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ネット、スマホ、ゲームの悪影響について書かれた本をいくつか読んだので感想と内容のざっくりした紹介

最近、ネット、スマホ、ゲームの(特に子供・青少年に対する)悪影響について書かれた本をいくつか読んだのでまとめて紹介。メアリー・エイケンの『サイバーエフェクト』が個人的には特におすすめ。全体的には、スマホやゲームの悪影響については、科学的にはまだわかっていないことが多い、かといって放置しておいていいとは思えないような影響がはっきり見えている部分もある、というところ。あとアメリカとかに比べると日本はまだましなのかなと思った。何にせよICTのリスクについて子供にちゃんと教えることは、交通安全教育とか性教育と同じかそれ以上に重要だと思う。

スマホやゲームと問題なく付き合えている人も多いが、深刻な悪影響を被っている人もいる。そして家庭に問題があったり、ADHDなどの障害があったり、学校での友人関係に恵まれなかったりなどの脆弱性のある子どもの方が悪影響を受けやすい。スマホを上手に使いこなして勉強の役に立てている子供もいるのにスマホを悪者するのはおかしい、各家庭が対策すればいいという声もあるが、そういえるのは能力と環境に恵まれている子供だからなのだということは留意した方がいい。

ただしスマホ、ゲームだけが問題の原因というわけではなく、単純にスマホ、ゲームを取り上げることは解決にはならないということも重要な点で、これは先日のイベントでお呼びした藤原広臨先生、岡本慎平さんの講演でも強調されていた。またお二人の講演では個人の自由への社会による介入や、安易な医療化には慎重であるべきだ、というご指摘もあり、それを聞いて自分はかなりパターナリスティックなのだな、と気づいたりもした。しかし個人の自由とは言ってもその選択は informed なものでなければならないし、子供については話が別だと思う。子供の保護者や教育者はITのこと、子供の利用の実態、その悪影響について適切に分かっていなければならないし、それでも限界があるなら規制も時には必要だろう。

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*メアリー・エイケン『サイバー・エフェクト――子供がネットに壊される』

NYの街なかに子どもを放置して安全だと思う親はいないだろう。しかし子どもに好きなようにスマホ、ネットを使わせるのはそれと変わらないと著者は言う。本書は幼児期から青年期まで、インターネットやスマホが与える影響についての懸念を、これまでの膨大な事例と研究に基づきながら紹介している。ソーシャルメディア、ゲーム、ポルノへの依存、ネットからのフィードバックが与えるアイデンティティ形成への影響、ハラスメントや犯罪に巻き込まれる可能性、セクスティング(性的な写真や文章をメールやSNSでやりとりすること)や「プロアナ」(拒食を個人の生き方として肯定する思想)のような危険な習慣や思想との接触などなど。デバイスやアプリやウェブサイトを作っている企業に、子供たちの安全や健康への配慮なんて期待することはできない。法規制も含め社会がしっかりした対策をとることが必要だ、と著者は訴える。子供が健全に発達できる安全な環境を提供することはすべての親、大人の義務であり責任である。

*ゲーリー・ウィルソン『インターネットポルノ中毒――やめられない脳と中毒の科学』

インターネット上で無限の量とバリエーションのポルノが容易に手に入る状況で、ユーザーはまだ見たことのない、もっと刺激の強いポルノを求めて延々とクリックし続ける。それがユーザーの精神的健康や性的機能、社会生活にとって有害であることを多くの研究が明らかにしている。特に注目するべきはポルノ断ちをしたユーザーたちの証言で、そこからはポルノがどれほど多くの問題を引き起こしうるかが伺える。公に議論するのが難しい問題ではあるが、特に青少年へのしっかりした教育とサポートは喫緊の課題だ。

*竹内和雄『スマホチルドレンの憂鬱』

大学生、高校生、中学生、小学生たちのスマホ等の利用の実態、問題点、対策。彼らにとってはスマホはなくてはならないコミュニケーションツールであると同時に、悩みの種でもある。時間を無駄にしているの分かっている、LINEでのチャットを切り上げて寝たり勉強したりしたいのに、なかなか切り上げられない子供も多いらしい。親や教員がスマホと子供たちをよく理解して、一緒に利用のための適切なルールや慣習を考え、実行していかなければならない。

*川島隆太『スマホが学力を破壊する』

仙台の小中学生を対象にした大規模な調査で分かったことの報告。簡単に言えば、スマホを長時間つかっている児童・生徒ほどテストの点数は低い傾向があり、それは睡眠時間や自宅での学習時間を統制しても言える。つまりスマホの使い過ぎで寝不足、勉強不足になって成績が落ちるというわけでもない。数年間にわたる成績の変化を調べるとスマホの使用をやめれば学力は上がることも分かった。驚いたのはかなり多くの小中学生が自宅で学習する際に、スマホでLINEやゲームをやりながら、あるいは動画を流しながらやっているということ。

*アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』

結局、スマホの影響については科学的には明らかになっていないことが多い。しかしスマホの使い過ぎが睡眠時間の減少、座りっぱなしの時間の増加をもたらし、それは心身の健康にとって重大な影響を与えること、スマホをいじりながら勉強や仕事が効率悪いことは確実。またスマホ(特にソーシャルメディアやゲーム)は脳の報酬系を巧みに刺激して、スマホを手放せなくさせるようにデザインされているのも確実。著者のアドバイスは明快である。十分な運動と睡眠時間を確保しろ。寝るときと勉強の時はスマホを(物理的に)遠ざけろ。

*吉川徹『ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち――子供が社会から孤立しないために』

著者は児童精神科医。ネットやゲームへの子供の嗜癖について科学的に分かっていることは少ないが、現在までの研究の蓄積と著者の経験から、ネット、ゲームとの付き合い方を慎重に論じる。著者は、ネット、ゲームが問題の根本的な原因であることは少ない、という。自閉症や発達障害、不安症などの本人の特性、親や周囲の人間との関係を理解することが重要。親子の合意に基づくルールを作り、しっかり守らせなければいけないが、子供がルールを破ってしまうのは当然と心得るべし。それだけゲームは子供にとって強い魅力を持っている。

*佐野英誠『ゲーム依存から子どもを取り戻す』

フリースクールを運営している著者が実際に出会った数多くの「ゲーム依存」の子供たち。彼らはなぜゲームにはまっていったのか、ゲームに依存するようになって彼らとその家庭がどうなっていったのか、そして著者のフリースクールではどうやって子供たちを立ち直らせているのか。ルールを決め、それをしっかり守らせること、そして親がきちんと子供と向かい合う覚悟と責任を持つことが重要、とのこと。

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