2023.9.7日記(木馬亭定席)

今日は浪曲を聴きに木馬亭へ。ここ最近毎日のように歌舞伎、文楽、浪曲の公演にきて呑気なもんである。浅草にある木馬亭という寄席は東京で唯一の浪曲専門の寄席である。12時15分から16時過ぎまで、途中一席だけ講談をはさむが、半日ぶっ続けで浪曲漬けを味わうことができる。


港家小そめ(曲師:玉川祐子)
恨みの十四日というネタ。忠臣蔵外伝であり、少し怪談めいてもいる話。映画「絶唱浪曲ストーリー」の小そめさん、決して声がよいというわけでも、音程が安定してるわけでもないのだが、所々ですごく芯をついてくる感じが良かった。100歳の現役曲師、祐子師匠も生で拝見、拝聴し、素晴らしかった。「浪曲師、三筋の糸に導かれ」と言うが、ほんとに祐子師匠のお三味線が小そめさんの良さをめちゃくちゃ引き出していて、感動を覚えた。

玉川奈々福(曲師:沢村まみ)
「見せ方」ということに関して抜群にうまかった。枕もしっかり笑わせるし、やっぱりすごい。浪曲の今を担う人という感じ。ネタは玉川の家の芸天保水滸伝から「平手の駆け付け」。

東家一太郎(曲師:東家美)
「山の名刀」というネタ。以前五代目宝井馬琴先生の映像でも見たネタ。その時は「名刀捨松の由来」という名だったな。節も啖呵も上手。愛嬌のある顔立ちで、芸風は味があって良かった。

講談:田辺いちか
ネタは「耳なし芳一」。田辺いちかさん、初めて高座を聞いたけど、えっ、めっちゃよかった。てか耳なし芳一ってこんなネタだったのね。化物に耳だけ持ってかれる部分だけしか知らんかったけど、平家物語を語る琵琶法師の芸の話なのね。講談はもちろん琵琶も三味線もなく声一本の芸だが、いちかさんの語りからは琵琶の音が聞こえてくるようで、平家の無念さ、怨霊のおそろしさみたいなのが寄席の空間に立ち現れてた。芸だなぁ。観客もシーンとしててよかった。演じる系の語りではあったが、演技が上手く、とても引き込まれた。