2023.10.12日記

今日はアーティゾン美術館に山口晃の展覧会を見に行った。

『ここへきてやむに止まれぬサンサシオン』
タイトルが5・7・5である。(それはどうでもいい)

サンサシオンとはセザンヌが創作の時によく使っていた言葉でありセンセーション「感覚」のこと。セザンヌはフランス人なのでサンサシオン。山口晃はこの感覚というのを主に「視覚」という風に捉えていて、純粋な視覚的面白さに回帰しようということが大きなテーマだった(←個人的解釈)。私は美術について全然造詣が深くないので、「そんなの絵なんだから当たり前じゃん」とも思うのだが、現代アートというものは高度に文脈化されていて、視覚的面白さなんて研究され尽くされ議論され尽くされているわけで、もはや新しいことを言うのは難しいのだろう。また山口氏の作品を見るに感覚やパッションからではなく、どっちかというと言語的かつ批評性を持って作品作りをしている方だから、あえて原初的な「視覚に戻ろう」ということなのだろう。

山口晃はパラリンピックのポスターの絵を描いていて、その仕事を受けるかどうかの葛藤を漫画にして発表している。それの原画類も会場にはあって、アーティストとして、オリパラの仕事を受けるというその貧乏くじ、山口晃風に言えば「毒饅頭」を食べるかどうか、毒饅頭なのだから食べないのがいいに決まってるが、食べなかったら誰かが食べないといけない。自分が断った時に翼賛的な誰かが媚び媚びのポスターを作るか、迂闊な誰かが迂闊な作品を作って炎上するか、それはそれで嫌な気分になるので、声を上げるならお祭りのど真ん中で声をあげてやろうってことで最終的にはその仕事をすることになったと書いてあった。作品そのものよりも、その作品を作ることへの葛藤を描いた漫画の方が話題になった、というこの一連の出来事含め、現代アート的だなぁと感じた。

山口晃のことは今までそんなに知らなかったけど、この展覧会で結構興味を持った。絵、ていうかデッサンめっちゃ上手。戦略もちゃんとしてるし、金のことばかり考えておらず表現について真摯に向き合う姿勢に好感を持った。