2023.9.14日記(玉川太福独演会)

今日は定時退勤キメて演劇の街下北沢へ。目当ては演劇ではなく、浪曲。「玉川太福独演会」@本多劇場でした。

太福さんは新潟からダウンタウンに憧れて上京し、小劇場で五反田団やシャンプーハットなどの現代口語演劇に傾倒するが、そこから寄席にも通うようになり、最終的には浪曲師になる。浪曲はそれこそ義理人情とか任侠とかドラマチックな場面を朗々と歌いあげる芸だが、浪曲の大げさな節に、現代演劇の「何も起こらなさ」を乗せたらどうなるのかということがずっとやりたかったと言っていて、わかるぅ〜となった。

実際太福さんの「地べたの二人」シリーズは、電気店の作業員風の男二人がお互いの弁当についてあーだこーだ言ったりするというだけの話である。大声を張り上げてもったいぶって唸りあげるのが、おじさん二人が弁当のおかずを交換するという瞬間だから、笑わずにはいられない。

それとともにライフワークとも言っている「男はつらいよ」全作浪曲化。50作の中から今日は「寅次郎夕焼け小焼け」をやってくれて、しみじみと泣けた。初めて寅さん浪曲を聞いた時はたしか男はつらいよ見たことなくて、それでもすごく引き込まれたんだが、それを機に男はつらいよ見るようになって、寅さんはもちろん、さくらとか、おじちゃんとかタコ社長とか、キャラがわかるようになってみると、太福さんのモノマネも絶妙に似てて、似てるというか特徴を掴んでてとても良い。上野の飲み屋で寅さんはルンペン風のおじいちゃんを助けるが、実はそれは池ノ内青観という日本画の大家だった、という水戸黄門とか左甚五郎とかのパターン。ヒロインの芸者、ぼたんのために寅さんが池ノ内の家を尋ねるシーン、そして最後に絵が送られてくるシーンは、映画より浪曲の語りで聞いた方が泣けたかもしれない。すごいよかった。めっちゃいい夜だった。