2023.12.15日記

今日は河竹黙阿弥作の歌舞伎の映像をひたすら見てた。

一つ目は『梅雨小袖昔八丈』(つゆこそでむかしはちじょう)通称、髪結新三(かみゆいしんざ)ってやつ。昭和63年のやつで、髪結新三が18世中村勘三郎(当時はまだ勘九郎)で、弥太五郎源七が3代目河原崎権十郎、家主長兵衛が2代目中村又五郎。

勘三郎、今の勘九郎に顔も声もそっっくり。しかもめっちゃくちゃ華あるのよね、これは今の勘九郎には少し足りない(なぜなんだろう?)。カリスマ性のある子悪党の役、勘三郎はマジでうまいね。かっこよくて、生意気なのにどこか憎めない。ほんでまた家主長兵衛役の2代目の又五郎さんもすっばらしかった。

あとこの芝居はパワーゲームが秀逸なんだよ。駆け出しの子悪党だが頭の切れる髪結新三vs地域の親分・源七の駆け引きは、その場の空気を読み切って度胸も座った新三が勝つし、その新三だが、百戦錬磨の古狸、家主長兵衛には手も足も出ない。目の前の金を巡って、上に出るか下に出るか、一言一言によって力関係が揺れ動く。脚本がうますぎる。黙阿弥の七五調の台詞も決まってるし、それを乗りこなしてる勘三郎と又五郎もすごい。

二つ目は、『新皿屋舗月雨暈』(しんさらやしきつきのあまがさ)、通称魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)。これは平成元年の上演作で、宗五郎は10代目坂東三津五郎(当時は八十助)。

これは筋がちょっと胸くそ系で苦手でした。宗五郎の妹が奉公先で濡れ衣を着せられた挙句なぶり殺される。男たちの卑劣さが強調される演目でしたな。黙阿弥ってすごいけど、描かれる女性の扱いがひどくて結構キツイ。さっきの髪結新三でも出てくる女は大店の純情な箱入り娘で、新三に拐かされて手籠にされるし、女性の描き方がほんと、男の道具としての女って感じ。宗五郎が神に誓って絶ってた酒を飲み、酔った勢いで屋敷に復讐に行くって話なんだけど、妹が惨殺されたって知ってやけ酒飲んで、飲んだら楽しくなってきたもっと飲ませろってすげー呑気。三津五郎はハンサムだが、こんな男やだーってなった。