ロンドン生活164日目
風呂に入りたい。銭湯に行きたい。熱い湯にどっぷり浸かりたい。湯けむり温泉宿に行きたい。地獄めぐりがしたい。大学生の頃によく行った銀閣寺湯に行きたい(3回生くらいの時に閉業して今ぐーぐるすとりーとびゅーで見ると新しい家が建っていた)。千と千尋に出てくる八百万の神々のお湯屋に行きたい。薬湯に浸かりたい。番台に440円渡したい。服を脱いだら湯気立ち込める別世界に突入する。友と並んで体を洗う。互いにやたらとハゲを気にする。ハゲを気にして高級なシャンプーに変えたら逆にハゲが進行したことがある。別にそんなにハゲてもいない。日替わりの湯は浪漫がある。バスロマン。電気風呂はこわい(機械が故障でもして高圧電流が流れていたらどうしようと心配になる)。サウナがすき。サウナに入ってバラエティ番組を見るのがすき。水風呂はクセになる。2度目のサウナは1度目より汗の質が高い気がする。露天風呂がすき。たまにある一人サイズの壺みたいな風呂がすき。あれは異常に落ち着く。海が見えたら最高。目の前で夕日が沈んでいく。遠くの水平線に垂直なオレンジの線を残しながら消えていく。少し暗くなる。波の音が聞こえている。わたしはすっぽんぽんで波の音を聞いている。ザーザーと押し寄せるさざなみとチョロチョロと湧き出てくる温泉のお湯。その音を聞いているわたしの今は今ここの今である。そろそろあがろうかと思うと友達はもういなくなっている。一人で壺に入りすぎた。そこにあったはずの時間はいつのまにか目の前を通り過ぎ、遠い記憶となっていく。湯から上がり牛乳を買うか、ビールを飲むか考えるが結局、何も買わずに帰った。
風呂に入る妄想が済んだので、シャワーを浴びてこよう。