ロンドン生活136日目

授業の振り返り。(途中まで書いて断念し下書きに入れてたやつを頑張って書き上げてみる。)

今期シリーズで受けていた文化政策の講義の最終日は、アジア諸国の文化政策についてであった。日本のことも当然紹介されるはずで、一言も聞き逃すまじ!と思って前の方に陣取ったが、ストライキのせいで恐らく2回分の授業が圧縮されており、「時間もないので駆け足でお送りします」てなもんで、要点だけかいつまままれた感が残念だった(来期にもう一回時間とれるかも!とのことなので期待したい)。とはいえ、イギリス人から見て日本の文化政策がどう見えるのかということは興味深かった。ちなみに先生はRod Fisher氏で、長年英国のアーツカウンシルおよび地方自治体で文化行政に携わってきた方だ。(Fisher先生は見た目優しいおじいさん先生。パワポは不得手そうだが毎回きちんと作ってきて、まじめに一つ一つ説明していくスタイル。学生によっては、丁寧でわかりやすい!という人もいれば、真面目すぎて退屈、という人もいて意見が別れる笑)

復習がてら要点をまとめておく。Fisher先生から見た日本の文化政策の問題点は次の4つ。

①文化政策そのものの歴史が比較的浅い。

②行政における文化政策は主に文化遺産の保護が中心であり、現代における文化芸術の創作については手薄である。

③地方公務員のジョブローテーションが多く、文化施設の担当者との連携が不安定である。(せっかく築いた関係性も数年で担当者が変わりやり直しになってしまう。)

④企業や財団の支援の方が政府の支援よりも重要かつ想像力に富む場合が多い。(文化における政府の戦略は定義が曖昧で現実味に欠ける。)

①について調べたこととともにメモしておく。日本では1949年の文化財保護法のように特定の有形・無形文化財に対する保護は古くから行われきたし、1970年代のいわゆる「地方の時代」において地方自治体による文化振興が盛んに行われたが、まだ国レベルで文化芸術に指針を与えようという意識ではなかった(戦後から高度経済成長期にはその余裕もなかっただろう)。その後80年代後半から90年代にかけてのバブル期には、音楽ホール、劇場、美術館、博物館といった文化施設の建設ラッシュが進み(ホール施設は1週間に2館、美術館施設は2週間に1館という未曾有のペースで開館したという)、それと同時に中身のない「ハコモノ」批判が起こる。その頃になりやっと、文化施設や文化芸術そのものの役割について、国レベルでの方針を持とういう意識になるのである。実際、芸術文化振興基金、企業メセナ協議会が発足したのは1990年であって、そこをもって官民ともに芸術文化に対する支援の基盤が整ったということができるだろう。

たしかにこう見ると、1946年に国家の財源によりアーツカウンシル(芸術評議会)が創設され芸術活動への支援を国レベルで始めたイギリスと比べると、日本の文化政策の歴史は浅いということが言える。とはいえ、同じアジア諸国、韓国やシンガポールに関しても、状況は似たようなものであろう。

日本の文化芸術の状況をより正確に知っていくためには、その他②〜④の視点についても考えていきたいが(①についても不十分だし)、とりあえず今日は疲れ果てたのでここまで。

参考サイト)

伊藤 裕夫「文化政策入門」ネットTAM

美術手帖「アートマネジメント」

山口 洋典「助成団体にとどまらないアーツカウンシル」ネットTAM

吉本 光宏「地域アーツカウンシル-その現状と展望」ニッセイ研究所