそばだてながら私を見つめるN議員に、私は言う。 
「記録になくても記憶に残りませんか?」 
「そういう問題ヒョホオッホーーーィ!! 解決じだいがだめに! 俺ばげェェ! ブェフハアィ!! 誰がでえ! 誰が誰に投票じでぼ、おんなじや、おんなじや思でえ!」 
私の質問に、N議員はこぶしを握りしめながら号泣した。勢いが良すぎてふらついている。 
(おいおい、落ち着けよ…) 
「命がけでイェェェェェヒッフア゛ーーオ!!! ウッ、ッ。あなたには分からないでしょうけどね!」 
N議員がそう言って駆け去っていくのを見送った私は、改めて手元の一眼レフの液晶を見つめる。
液晶に浮かんでいるのは、N議員の錯乱した姿だった。 
「さて、どうしたものか」 
私は一人呟くと、再び首にかけた一眼レフで彼の後ろ姿を撮った

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