2023.8.13日記

祖母はベッドに横たわりながら言った。「自分はどんな死に方をするんやろなぁ」

祖母が家の居間で転んで背中の骨を圧迫骨折したと、一週間前に母から聞いた。台風が関西に接近してくる中、和歌山の実家に帰った。

おばあちゃんは、この前正月に会った時よりだいぶ痩せていた。綺麗にセットされていた美しい白髪も、病床で無造作に放置され老いを強調していた。私に会うと祖母は泣いた。こんな風なところを見せたくなかった。会った時に元気な姿でいられるように、気をつけて、無理はしないように生活していたのに、なんでこんなことになってしまったのかと泣いた。家族で一緒に行くはずだったステーキ屋さんにも行けなくなってしまって悲しいと言った。僕は大丈夫だよとも、また外食は元気になってから行けばいいやんとも言えず、ただ「そうやなぁ」と言った。「ほんでも、このタイミングで帰って来れて良かったわ」と言った。

今までも体調崩して寝込んだことも何回かあったけど、ここまでしんどそうな祖母は初めて見た。倒れたと聞いて多少覚悟はしていたものの、「老い」というものがどうしようもなく祖母に襲いかかっているのを目の前にして、動揺した。両親が離婚した自分にとって、祖母は日中は働きに出ている母の代わりに私を育ててくれた自分にとってもう1人の母親であった。「一日中ぼおっとしてて、気づいたら寝てるんよ。だから一日が経つんは早いんよ」と祖母は言った。祖母と話し終わり、部屋を出ると、「にゃあ」という声が聞こえた。祖母の家で飼われているベルという名前の白い猫。彼女は僕が小学五年生の時に生まれた猫で、人間の歳だと100歳近い。そのベルも最近では自分でトイレに行くことができなくなり、台所でしてしまうため、台所の床は白いタオルで覆われていた。玄関には水槽があり、やはり僕が小学生の頃に夜店で取ってきた金魚が、壁の方を向いてじっとしていた。ほぼ動くことはできないようで、呼吸するためにエラだけがひくひくと動いていた。あーーーーーーー、みんな高齢やなーーーーーーーーと思った。


にゃあにゃあと私の足に擦り寄ってくる白い生き物を撫でてやりながら、私は堪えきれずに泣いた。