ロンドン生活167日目
I先輩がロンドンにきた。これで二回目だ(一回目は仕事で、今回はプライベートらしい)。
「こんな短いスパンで来るとは思わなかったでしょ」と言ってケラケラ笑っていた。
I先輩は僕より5個くらい上の先輩で東京本社にいたのだけど、東阪にまたがる同じ取引先を担当していたことがきっかけで仲良くなった。I先輩は見た目は坂口健太郎似の甘いマスクのイケメンなのだが、中身は島耕作を彷彿とさせる泥臭い昭和の営業マンというのが同期の先輩の見解だ。僕はそんなI先輩が好きだった。無駄に内線をかけまくったり(もちろん仕事で必要だったのだが)、仲の良い後輩と一緒に酔っ払って夜中にケータイに電話したり(僕が先輩の立場だったらすごくむかつくだろうし、実際むかついたと思う)、次の日に謝ったりした。I先輩は「じゃあこれは貸しね」とか言いながら笑って許してくれた。
僕が会社を辞める時も、ただ一人強く反対してくれた。東京に挨拶に行って、飲み会で僕の上司に、
「なんで辞めさせるんですか!これからなんです、これから楽しくなるんです。俺は今めっちゃ仕事が楽しい。この景色を後輩に見せてあげるのが、上の人たちの役目なんじゃないですか!!?」
と熱く抗議してくれた。僕はもう辞めることが決まってるし、上司もわかってくれていたし、背中を押してくれていたし、止められて止まる気もさらさらなかったのだけど、I先輩が止めてくれようとしたことが何だかとても嬉しかった。
今回ロンドンでは『ジェイミー』と『DEAR EVAN HANSEN』を観ると言っていた。
「こっちで新しいもの見つけてツバつけといてさー、日本に持ってくるとか出来たら最高だよねー。あとロンドン支社欲しいわー」と冗談っぽく言っていたが、島耕作スタイルで昇りつめて、いつか本当にやって欲しいなと思った。