2023.10.10日記

高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』を読んだ。

ちょいネタバレなのと、批判的な感想なのでご注意を。


一気に読んでしまった。読ませる。ただそれは面白いからというよりは、どうなっちゃうんだこの関係は!と、先が気になるので読んでしまうという感じで、常にちょっと嫌〜な感じが漂っている小説で、率直に言ってしまえば結構苦手系だった。なんだろう、一つは職場小説で、自分の日常とも重ね合わせて読んでしまうっていうヘビーさもあるっちゃあるのかな。とはいえ、出てくる人たちは「噂好きの非正規雇用のおばさん」や「セクハラ気質の副支店長」など、ステレオタイプが多いし、一貫して「他者」として描かれる芦川さんというキャラクターも、弱者と見せかけて実はすごく図太い奴(負担の少ない仕事だけして毎日定時か早退する割には定期的に凝ったお菓子を作ってきては社内の全員に配る)で、明らかに誇張されてたキャラである。なんかテイスト的にはリアリズムな感じなのに、普通そんな奴おらんやろ、そうはならんやろという非リアリズム的な瞬間がちょいちょいあったのが気になったかな。あとやっぱ一番気になったのは、書き手が主人公2人(内面が描かれる2人)に自分の意見を言わせてるってか少し肩入れしすぎなんじゃないかとも感じる一方(本好きという設定もちょっと贔屓してない?)、あくまでも主人公2人にとって「他者」として描かれる芦川さんには「弱者」というレッテルを貼って、「弱いものが勝つのが今の世の中。弱いものが実は強いんだ」みたいなことを言ってるのが正直キツかった。なんていうかそれは本気でそう思ってるんじゃないんだろうけど、小説の面白どころとしてそれを使ってるとこが、なんかうーん、ほんまにそれでいいんか?ってなった。だからなんか最終的にはちょっと怒ってる。今。