ロンドン生活227日目

ここ2、3日で流行病の状況が一変して多くの友人たちがそれぞれの国に帰ることを選択したようだ。プリセッショナルから仲がよかったY君もその一人。すでに今月末の飛行機を予約していたらしい。今日彼から連絡がきて「君も帰るなら飛行機に乗るときはマスクが必須だよ。俺のを何枚かあげるわ」と言われた。私はまだ帰国の決断はしていないが、もしかしたら今日で会えるのは最後かと思い、彼の家まで行った。

彼はいくぶん国粋主義者だが、友達思いで心根の優しいいいやつなので私はとても好きだ。彼はイギリスの首相がいかに愚かであるかについて話した後、今世界一安全なのは中国だと断言していた。彼との会話はときに賛成しかねることが多々あるが、おそらくイギリスで会うのはこれで最後で、もしかすると一生会えないのかもしれないなと思うと、少し寂しく会話もいつもより特別なものに思えた。

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彼は2種類のマスクをくれた。一つは日常使い用(5枚)、もう一つは飛行機に乗る時用というガチっぽいやつ。驚いたことに彼は飛行機に乗るために蜂の巣を駆除する人が着てるみたいな防護服も購入していた。「飛行機に乗るときは今は中国人はみんなこれを着るよ」と言ってたけど、あながち嘘でもなさそうだった。

Y君は最近マスクをして外出したら近所の子供にAre you going to die?と言われたと言って悲しんでいた。他にも多くの人に差別的な視線を向けられこんな国はもうたくさんだと嘆いていた。故郷に帰れることを半分喜んでいるようにも見えたが、やはりいつもより元気はなかったように思う。

「これは君の友達の○○が欲しそうだったらあげて」と日常使い用をさらに5枚くれた。実はその友達はY君のことを少し軽んじているところがあったし、実際Y君もそんなにそいつのことを好きじゃなかったはずだけど、こういう時にバシッと優しさと寛大さを示せるところが、Y君のかっこいいところだなと改めて感じた。

イギリスもその他のヨーロッパ諸国と同じく危険度2の国となり、日本は欧州全域からの帰国者に指定場所での14日間の隔離を決定した。イギリス国内の劇場や美術館等の施設は無期限で閉鎖され、不要不急の外出は控えろとの通達も出ている。

今すぐ帰るという決断も、もう少し残るという決断も、同様に難しい局面である。一番仲よかったY君が帰ってしまうのも、結構な痛手だなーと思うと、なんだか頭がぼーっとしてくるのである。

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(Y君が最後に振舞ってくれた麺料理。故郷の味だという。ごまペーストのピリ辛麺。トッピングはY君のオリジナル。日本好きの彼は海苔も乗せてくれました。)